田辺ファーマが“脱VMware”をNutanixで実現 創薬系システムを新インフラに
社内システムのクラウドサービス移行を進める田辺ファーマ(旧:田辺三菱製薬)は、VMwareのハイパーバイザーで構築した創薬系システムのインフラを刷新。「Nutanix AHV」を中核とした新インフラに切り替えた。
田辺ファーマ(2025年12月1日に田辺三菱製薬から社名変更)が、新薬の研究開発を支える創薬系システムのインフラを刷新した。VMwareのハイパーバイザーで構築した既存インフラから、Nutanixのハイパーバイザー「Nutanix AHV」による新設インフラに切り替えた。この新インフラを田辺ファーマは「創薬系仮想化基盤」と呼ぶ。システム構築を手掛けたアルファテック・ソリューションズが2025年11月27日に発表した。
“脱VMware”を実現した田辺ファーマの新インフラとは
創薬系仮想化基盤の中核要素として田辺ファーマが採用したのが、HPEのHCI(ハイパーコンバージドインフラ)アプライアンス「HPE ProLiant DX」だ。HPE ProLiant DXは、Nutanix AHVをはじめとするNutanixのHCIソフトウェアを搭載する。田辺ファーマはスケールアウトが可能なHCIの特徴を生かし、稼働開始時には最小限のリソースに抑えた上で、研究開発計画の進行に応じてノード(物理サーバ)単位でリソースを増強する。
VMware製ハイパーバイザーからNutanix AHVへの移行を効率化するため、田辺ファーマはNutanixの移行支援ツール「Nutanix Move」を利用した。新旧インフラを仮想マシン単位でオンライン同期させ、同期完了後に新インフラに切り替えた。異なるハイパーバイザー間での移行に必要な変換処理をNutanix Moveで自動化することで、移行コスト抑制につなげた。今回の移行により、VMwareのライセンス体系変更に伴うコスト増加などの諸問題も回避できる見通しだという。
田辺ファーマはHPEのインフラサービス「HPE GreenLake」を採用し、月額課金でHPE ProLiant DXを利用できるようにした。HPE GreenLakeを契約したユーザー企業は、ハードウェアに加えて、ソフトウェアや構築・運用サービスなどを月額課金で利用できる。田辺ファーマはノード単位でHPE GreenLakeを適用し、ノードの追加ごとに契約を積み増す。これにより初期コストを抑えつつ、ライフサイクル全体での必要以上のコスト高騰を防ぐ。
2026年末までのデータセンター撤廃を計画するなど、田辺ファーマはオンプレミスインフラからクラウドサービスへの移行を積極的に進めている。だが全てのシステムをクラウドサービスへと短期間で移行することは難しい。特に創薬系システムは、アプリケーションの改修やソフトウェアライセンスの整理、製薬業界特有のバリデーション(医薬品の製造工程や方法の正しさを検証すること)対応などが必要となり、相応の時間が必要になる。
田辺ファーマは創薬系を中心に、クラウドサービスへの即時移行が困難な約70種類のアプリケーションを選定し、今回新設した創薬系仮想化基盤に一時的に集約することにした。創薬系仮想化基盤はスケールアウトが容易なHCIと、月額課金の調達モデルを実現するHPE GreenLakeの採用により、オンプレミスインフラでありながらクラウドサービスのような運用を実現する。同社はデータセンター撤廃までには、これらのアプリケーションもクラウドサービスへの移行を済ませたい考えだ。
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