ITコンサル市場が好調 それでもコンサル会社が高笑いできない「2つの要因」
IDCによると、国内のITコンサル市場は2028年まで2桁成長を維持する見込みだ。ただし、コンサル業界がはらむリスクが指摘されている。それは何か。
AI導入やDX(デジタルトランスフォーメーション)、データ分析などに取り組む企業が増える中で、自社だけでは実現が難しいプロジェクトにコンサルティング会社など他社から支援を受けるケースが増えている。
IDC Japan(以下、IDC)が発表した国内ビジネスコンサルティング市場予測によると、2024年の同市場は前年比10.6%増の2桁成長となる見込みだ。
2桁成長でもコンサル企業が高笑いできない理由とは?
しかし、市場拡大を阻害している要因も幾つかある。そのうちの一つは、「ある人材」の慢性的な不足だという。それは何か。
IDCによると、2023年の国内ビジネスコンサルティング市場は、支出額ベースで前年比12.6%増の7240億円になった。IDCは、デジタルビジネス化を図る大企業による既存のビジネスプロセスやオペレーションのモダナイゼーションの需要が拡大し続けていることに加え、新規ビジネスやイノベーションに向けたビジネスコンサルティングの活用が両輪で拡大していることが背景にあると分析する。
企業の全社的なデジタルビジネス化に向けた変革領域が拡大し、中期戦略への組み込みが進むことで財務や経理、顧客接点、サプライチェーン、カスタマーサービス、人事といったさまざまな業務領域で変革支援の需要が拡大しているという。
サービスセグメント別でも2023年は全領域で2桁成長を遂げているという。産業分野別では製造や流通、金融における成長率が相対的に高く、全てのセグメントで2桁成長を遂げた。
2024年以降の同市場は、引き続き国内企業の事業のデジタルビジネス化に向けた需要がけん引し、高成長が継続するとIDCではみている。既存ビジネスのモダナイゼーションに向けた業務変革支援、AIユースケースの発展とAI活用支援が成長をけん引する他、サービス単価の上昇も支出額の成長にはプラスに影響すると分析する。
今後の市場拡大を阻害する2つの要因とは?
2023〜2028年の同市場はCAGR(年間平均成長率)10.1%で成長を継続し、2028年の同市場は1兆1714億円に達するとIDCは予測する。
ただし、市場成長を抑制する要因も存在している。IDCは次の2つを指摘する。
- デリバリー人材の慢性的不足:システム設計やITサービスの提供、テスト、導入、保守などを担当するデリバリー人材の不足はこれまでも市場拡大の慢性的な抑制要因となってきたが、現在も解消されていない
- 需給ひっ迫による問題発生:コンサルティング案件の大型化と実装支援との融合が進む中で、後続フェーズでの問題発生が市場成長の阻害要因となるケースも増加傾向にある
IDCの植村卓弥氏(Software&Services シニアリサーチマネージャー)は「AIユースケースの発展は、最適な実装に向けたビジネスコンサルティングの需要を活性化させる。ビジネスコンサルティング事業者は、企業全体のデジタルビジネス化や産業、社会の変革を支援するための、大規模な実装に並走するスケーラブルなコンサルティング能力の強化を進める必要がある」と説明する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ユーザー企業にとって真の「共創パートナー」とは? Salesforceの新ビジネスから考察
Salesforceが新たなパートナー施策として、SaaSのアウトソーシングによるビジネスモデルを本格的に展開し始めた。キーワードは「BPaaS」だ。果たして、DXに取り組むユーザー企業に受け入れられるだろうか。
NTTデータ本間社長が語る 「ITサービス事業者が果たすべき役割」
ITサービス事業者がこれから果たすべき役割とは何か。同事業者の代表的な存在の一つであるNTTデータグループの本間社長は何を語ったか。
アクセンチュアの提言から考察 「DXから全社変革に向けたCFOの役割」とは?
DXと表裏一体の企業変革に向けたCFOの役割とは何か。期待以上の成果を生み出しているCFOとそうではないCFOの違いとは。アクセンチュアが発表した調査結果と提言から考察する。
富士通、NTTデータ、NECの取り組みから探る「ITサービスベンダーはなぜコンサルティングに注力するのか」
ITサービスベンダー大手がコンサルティングに注力するのはなぜか、その「現在地」は――。富士通、NTTデータ、NECの取り組みから探る。
