DX推進のスコープに変化の兆し IT活用実態調査の結果を読む:AI導入や経済安全保障関連の対応には遅れも
NRI「IT活用実態調査」の最新版が発表された。AI活用などの領域で対応の遅れが目立つ一方で、DX推進のスコープに変化が見られた。企業の「次のIT投資」はどこに向かうのだろうか。
野村総合研究所(NRI)は2024年11月27日、2024年版のIT活用実態調査の結果を「ユーザ企業のIT活用実態調査(2024年)」として発表した。この調査は2003年より毎年実施しており、今回で22回目となる。
今回の調査結果では企業の生成AI利用の実態が明らかになった他、企業におけるDXの推進が新しいフェーズに入ったことが明らかになった。
DXの取り組みに変化の兆し、AI対応、サプライチェーンリスク対応の状況は?
2024年版のIT活用実態調査は、2024年9月に大手企業の最高情報責任者またはそれに準じる役職者を対象として実施したものだ(回答社数:529)。今回の調査では従来のIT投資やデジタル化の状況に加え、AI活用の状況や、AIリスク管理、経済安全保障を考慮したIT運営の状況も調査した。以降で調査結果の概要を見ていく。
IT投資の増加傾向が続く
それによると、2024年度にIT投資を前年より増加させた企業は59.0%で、減少させた企業(6.9%)を大きく上回った。さらに2025年度もIT投資が「増加する」と予想した企業は53.3%に上り、調査開始以来最高値を記録した。
IT投資予算は増加(n=407、2024年度実績および2025年度予想:全回答企業数から該当設問への無回答企業を除く有効回答企業数、出典:NRI「ユーザ企業のIT活用実態調査(2024年)」のプレスリリース)
デジタル化推進部門の役割が変化
今回の調査では、デジタル化推進部門を「持っている」と回答した企業は70.4%に達した。
企業は「アナリティクス/AI/データ活用のための基盤整備」(49.5%)や「その実証と適用」(46.1%)に注力しており、いずれも3年前より10ポイント近く増加しており、一定の取り組みが進んでいる状況がみられた。
一方で、「データマネジメント/データガバナンス」や「ビジネスモデルの変革」に取り組む企業は37.4%にとどまっており、今後はデジタル化推進部門の役割がDXの企画とけん引から、リソースやインフラの整備へと軸足を移すものと考えられる。
生成AIの適用は主にオフィスワーク
生成AIの導入および活用は、文章作成や情報検索などオフィスワーク関連が中心となっており、55.8%の企業が「文章の作成、要約、推敲」に、52.3%が「情報の探索、知識や洞察の獲得」に利用している。ビジネス適用においては「社員(従業員)やスタッフのサポート」が最多だったが、顧客や取引先向け業務への展開はまだ限定的となっている。
AI活用のリスク管理は進展途上
AI活用に関する国内外の法令やガイドラインの調査を「進めている」とした企業(49.6%)が多く、規則やガイドラインを「定めている」とした企業は42.3%だった。一方でAIを活用したサービスの提供に特化した規則やガイドラインを定めている企業は17.9%にとどまり、AIを活用したサービスの提供を想定している企業が少ないことが分かった。
AIを活用する際に生じるリスクに対処するために実施している施策(n=357、複数選択式回答、全回答企業数から該当設問への無回答企業を除く有効回答企業数、出典:NRI「ユーザー企業のIT活用実態調査(2024年)」のプレスリリース)
経済安全保障を考慮したIT運営は途上段階
経済安全保障を考慮したIT運営への取り組みは、特に取り組みが求められる業種では61.7%が「取り組んでいる」とした一方で、その他の業種では40.1%にとどまった。
機器・サービスの調達状況や提供状況、業務の移転状況、データの越境状況などを「具体的に可視化している」とした企業は、特に取り組みが求められる業種でも3割以下にとどまる。
野村総合研究所グループは、企業のIT活用やデジタル化の現状と課題を明らかにするとともに、これらのテーマに関する課題の解決を支援していく方針であることを示している。
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