日本企業にはハードルが高い? 「デジタルワークフロー」の必要性をServiceNowの戦略から探る:Weekly Memo(1/2 ページ)
既存のERPやCRMと連携して、業務プロセスとデータを可視化する「デジタルワークフロー」への注目度が高まっている。ただし、日本企業にはまだハードルが高いところもあるのではないか。日本企業はデジタルワークフローをどうすれば生かせるのか。同社日本法人の戦略から探る。
「当社はもともとITサービス管理からスタートしたが、今では企業全体の業務を支えるプラットフォームを提供している。これによって、お客さまのDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に支援していきたい」
米ServiceNowの日本法人ServiceNow Japanの鈴木正敏氏(執行役員社長)は、同社が2024年3月28日に事業戦略についての記者説明会でこう切り出した。
ServiceNowは、ITサービス管理から各種業務、顧客や従業員向けのサービスまで企業全体をカバーする「デジタルワークフロー」を構築することで、組織横断的なDXを支援するクラウドサービスを提供している。2023年度(2023年12月期)のグローバルでの売上高は前年度比24%増の89億7100万ドル(1ドル150円換算で約1兆3000億円)だ。ここ数年同水準の成長率を記録し、Salesforceに次ぐ規模の独立系クラウドサービス専業ベンダーとして存在感を高めつつある。
ServiceNowが急成長を遂げている原動力ともいえるデジタルワークフローだが、筆者がこれまで取材してきた中では、日本企業にはまだハードルが高いところもあり、本格的に受け入れられるのはこれからという印象だ。ただ、日本企業のDXの成否を握るソリューションになり得る可能性は高い。では、どうすれば生かせるか。ServiceNow Japanの戦略を探る。
デジタルワークフローは何をもたらすのか
2004年設立のServiceNowが注目されるようになったのは、鈴木氏が言うようにグローバル標準のITサービス管理をSaaSとして提供したのがきっかけだ。これは現在も主力のサービスで、「ITの企画や開発、運用、サービスといったITバリューチェーン全体のプロセスのデジタル化とデータの可視化を実現している」(鈴木氏)のが特徴だ(図1)。
そのために、各種業務のワークフローやデータを一元管理する「Now Platform」をPaaS(Platform as a Service)として提供し、ここにデータベースやAI(人工知能)、ユーザーエクスペリエンスなど共通で使う機能を実装している。
そこからNow Platformは、企業全体の業務を横断的にカバーするプラットフォームに進化し、従業員や顧客、取引先に対する業務プロセスとデータの可視化を提供するようになった(図2)。ITサービス管理で培ったデジタルワークフロー機能を他の業務領域に広げた格好だ。
図3は、ServiceNowが提供するサービスを階層的に示したものだ。図の上部のサービスには「Workflows」と記されているが、ここではサービスの意味合いと受け取っていただきたい。
図3で注目すべきは、下段にある「あらゆるシステム群」だ。既存のServiceNow以外のERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客管理システム)を連携させることで、社内の業務システムにおけるデジタルワークフローとしてカバーできる。
鈴木氏はこの点について、「既存の『SoR』(System of Record)のデータも連携させた『SoE』(System of Engagement)をデジタルワークフローによって推進することで企業全体のDXを実現するのがServiceNowの役目だ。業務連携による生産性向上を大いに見込めるし、既存システムへのこれまでの投資も無駄にしなくて済む」と説明した。
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