生成AIは「対話型」だけじゃない 富士通が取り組む「特化型生成AI」のポテンシャルを探る:Weekly Memo(1/2 ページ)
生成AIというと「ChatGPT」に代表される汎用の「対話型モデル」の利用が広がっているが、今後は企業のさまざまな業務を支援する「特化型モデル」も注目されそうだ。果たして、どれほどのポテンシャルがあるのか。富士通の取り組みから探る。
企業では生成AIをどう活用するかが、業務の生産性向上やビジネスの競争力強化に向けて重要な取り組みになっている。最近、「ChatGPT」に代表される汎用のLLM(大規模言語モデル)を基盤とした「対話型モデル」だけでなく、企業のさまざまな業務を支援する「特化型モデル」の開発が活発だ。特化型モデルの技術や市場性におけるポテンシャルはどれほどのものなのか。
そんな疑問を抱いていたところ、富士通が2024年6月4日に開いた研究戦略説明会でその回答ともいえる話を聞くことができたので、今回は「特化型生成AI」のポテンシャルについて考察したい。
「エンタープライズ生成AIフレームワーク」とは
会見で説明役を務めたのは、富士通 執行役員EVPで富士通研究所所長の岡本青史氏、富士通研究所 人工知能研究所長の園田俊浩氏、同 先端技術開発本部長の新庄直樹氏だ。
岡本氏は富士通の研究戦略として「現在注力している5つの技術領域を、AIを軸として融合させて富士通ならではの新しい価値を創出し、サステナブルな社会の構築に貢献していきたい」と力を込めた(図1)。
会見および展示会ではそれぞれの技術領域についての説明があったが、本稿では同社が今回の会見に合わせて発表した「エンタープライズ生成AIフレームワーク」に注目する。これは、企業ニーズに対応した特化型生成AIを自動生成できる仕組みで、同社は「世界初の技術」としている。
この新たな仕組みについて説明した園田氏は、まず生成AIの技術動向として、今後はLLMだけでなく、「SLM」(小中規模言語モデル)が特化型モデルとして広く利用されるようになるとの見方を示した(図2)。
エンタープライズ生成AIフレームワークはそのニーズに応えるもので、このほど開発を終え、2024年7月から同社のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」のラインアップとして順次提供を開始する。
これまで生成AIの企業利用においては、「企業で必要とされる大規模データの取り扱いが困難」「生成AIがコストや応答速度をはじめとする多様な要件を満たせない」「企業規則や法令への準拠が求められる」といった課題があった。
同社は、これらの課題を解決する企業向けの特化型生成AIを強化するため、企業が保有する大規模データの関係性をナレッジグラフでひも付けて生成AIへの入力データを高度化する「ナレッジグラフ拡張RAG」、入力タスクに応じて複数の特化型生成AIモデルから最も高い性能が出るモデルを選択あるいは複数組み合わせて自動生成する「生成AI混合技術」、法令や企業規則に準拠した説明可能な出力をする「生成AI監査技術」で構成するエンタープライズ生成AIフレームワークを開発した形だ。
図3は、エンタープライズ生成AIフレームワークの全体像だ。2つのステップから構成される。ステップ1では多様で大規模な企業データからナレッジグラフを準備する。ステップ2ではユーザーがクエリを送信した後、上記の3つの技術によって上段に記されているように実行される。なお、RAGおよびナレッジグラフの意味については図3の下段を確認いただきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
富士通の2024年調査から考察 「ビジネスとサステナビリティを両立させている企業」の特徴は?
富士通の調査によると、サステナビリティを最優先事項とする企業の割合が上昇している一方で、対策の進捗(しんちょく)は芳しくない。サステナビリティをビジネスと両立させている企業は、その他の企業と収益や株価、市場シェアにおいてどのような違いが出ているのか。富士通の最新調査から考察する。
日立は「生成AIを活用するための組織づくり」をどう進めているか 徳永副社長に聞く
企業は生成AIとどう向き合い、どう活用していくべきか。そのヒントを探るべく、生成AIの活用を積極的に進めている日立製作所の德永副社長に話を聞いた。
生成AIを「クラウドで活用する際」の3つの勘所――AWSパートナーイベントから考察
AWSがパートナー施策で生成AIに関する取り組みに注力している。その内容からユーザー視点で重要な「生成AIをクラウドで活用する際のポイント」を考察したい。
高性能な特化型生成AIを安く作る方法が登場 「進化的モデルマージ」の基礎論文を読む
生成AIの中でも特定の領域に特化した高性能モデルのニーズが高まっている。しかし、LLMは学習コストが高ことが問題だ。そこで注目されているのが、複数のモデルを組み合わせて新たなモデルを作る「モデルマージ」だ。生成AIを効率的に進化させられる。



