AI活用を見据えたデータ基盤を構築し、小売事業者におけるデータの利活用を促進:多様なデータを「すぐに使える形」に
電子マネー決済のクラウド化を実現し、電子マネー決済ゲートウェイサービスを2011年に開始したTMN。115万台超の端末が接続する決済ゲートウェイサービスを展開し、店舗における電子マネーの利用拡大に貢献してきた同社は今、クレジットやQRも含むオールインワン決済を強みに小売事業者向けのデータ活用支援へ踏み出した。膨大な情報をどうビジネス価値へ変えるのか。
AI活用が急務になる中で、事業成長や新規事業を見据えたデータ基盤をどのように構築するかは難しい問題だ。
小売事業者のデータ利活用に向け、購買データ等を預かるサービス「Xinfony Data Hub」の開発、立ち上げに着手したトランザクション・メディア・ネットワークス(以下、TMN)は、将来の拡張や運用を見据えた基盤をどのように構築するかという悩みを抱えていた。課題解決に導く製品選定の在り方と、AI活用を見据えたデータ基盤構築を支援するジールのサービスに迫る。
決済から「情報プロセシング」へ
TMNは、他社に先駆けて電子マネーのクラウド型決済を商用化した企業として知られている。現在115万台以上の端末が接続しており、43種類の決済ブランドに対応している同社のキャッシュレス決済ゲートウェイは国内屈指の規模を誇る。
近年、TMNは決済ゲートウェイサービスを提供している小売事業者に対し、POS(Point of Sales)やハウスプリペイド、顔認識カメラ、モビリティーなどデータの利活用に向けたさまざまなサービスを「情報プロセシング事業」として展開し始めている。
TMNは情報プロセシング事業を通じ、小売事業者におけるさまざまな課題の解決に貢献したいと考えている。多くの企業はデータやシステムのサイロ化によってデータを効果的に活用できていない。販売と営業のデータが分断されているため購買動向を十分に把握できず、適切なマーケティング施策につながらないといった具合だ。
こうした課題に対し、TMNはPOSやハウスプリペイド等の「データが集まるサービス」と、マーケティング等の「データを活用するサービス」を推進することでデータの循環を生み出し、小売事業者の課題解決や収益改善を実現しようとしている。
「データが集まるサービス」と「データを活用するサービス」をつなげるのが、前述したXinfony Data Hubだ。データの保全「あずかる」、連携「つなげる」、分析「みつけだす」という機能をワンストップで提供し、将来的には企業の枠を超えたプラットフォームの構築を目指している。
なぜDatabricksとStreamlitを選んだのか
TMNはXinfony Data Hubの基盤をDatabricksで構築した。TMNが重視したのは以下の5つの観点だ。
1. レイクハウスアーキテクチャ:
Databricksはデータウェアハウスとデータレイクの特徴を融合させており、構造化データと非構造化データを単一プラットフォームで管理できる。
2. 統合的なデータ活用環境:
データの取り込みから加工、分析、AI活用まで一貫して実行できるため、部門横断でデータ活用してスピードと品質を両立させることができる。
3. コスト最適化:
大規模データを扱うケースでも、リソースを柔軟に調整してコストと性能のバランスを最適化できる。
4. オープンな技術基盤:
オープンソースや標準技術をベースにしているため他システムと容易に連携できる。
5. 将来への拡張性:
AIによる分析や開発支援など、データ活用の高度化を見据えた基盤として有望。
TMNの阿部清隆氏は「Databricksのレイクハウスは、さまざまなデータをすぐに使える形にできます。AIや新しいユースケースにも柔軟に対応でき、今後の進化にも耐えられるプラットフォームだと判断しました。『あらゆるデジタルデータのゲートウェイ』を実現する上で、最も信頼できる中核基盤でした」と話す。
次に、TMNは可視化手段としてPythonベースのWebアプリケーション開発フレームワーク「Streamlit」を採用した。データを可視化するダッシュボードの構築にはBIツールを使うことが多いが、応答速度の低下やツールの仕様が制約されることをTMNは懸念した。
デザイン面で一部制約はあるものの、Streamlitによるダッシュボード構築はこれらの懸念点の多くを解消する他、「既存のBIツールと比較して処理時間を最大90%削減できた」(阿部氏)点をTMNは評価した。Pythonで軽量かつ柔軟にダッシュボードを作成できるため、顧客の要望に迅速に応えることが可能になった。
Xinfony Data Hubのダッシュボード開発は、パートナーのジールがUIの開発や実装を担当し、TMNは顧客の要望に即しているかどうかの判断を担当した。これによってフィードバックを即座に開発や改善に生かせる体制を実現した。
国内最大級の生協で実現 事業横断のデータ活用
