富士通CTOが説く「AIエージェントが動かすエンタープライズの将来像」とは:Weekly Memo(2/2 ページ)
最新ITを活用した製造業をはじめとするエンタープライズの将来像とはどんな姿か。富士通のCTOが描いた「2030年のエンタープライズの世界」から探ってみたい。
2030年のエンタープライズの世界とは
まず、サプライチェーンAIエージェントがSNSなど外部情報から突発的な需要急増の情報をキャッチしたとする(図5)。
すると、サプライチェーンAIエージェントは需要予測モデルや突発的な需要の変化に基づいて、需要が増加すると判断した(図6)。
需要が増加すると判断したサプライチェーンAIエージェントは工場や倉庫、運送の各AIエージェントに対して増産に向けた再計画を指示した(図7)。
指示を受けた工場、倉庫、運送のAIエージェントは増産に向けてそれぞれの間で情報連携を開始した(図8)。
さらに工場や倉庫、運送のAIエージェントはそれぞれに必要な外部連携先からも情報を取得した(図9)。
そして、他の工程との連携や収集、分析に基づき、各工程において増産に向けた配置を再設計した(図10)。
各AIエージェントは再設計したプランをサプライチェーンAIエージェトに複数の提案施策としてフィードバックした(図11)。
サプライチェーンAIエージェントは複数の施策を分析して増産を判断し、各AIエージェントに増産を指示した(図12)。
増産の指示を受け、各工程において増産に向けて動き出した(図13)。
ここまでそれぞれの動きの図を示しながら、マハジャン氏は最後に次のように述べた。
「一連の動きは常に自律的に動き続ける。今回は製造業のサプライチェーンを巡るAIエージェントの動きを例に挙げたが、幅広い業種でAIエージェントの利用が今後広がる。エンタープライズの世界はガラリと変わるだろう」
できるだけイメージしやすいように各プロセスの図を掲載してみたが、いかがだっただろうか。
マハジャン氏が言うように、AIエージェントによってエンタープライズの世界は今後、大きく変わるだろう。同氏は、狙いとして意思決定のスピードアップと生産性の向上を挙げたが、AIエージェントによる最大のインパクトは何といっても「業務の自動化」だ。しかもAIエージェントが経験を積めば積むほど、スピードアップも生産性向上もどんどん進展していく。このAIエージェントの動きを人間がどうチェックしていくのかという点も、人間が経験を積んで修得していくことになるだろう。
企業や組織にとって、AIエージェントは今後、最も注目すべきキーワードになりそうだ。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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