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「オンプレミス版Gemini」提供開始 KDDIが初期導入に参加AIニュースピックアップ

Googleが生成AI「Gemini」を、Google Cloudのオンプレミス延伸環境であるGDCでも提供する。GovTech Singaporeなどの他、日本からはKDDIが初期導入に参加する。

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 Googleは2025年8月28日(現地時間)、「Google Distributed Cloud」(GDC)への生成AIモデル「Gemini」の提供開始を正式に発表した。企業や政府機関が従来直面してきた「高度なAIを利用するか、あるいはデータ主権やセキュリティを優先するか」という選択の必要がなくなるとしている。

Google Distributed Cloudに「Gemini」が登場

 今回発表されたのは、外部ネットワークから隔離した環境で動作する「Gemini on GDC air-gapped」の一般提供版、接続環境を前提とする「Gemini on GDC connected」のプレビュー版提供だ。これらにより、ユーザーはデータセンター内に直接Geminiを導入できるようになる。

 発表によれば、シンガポールの戦略的情報通信技術センター(CSIT)、GovTech Singapore、HTX、日本のKDDI、アフリカを拠点とするLiquid C2などの組織が初期導入に参加しており、生成AIの利用による利便性向上に期待を寄せている。

 Geminiは広範な文脈理解やマルチモーダル処理(テキスト、画像、音声、動画)に対応しており、次のような用途が実現可能になる。

  • 多言語対応により国際業務の連携を円滑化
  • 文書要約や感情分析などによる意思決定の迅速化
  • チャットボットや仮想アシスタントの構築による従業員・顧客対応の効率化
  • コード生成や自動補完、バグ検出による開発スピードの向上
  • 有害コンテンツの検出やポリシー順守を支援する安全性強化

 Googleは、単にモデルを提供するだけではなく、インフラからエージェント機能までを包含する「完全なAI基盤」を提供する点を強調している。GDCは高度なAIインフラとGeminiモデルを統合したスタックを備えており、業務全体のAI活用を加速できる仕組みを持つ。


GDCの技術スタック(出典:Google CloudのWebサイト)

 性能面ではNVIDIAの「Hopper」および「Blackwell」シリーズのGPUを採用し、高性能かつ可用性を確保する構成を整備している。Geminiエンドポイントはゼロタッチで更新され、L7ロードバランサーと高度なフリート管理機能により自動的に負荷分散やスケーリングが行われる。

 セキュリティ面では監査ログやアクセス制御によりオンプレミス環境内外のデータトラフィックを監視可能とし、厳格な規制要件にも対応できる。また「Intel TDX」やNVIDIAの「Confidential Computing」を活用することで、CPUとGPUにおける機密計算を実現し、データ改ざんや不正持ち出しを防止する仕組みを備える。

 柔軟性についても配慮されており、「Gemini 2.5 Flash/Pro」モデルに加え、翻訳やOCR、音声認識、埋め込み生成といった「Vertex AI」のタスク特化型モデル、オープンソースの「Gemma」モデルにも対応する。加えて、A3およびA4仮想マシンやKubernetesクラスターをを利用してオープンソースやカスタムのAIモデルも自由に展開できる。

 Vertex AIサービスと組み合わせることでデータコネクターやエージェント基盤を含む統合AI環境も構築できる。今回プレビューとして提供される「Agentspace search」により、オンプレミスデータを横断的に検索する仕組みも用意されている。

 今回の発表は、生成AIを自社環境で安全に運用したい企業や政府機関に対し新たな選択肢を提示している。GoogleはGDCとGeminiを通じ、幅広いAI利用の可能性を拡張するとしている。

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