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AI時代の防御戦略は戦国史に学べ? GMO大会議で語られた意外な教訓

AIが“武器”になる時代、守る側はどうすべきか。GMOインターネットグループのトップが「長篠の戦い」を引き合いに、サイバー防御の本質を語った。さらに同イベントでは、小泉進次郎防衛大臣や高市早苗内閣総理大臣からの強いメッセージも飛び出した。

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 GMOインターネットグループは2026年3月5日、「第3回GMO大会議 春 サイバーセキュリティ2026」を開催した。このイベントでは、GMOインターネットグループが新合弁会社「GMO Preferred Security株式会社」を設立するという発表を含め、産官学の識者が集まり、それぞれの立場からお互いで協奏すべく、現代サイバー空間の「セキュリティ」を語った。その一部をレポートしよう。


第3回GMO大会議 春 サイバーセキュリティ2026(第3回GMO大会議 春 サイバーセキュリティ2026で筆者撮影、以下同)

GMO熊谷氏が語る「長篠の戦い」から学ぶ、AI時代の生存戦略とは?


GMOインターネットグループの熊谷正寿氏(グループ代表)

 GMOインターネットグループの熊谷正寿氏(グループ代表)はイベントの冒頭で、GMOグループが「Windows 95」とともに誕生し、2025年で30周年を迎えたこと、上場12社を中心とし、グループ130社の規模となったと話す。同グループは現在、セキュリティ事業においても約8200人のパートナーのうち約1200人がセキュリティ事業に従事しており、「改ざん防止」「サイバー攻撃防止」「なりすまし防止」の3つを柱とし、展開している。

 熊谷氏はまず、「モーセの十戒」を引き合いに出す。そこには「盗んではならない」「偽ってはならない」という戒めが3000年以上前から存在していたことに触れ、「今も人間の本質的な悪意は変わっていない」と指摘する。

 「インターネットは本来人を笑顔にするツールとして発展してきたが、現実は悪意を持ったものにも使われている点に胸を痛めている」(熊谷氏)

 人の本質は変わらない一方、武器は変わってきた。刀から鉄砲への進化で距離や殺傷力が飛躍的に増したように、われわれは新たな武器である「AI」に直面している。圧倒的なスピードと高度な自動化により、被害が深刻化しているという。

 そして熊谷氏は、歴史上の「長篠の戦い」を例に挙げる。当時、織田・徳川連合軍が武田軍を打ち破った際、実は両軍ともに鉄砲を所持していた。勝敗を分けたのは「鉄砲を持っていたかどうか」ではなく、「その武器をどう使ったか」という戦術の違いにあると同氏は指摘する。これと同様に、AIを駆使する悪意あるハッカーを撃退できるかどうかも、防衛側がいかにAIを使いこなせるかにかかっていると力説した。


長篠の戦いに学べ

 熊谷氏は最後に、これからのセキュリティ対策は単なる技術論にとどまってはならないと強調した。制度設計や組織づくり、オペレーションの改善、人材育成、そして産官学の強力な連携といった、社会全体で「守り」を更新し続ける枠組みが必要不可欠だ。

 歴史が示す通り、世の中から犯罪が完全に消え去ることはないとしつつも「そうした困難に立ち向かい、子どもたちが夢を追い求め、安心して学び成長できる未来、そして誰もがデジタル技術の恩恵を享受し、豊かで便利な生活を送れる未来を創造するために、本日は熱い議論を交わし、新たな力を結集しよう」と参加者に強く呼びかけた。

新会社「GMO Preferred Security株式会社」の目的とは?

