NECの戦略から考察 DXを成功に導く「シナリオ作り」の勘所とは?:Weekly Memo(1/2 ページ)
DXに着手する企業は多いが、期待するほどの効果が出ていないのはなぜなのか。「DXを成功に導くシナリオをどう作るか」を焦点にしたNECのソリューションに着目し、考察する。
企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)をうまく進めるためには、目指す姿を描き、それに向けてDXを進めるための「シナリオ作り」が不可欠だ。そうしたアプローチは従来のデジタル化でも重視されてきたが、DXは最終的に自社がデジタル企業に変わるために、DX支援ベンダーなどから知恵を借りながらも将来を見据えてしっかりと取り組む必要がある。
そのシナリオ作りに必要な「知恵」はどうあるべきか。NECはDX支援ベンダーとしてソリューションの整備に注力している。今回はその内容に注目し、DXのシナリオ作りのあるべき姿を考察する。
NECのDX事業戦略の要となる「Scenario」(シナリオ)とは
NECからシナリオ作りの話を聞いたのは、同社が2024年7月25日に開催した「DXの動向とBluStellar(ブルーステラ)による価値提供」と題した記者およびアナリスト向けの説明会だ。同社 BluStellar事業推進部門シニアディレクターの岡田 勲氏が説明した。
「BluStellar」は、NECが2024年5月30日に発表したDX事業ブランドだ。同日開催された記者会見では同社 社長兼CEOの森田隆之氏が説明役を担い、新ブランドとして大々的に打ち出した。その会見の様子やBluStellarの概要については、2024年6月3日掲載の本連載記事「NECの取り組みから探る『ユーザー企業がDXを成功に導く3つの要件』」(注)をご覧いただくとして、今回はその流れを汲んだ2024年7月25日の説明会で聞いたBluStellarの中の「Scenario」と呼ぶソリューションに着目した。以下、岡田氏の説明を基にScenarioについて紹介する。
BluStellarは、顧客企業のDX実現に向けた構想を描く「アジェンダ」、それを実現するためのオファリングや商材を意味する「テクノロジー」、人材育成などの取り組みを指す「プログラム」といった3つのソリューション領域から構成されている(図1)。
Scenarioはアジェンダの領域を担うもので、「お客さまが抱える課題を解決するための価値創造シナリオ」だと言う。岡田氏によると、「Scenarioはアジェンダに対して目指すべきゴールを想定し、それに向かってNECが提供するコンサルティングや製品・サービス、オファリング、インテグレーションを組み合わせてお客さまの価値を創出できるように『型化』したもの」とのことだ。この後、同氏はScenarioについて「型化」という言葉を幾度も使っていた。筆者はこれを「ベストプラクティス」(最良の事例)と受け止めた(図2)。
肝心なのは、Scenarioのメリットだ。岡田氏は「お客さま視点でのScenarioのメリット」として次の3つを挙げた。
- 経営課題に対する戦略的集中と事業成長: 経営課題に対して目指すべき姿と具体的な課題解決策のロードマップが明確となり、戦略的なリソースの集中と事業成長が可能になる
- 事業拡大・競争力強化: 実績のあるシナリオを基に事業環境や市場動向の変化のスピードに対応しながら課題解決に取り組めることで、事業拡大・競争力強化につながる
- 実績とノウハウを持つパートナーのサポート: コンサルティングや製品・サービス、システム構築・運用の実績とノウハウを持ち、戦略立案から実行まで責任の持てるパートナーのサポートがあることで、安心して課題解決や事業拡大に取り組むことが可能になる
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
富士通が全社規模で自動化を拡大 生産効率40%向上を目指す
富士通は、AIを活用した自動化ツールを全社規模で採用し、最大40%の生産効率向上を目指す。富士通が導入した自動化ツールとは何か。
成果が出ている企業は6割止まり IPA調査で判明、停滞する日本のDX
IPAの2024年調査によると、日本企業のDXによる成果創出は米国企業に比べて遅れが目立つ。調査結果から浮かび上がった「日本企業が特に成果を挙げていないDXの取り組み項目」とは。
“勝ち組”日立は生成AIを「本当に」活用できるか? 社長のIR向け発言から考察
生成AIのインパクトがもたらす事業機会とはどのようなものか。日立製作所の小島啓二CEOがIR向け説明会で多くの時間を割いて同社の生成AI事業について説明した意図とは。
給料を15%アップさせるのは「あのスキル」 AWS調査で判明
AWSが実施した調査によると、日本企業はあるスキルを身に付けた労働者に給与を15%高く支払う意向があることが明らかになった。ただし、雇用主と労働者の7割近くがそのスキルをどのように育成すべきか迷っているという。
業務外注サービスはAIでどう変わる? NTT Comとトランスコスモスの提携に見る「BPOの進化」
AIをはじめとした最新のデジタル技術でさらに進化を遂げようとしている「BPO」。NTT Comとトランスコスモスの戦略的事業提携から、その最新の動きを探る。


