銀行業における生成AI活用の実態は? 成果を上げた領域が明らかに:技術トレンド
SAS Instituteは銀行業における生成AIの活用状況を調査したレポートを発表し、銀行業界が他業種に比べて生成AIを積極的に導入していることを明らかにした。
SAS Institute Japanは2024年12月3日、生成AIの銀行業における活用状況に関するレポートを発表した。
この調査は世界20カ国1600人のビジネスリーダーを対象に実施したものだ。それによると、多くの銀行が2025年度に大規模なAI関連予算を確保していることも分かった。
他業界に先行する銀行業界で、AIはどんな成果を出したか
同レポートは世界的かつ業界横断的な調査に基づき、20カ国1600人のビジネスリーダーを対象に実施されたものだ。調査対象には銀行の生成AI戦略に関する意思決定を担う上級幹部(243人)が含まれている。
レポートでは銀行における生成AIの導入状況や最大の課題について保険業界、公共機関、ヘルスケア業界、製造業、小売業といった他業界との比較に基づいた考察が示されている。
調査によると銀行業界の60%が「すでに生成AIを利用中」と回答し、38%が「今後2年以内の導入を計画している」と回答している。「2025年度に向けた生成AI専用予算を用意している」と答えたのは全体の90%に上った。
銀行業界において 生成AIを活用する銀行ではどの領域で成果を上げているのだろうか。
調査によるとアンケートに回答した銀行幹部の90%が「従業員エクスペリエンスと満足度の向上」を実感しており、次いで「リスク管理やコンプライアンス対策の強化」(88%)や「時間の節約や業務コストの削減」(85%)を挙げた。
「顧客満足度向上」(82%)や「大規模データセットの処理効率の向上」(78%)、「データ活用による販売強化」(76%)も高い値となった。
生成AIの進展に伴い、銀行が直面する課題も明らかになっている。データプライバシー(74%)やセキュリティ(71%)への懸念が根強く、効果的なAIガバナンスの確立も未熟な段階にある。回答者のわずか6%が「十分に確立されたガバナンスフレームワーク」を持つと答えており、多くの銀行が透明性や説明責任の向上に取り組む必要があると分析されている。
生成AIが銀行の業務プロセスや顧客体験を大きく変革している一方で、規制やデータ管理における課題も残る。SASは信頼性と透明性を兼ね備えたAIのガバナンスフレームワークの重要性を強調しており、責任あるイノベーションが銀行の未来を形作るカギであると結論付けた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
企業ITの「重荷」解消なるか 富士通とNRIがレガシー資産のクラウドシフトに本腰
国内IT大手2社がAWSとの連携を強化する。企業に残るレガシー資産のクラウドシフト、DXを推進する新たな取り組みだ。
Ciscoが「AI推論専用機」と「ターンキー型AIサーバ」を発表
CiscoはGPU負荷の高いAIワークロード向けサーバー「UCS C885A M8」と特定業界向けAIインフラ「AI PODs」を発表した。AIインフラの迅速な構築が可能になるという。
DX推進のスコープに変化の兆し IT活用実態調査の結果を読む
NRI「IT活用実態調査」の最新版が発表された。AI活用などの領域で対応の遅れが目立つ一方で、DX推進のスコープに変化が見られた。企業の「次のIT投資」はどこに向かうのだろうか。
AWSがネイティブなVMware環境を用意か Amazon EVSがまもなく登場
Amazon Web Servicesは新たなAWSネイティブサービスである「Amazon Elastic VMware Service」(Amazon EVS)を発表した。リファクタリングや再プラットフォーム化なしでAWSのスケールメリットが得られるとしている。