Xinfony Data Hubによって課題を解決したのが、Xinfony Data Hubのファーストユーザーとして開発初期から参画したコープこうべだ。組合員数171万人のコープこうべは、生活協同組合としては有数の規模を誇る。店舗事業と宅配事業を中心に複数の事業を展開しており、事業をまたいで利用している組合員も多い。しかしデータが分断されているため、利用状況を十分に把握できないことが課題だった。
2021年の創立100年を契機に、コープこうべは店舗購買データや宅配利用データ、会員情報といった各種データをXinfony Data Hubで統合し、利用状況をダッシュボードで可視化した。事業やサービスのデータを横断的に見える化したことで、ライフステージに応じた施策を打てるようになった。必要な人に必要なタイミングで情報を届けられるようになり、組合員の利便性を向上させる施策の選択肢が大きく広がった。
新規事業の不確実性を乗り越えたジールの伴走支援
新規事業を支える基盤となったXinfony Data Hubの構築を、開発パートナーとして支援したのがジールだ。ジールを選んだ理由について阿部氏は次のように振り返る。
「当時、Databricksに関するわれわれの知見は十分ではありませんでした。レイクハウスを自社でどこまで設計してどのように構築すべきか、技術的な判断に不安がありました。データ基盤の構築についても、将来の拡張や運用まで見据えた判断に自信が持てませんでした。ジールはDatabricksにおける実績に基づいた提案力、柔軟力が魅力でした」
ジールはDatabricksの日本市場参入時からパートナーシップを築き、構築支援だけでなくトレーニングやプロフェッショナルサービスまで提供する公認パートナーだ。Databricksへの移行プロジェクトの実績により「APJ Migration Partner of the Year 2024」を受賞し、同社従業員5人が「Databricks Champion」に選出されている。
支援を担当した同社の野田正亮氏に対し、阿部氏は「野田さんからは『こうすると将来困ることになる』『この設計であれば拡張しやすい』といった提案がありました。どんな質問に対してもなぜそうすべきかといった本質的な理由を話してくれる真摯(しんし)な対応に『ジールなら任せられる』と感じました」と語る。
今回、TMNが依頼したのは不確定要素が多い新規事業立ち上げの支援だった。「抽象度が高い要望や曖昧な依頼でもジールは受け取り、不足している要件を細かく分析した上で柔軟に対応してくれました」
TMNはDatabricksを中核とした新しいデータ基盤を短期間で構築できた。「プロジェクトを進めるスピードやチームとしての安心感、完遂まで伴走する信頼感はジールだからこそ得られた価値だと思っています。このプロジェクトはジールなしでは決して実現できませんでした」
データ基盤からAIエージェントまで ジールの次世代支援
ジールは以前から、AIの導入支援にも取り組んでいる。生成AIやAIエージェントの導入は、正確で信頼できるデータが十分になければ良好な成果は出ない。ジールはデータ基盤の構築に30年以上取り組んできた経験を生かし、機械学習を含むAI導入のプロジェクト全体を支援している。
その一環として同社が注力しているのが、最新技術の検証だ。AIとの親和性が高いことで知られるDatabricksは、AIプラットフォーム「Mosaic AI エージェントフレームワーク」の新機能としてノーコードでAIエージェントを作成できる「Agent Bricks」のβ版を2025年に発表した。ジールは同機能を検証し、請求書をPDFからJSONに変換するAIエージェントのプロトタイプを構築するなど、実務に直結するユースケースにおける有効性を確認した。
ベンダーフリーの立場から、Databricksに限らず幅広いAIやAIエージェント導入に対応できる体制を整えている点もジールの強みだ。
「あらゆるデータのゲートウェイ」を実現 両社が描く展望
TMNは今後、決済ゲートウェイサービスを利用する小売事業者に向けてXinfony Data Hubを提供し、事業環境や顧客ニーズの変化に合わせて機能を拡張する予定だ。
「小売業者と共同でメーカーや卸売業者にID-POSデータなどを提供することで、データ流通を促進したいと考えています。データを横断的に活用できる基盤を整えたことで、業界全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する役割を担えるようになりました。“ありえないを、やり遂げる。”というミッションをデータ活用で実現します」(阿部氏)
TMNの新しい歩みを支援しているジールの野田氏は、今後の展望について「これからもTMNさんと一緒に汗をかきながら、事業拡大に貢献したいと考えています。流通・小売業界の発展にも寄与できるように、TMNさんに伴走します」と語った。
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提供:株式会社ジール
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年3月19日