 同イベントでは、Preferred Networks(以下、PFN)とGMOインターネットグループ、GMOサイバーセキュリティ byイエラエが合弁会社「GMO Preferred Security株式会社」を設立したという新たな発表もあった。

 AI半導体というハードウェアから、生成AI開発力というソフトウェアを包括してセキュリティを確保し、経済安全保障の観点から重要性が高まる海外技術に依存しない国産AI環境の信頼性向上を図るための協業となる。同発表ではGMOインターネットグループによるPFNへの出資や、GMOグローバルサインの電子認証技術のAI半導体への組み込み、GMOインターネットによるGPU計算資源の連携など、GMOインターネットグループ各社との協業が含まれる。

 Preferred Networksの岡野原大輔氏(代表取締役社長)は「PFNとGMOインターネットグループ、GMOサイバーセキュリティ byイエラエの3社の強みを生かし、半導体からAI、そしてそれを提供するところまで、安心・安全に使えるような基盤を作っていきたい」と述べる。この背景にあるのが、AIにおいてセキュリティが非常に重要となってきている点、そしてAIがインフラとして社会に不可欠な存在になっている点だ。


Preferred Networksの岡野原大輔氏(代表取締役社長)

 半導体レベルのセキュリティにおいては、PFNが設計・開発する国産AI半導体やその上で動作するAIソフトウェアに対し、GMOサイバーセキュリティ byイエラエが脆弱(ぜいじゃく)性診断・セキュリティ評価を実施する他、半導体の設計段階から安全性を検証する。

 加えて電子認証によるトラスト(信頼性)の確保については、GMOグローバルサインの電子認証技術を活用し、AI半導体やソフトウェアの真正性を証明するチェーン・オブ・トラスト(信頼の連鎖)を構築する。AI環境に改ざんや不正がないことを技術的に確保する。AIソフトウェア・運用環境のセキュリティについては、国産生成AIをはじめとするAIソフトウェアの安全な実行環境を構築し、セキュリティ監視・認証サービスを提供する。


半導体レベルからセキュリティを確保する

高市早苗総理大臣、小泉進次郎防衛大臣からのメッセージも

 このイベントでは冒頭、高市早苗内閣総理大臣のメッセージが飯田陽一内閣サイバー官により代読された。メッセージでは、今やサイバー空間は不可欠な社会基盤かつ公共空間であり、自由・公正・安全な空間を確保する必要がある一方、行政機関や企業からの情報窃取、ランサムウェアによる医療活動の停止など、サイバー攻撃の脅威は激化しており、国民生活や経済活動、さらには安全保障にも大きな影響を及ぼす状況になっていると危機感を示す。

 それに対し、2025年に成立した「サイバー対処能力強化法」(正式名称:重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律)と新たに策定したサイバーセキュリティ戦略に基づき、サイバー対処能力の強化と社会全体のサイバーレジリエンス向上に積極的に取り組み、国民の命と経済を守り抜く姿勢を強調した。高市総理大臣は政府が主導する「サイバーセキュリティ月間(2026年2月1日〜3月18日)」に触れ、サイバー攻撃は「人ごとではない自分のこと」であると述べ、暮らしを守るためには、国民一人一人の協力が不可欠であると呼びかけた。


高市早苗内閣総理大臣のメッセージを代読する、飯田陽一内閣サイバー官

 加えて小泉進次郎防衛大臣のビデオメッセージも流された。小泉大臣は、高度なサイバー攻撃や脅威が顕在化しており、現在のサイバー空間はもはや「純然たる平時」とは言えず、現実の安全保障に直結する重要な領域になっていると指摘する。

 また、防衛省・自衛隊がサイバー防衛体制の強化を進める中、24時間体制で情報通信インフラを監視するサイバー防衛隊の隊員たちの「静かな守り」によって我が国の平和と安全が支えられているとし、誇りに思うと述べた。


ビデオメッセージで出演した小泉進次郎防衛大臣

 新たな防御手法である「能動的サイバー防御」の導入により、自衛隊が脅威を早期に把握し、被害を未然に抑止するための新たな任務に取り組んでいることに触れ、サイバーセキュリティは政府単独では成し遂げられず、民間企業の技術や学術機関の知見を結集する「産学官の連携」が不可欠であると強調した。

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