ユーザー企業にとって真の「共創パートナー」とは? Salesforceの新ビジネスから考察:Weekly Memo(1/2 ページ)
Salesforceが新たなパートナー施策として、SaaSのアウトソーシングによるビジネスモデルを本格的に展開し始めた。キーワードは「BPaaS」だ。果たして、DXに取り組むユーザー企業に受け入れられるだろうか。
「新たなパートナー施策として、AI(人工知能)を含む先端ITを活用し、アウトソーシングサービスの高付加価値化を支援したい」
セールスフォース・ジャパンでアライアンスおよびパートナービジネス戦略を担当する浦野敦資氏(専務執行役員 アライアンス事業統括本部 統括本部長)は、同社が2024年4月10日に開いた2025年度(2025年1月期)のパートナービジネス戦略に関する記者説明会でこう力を込めた。
ITシステム運用などの社内業務を外部に委託するアウトソーシングサービスは以前からあるが、SaaS(Software as a Service)を対象にしたセールスフォースの新たな取り組みは、今後のクラウドサービスにおけるパートナービジネスの在り方を考察する上で興味深い。今回はこの点にフォーカスしたい。
Salesforceの新たなパートナー施策とは
セールスフォース・ジャパンの2025年度のパートナービジネス戦略は「『データ+AI+CRM+信頼』で今後の成長を加速」することをテーマに掲げている。「パートナーのビジネス拡大」と「エコシステムの強化」を二本柱とし、前者では「新規顧客の開拓」「『Customer 360』の提案・販売強化」、後者では「AI製品に関するイネーブルメントの強化」「人材育成と品質の最大化」を挙げる(図1)。
この中で、新規顧客の開拓に向けて、今回新たな施策として本格的に展開するのが「アウトソーシングサービスプロバイダー(OSP)プログラム」だ。これはセールスフォースのパートナーであるアウトソーサー企業がセールスフォースのライセンスを所有・運用するビジネスモデルである。
浦野氏によると、「これまでのパートナーシップではセールスフォースのライセンスを所有し、運用するのはお客さま(ユーザー企業)で、パートナー企業はサービスおよび関連したアプリケーションを提供する形だった。それに対し、OSPプログラムはパートナー企業(アウトソーサー)がセールスフォースのライセンスを所有し、運用する形になる」とのことだ。「このモデルはこれまでグローバルで先行して取り組み、日本でも試験的に手掛けてきたところ大きな手応えがあったので、2025年度から本格的に推進することにした」(浦野氏)(図2)。
こうしたOSPプログラムはパートナー企業であるアウトソーサーとユーザー企業にどのようなメリットがあるのか。浦野氏はアウトソーサーのメリットについて「これは単にセールスフォースのサービスを使ったBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)ではない。アウトソーサーが持つ業種や業務の専門知識とITを組み合わせた「BPaaS」(Business Process as a Service)として提供することによって、アウトソーサーの生産性や品質が向上し、売り上げや利益を最大化することができる」と説明した。
ユーザー企業(顧客)のメリットについては「アウトソーサーの専門知識とITを統合したサービスの利用により、アウトソーシングの成果を最大化することができる。先端のITを活用したDXと業務改革を同時に推進できる」と説明した(図3)。
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