日本IBM、三菱UFJ銀行、IIJ共同の取り組みから考察 今後の「金融システム」はどうあるべきか?:Weekly Memo(1/2 ページ)
日本IBMが三菱UFJ銀行およびIIJと戦略的提携を結び、金融システムの今後の在り方を提案した。その説明から金融システム、ひいては基幹系をはじめとした業務システムはどうあるべきかについて考察する。
「お客さまから見て、中身がどんな仕組みであれ、一つの金融システムとして利用していただける環境を提供したい」
日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏は2024年10月1日、同社が三菱UFJ銀行およびインターネットイニシアティブ(以下、IIJ)とそれぞれ戦略的パートナーシップを結び、地域金融機関向け新共同プラットフォームの提供開始を発表した記者説明会で、こう強調した。
日本IBM、三菱UFJ銀行、IIJ共同の「新共同プラットフォーム」とは?
山口氏が「一つの金融システム」と表現した新共同プラットフォームは、メインフレームや分散系を含むあらゆるITプラットフォームを、地域金融機関が既存のシステム共同化の枠組みを超え、経営戦略に応じて適材適所かつ選択肢を持って長期にわたり利用できるようにした取り組みだという。この中で、三菱UFJ銀行は新会社を設立し、地域金融機関向けメインフレーム基盤の共同利用を実現する「メインフレーム共同プラットフォーム」に参画(注1)。IIJは「分散基盤共同プラットフォーム」を提供開始した(注2)。既に複数の地銀システム共同化グループが採用を決定、もしくは検討しているとのことだ。
本稿ではこの動きについて、今回の発表に至った背景や考え方について説明した山口氏の話が興味深かったので、そこにフォーカスして金融システム、ひいては基幹系をはじめとした業務システムの今後の在り方について考察したい。
山口氏はまず、IBMの金融戦略フレームワークと提供サービスについて、次のように説明した(図1)。
「図1の右にあるビジネスサービスの基幹系については、1970年代からメインフレームが担ってきた。1990年代に入ってシステム規模がダウンサイズされた基幹分散系が出てきて、今でも外部との接続に使われている。2000年以降、デジタルサービスの領域が広がるとともに、APIによってそれらと基幹系、さらにはAIサービスやFinTechアプリなどと相互につながるようになった。こうした変遷の中で、ビジネスサービスにおいては1990年代から、『餅は餅屋に委ねる』との発想でIT企業がお客さまのシステムの運用を代行するアウトソーシングサービスを提供するようになり、経済合理性を向上させるとともに、金融機関相互のメリットを生かすべく『共同化』という仕組みができた。今回発表した新共同プラットフォームは、それをさらに進化させたものだ」
その進化した形として、図1の上に記したのが図2だ。
ビジネスサービスにおいて、基幹系は三菱UFJ銀行(表記上はMUFG=三菱UFJフィナンシャル・グループ)が提供するメインフレーム共同プラットフォーム、基幹分散系はIIJが提供する分散基盤共同プラットフォームが担う。デジタルサービスにおけるIBMの「金融サービス向けデジタルサービスプラットフォーム(DSP)」、さらにネットワークにおいてこれらのプラットフォームを接続するIIJの「地銀共同化プライベートネットワーク・バックボーン」を新たに加え、「金融ハイブリッドクラウド・プラットフォーム」と名付けた。
これが新共同プラットフォームであるのは、とりわけ図1のビジネスサービスに記されている「共同化グループごとのシステム」を三菱UFJ銀行とIIJを組み合わせたプラットフォームに統合できることから、すなわち「共同化の共同化」を実現できるためだ。
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