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アクセンチュアが提言する「生成AIを活用した組織変革」とは? その先の“将来像”も考察Weekly Memo(2/2 ページ)

アクセンチュアが「AIとヒト、AI同士の共創空間」を掲げる新施設を開設した。同社が披露した「AI同士が議論して企業の組織形態を提案するシミュレーション」から、企業変革の将来像を考えてみた。

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生成AIを活用した組織設計 “その先”にある将来とは?

 保科氏によると、アクセンチュア・アドバンスト・AIセンター京都のコンセプトは、「AIと人、AI同士の共創空間」だ。同センターを訪れた人が複数のAI同士の会話に参加して、議論する場を提供する。

 このコンセプトに基づいた事例としての生成AIを活用した組織設計は、現在の組織構成や配属人数だけでなく、企業として将来ありたい姿(経営計画や重点施策)や市場動向、さらにはアクセンチュアがグローバルな活動で蓄積してきた生成AIの先進事例や職種別生成AIインパクト調査などのデータから、企業戦略に即した組織と配属人数をAIが提案するものだ(図2)。


図2 生成AIを活用した組織設計の事例(出典:アクセンチュアの会見資料)

 異なる立場の生成AIが議論しながら、あるべき組織構造を提案する形だ(図3)。


図3 異なる立場の生成AIが議論しながら、あるべき組織構造を提案(出典:アクセンチュアの会見資料)

 図3の左側は、AI人事コンサルタントによる組織見直し提案を作成・提出するプロセスだ。AI人事コンサルタントには、業務変革を強力に推進する「積極派」と、人材を徹底的に活用する「保守派」がいて、それぞれに見直しの提案を行う。それらを基に、右側にあるように積極派、保守派、それに中間派も加わり、カスタムLLM(大規模言語モデル)も利用しながら議論し、AIファシリテーターが内容をまとめ上げて組織の最適な配属人数を導き出していくという流れだ。

 ここでいうAI人事コンサルタントやAIファシリテーターは、すなわち「AIエージェント」だ。このバーチャルな議論に人が加わって意見を述べることも可能だ。これによって、あらゆるデータを駆使して意見の異なる専門家たちと組織変革に向けた充実した議論ができる。

 そうして生成AIのインパクトを加味した組織変革をAIが提示したのが図4だ。


図4 生成AIのインパクトを加味した組織変革をAIが提示した例(出典:アクセンチュアの会見資料)

 図4の左端にある各種の入力データを基に、ブルーで示されているのが現状の業務と人員数だ。そこから議論によって導きだされたのが、グリーンで示されている、生成AI適用後の業務とその必要人員数だ。

 既存の全ての部署で人員が減少しており、減少した人員は新たに設けられた部署への異動やリスキルの対象となっている。ちなみにリスキルが必要な従業員は全体の39%と、衝撃的な割合だ。

 保科氏によると、図4は議論によって導き出された結果だが、新たなスキルを身に付けた従業員を生かすために再び組織を変革するなど、取り組みを継続することが重要だという。

筆者の考察:AIを活用して「イノベーションを起こせる組織設計」は可能か?

 最後に、この話を聞いて筆者の頭に思い浮かんだことをお伝えしよう。この取り組みからさらに踏み込んで、AIを活用して「イノベーションを起こせる組織設計」が実現できないものだろうか。

 図4で示されたように、新設部署や従業員のリスキルがイノベーションにつながる可能性もある。しかし、筆者が提案したいのは、イノベーションを起こすことを強く意識した組織設計や人材の活用だ。

 例えば、それぞれの目的を明確にしたプロジェクト型組織にし、業務におけるAIの活用はもとより、人材が最大限の力を発揮できるチーム作りやキャリア・適性診断、相性診断などによる人材マッチングにAIを活用できないだろうか。

 AIそのものが主体となってイノベーションを起こすことは、将来はともかく、現在は難しいだろう。イノベーションには「化学反応」が不可欠だ。それを期待できるのは、人が持つクリエイティビティのぶつかり合いだ。そうしたチーム作りに人事データとAIをもっと活用できるのではないか。

 アクセンチュアにも今回の話の延長線で、AIを活用したイノベーションを起こせる組織設計にぜひ取り組んでいただきたい。そして、従業員のリスキルについては、多くの人材が自らのクリエイティビティを磨く方向に動いてもらいたい。

 アクセンチュアの生成AIを活用した組織設計の話が興味深かったので、上記のようなことを考えた次第だ。引き続き、この分野でのAI活用に注目していきたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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