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Box CEOが語る「AIによるコンテンツ管理プラットフォームの進化」 同社の優位性を考察Weekly Memo

コンテンツ管理プラットフォームを提供するBoxのCEOがAIによる進化について語った。同社の進化は、エージェンティックAI市場がこれからどのように形成されるのかを映し出す、エポックメイキングな動きの一つともいえそうだ。

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 AIを活用するためには、AIの動力源となるデータを整備する必要がある。そこで今、改めて注目されているのが、AI活用を支えるデータ基盤だ。企業内のあらゆるコンテンツデータの管理・活用を支援するBoxのサービスもその一つだ。そんな同社のサービスが、エージェンティックAI時代に向けて新たな役割を担う可能性について、同社の経営トップが示唆した。今回はその内容を紹介し、この動きについて考察したい。

企業がAIエージェントを活用するための要件とは

 「AIが仕事の在り方そのものを一変させている」

 企業のコンテンツ管理・活用ソリューションをクラウドサービスで提供する米Boxのアーロン・レヴィ氏(共同創業者 兼 CEO=最高経営責任者)は、同社の日本法人Box Japanが2026年6月5日に都内ホテルで開催した年次イベント「BoxWorks Tokyo 2026」の基調講演で、こう切り出した。


Boxのアーロン・レヴィ氏(共同創業者 兼 CEO)(筆者撮影)

 2005年に米国シリコンバレーで創業したBoxは社名と同じ名称のクラウドストレージサービスを展開し、今ではAIエージェントも活用できる「インテリジェントコンテンツ管理プラットフォーム」へと進化。グローバルで12万社超、日本でも2万2000社を超えるユーザーが同社のサービスを利用しており、AI活用を支えるデータ基盤として存在感を高めている。

 レヴィ氏は冒頭の発言に続けて、今、最も注目すべき点について以下のように語った。

 「今、最も注目すべきは、AIエージェントの動きだ。現状では限定的なタスクを実行するところから使われているが、今後はAIエージェント群が複雑なワークフローを自動化するようになる」と述べた(図1)。


図1 AIエージェントの進化1(出典:「BoxWorks Tokyo 2026」基調講演の説明資料)

 さらに、「AIエージェントは現状でもさまざまな資料の作成やレビュー、コーディングといった仕事をこなす。AIエージェント群がエージェント型ワークフローに対応するようになると、幅広い業務のプロセスそのものの変革が進む」とも説明した。(図2)


図2 AIエージェントの進化2(出典:「BoxWorks Tokyo 2026」基調講演の説明資料)

 だが、同氏は「そうした変革を実現するためには、AIエージェントが自社のビジネスに関するあらゆる情報を把握している必要がある」と話す。そして「その情報には、製品の仕様や研究開発、マーケティング、顧客データ、人事データなど自社固有の情報も含まれる。それらはまさしく自社のビジネスのコンテキスト(文脈)だ。そして、それらは自社が保有するコンテンツの中に存在する。従って、そのコンテンツとAIエージェントを連携させることが重要となる」と述べた。

 その上で、「今や企業内のビジネスデータの90%は、(文書などの)非構造データだ。かつてのコンピュータは(財務データなどの)構造化データを対象としており、非構造化データは活用できなかった。しかし、業務の効率化、さらには自動化を図るためには、非構造化データを有効に活用する必要がある」と説明した。同社ではこの非構造化データをコンテンツと表現している。

 だが、同氏は「非構造化データについても従来の管理方法に大きな問題がある」と、再び切り返した。何が問題なのか。「AIエージェントが企業内のさまざまなコンテンツにアクセスしようとしてもできないケースが多々起きている。なぜか。企業内で使われているさまざまなアプリケーションごとにデータが散在して断片化しており、連携させて活用できないからだ。企業が求めているのは、コンテンツとAIエージェントを柔軟かつ安全に連携して業務の効率化や自動化を図ることだ」と説いた(図3)。


図3 AIエージェントが企業内のデータを使えない理由(出典:「BoxWorks Tokyo 2026」基調講演の説明資料)

 それを実現するのが、インテリジェントコンテンツ管理プラットフォームを形成するBoxのサービス群だ(図4)。


図4 インテリジェントコンテンツ管理プラットフォームの全体像(出典:「BoxWorks Tokyo 2026」基調講演の説明資料)

 その全体像は図4に示すように、下から「インフラ」「データ」「コンテンツサービス」「AIプラットフォーム」で構成されており、UI(ユーザーインタフェース)をはじめとしたさまざまな接続技術を通じて「ユーザー」「AIエージェント」「アプリ」の3者が柔軟かつ安全にアクセスできるようになっている。この3者が上段に同じ立場で並んでいる構図もBoxならではだろう。

 なお、Boxはかねて幅広いパートナーエコシステムを構築しており、アプリもAIエージェントも他社の主要なものと連携できるようになっている(図5)。


図5 BoxはアプリもAIエージェントも他社の主要なものと連携可能(出典:「BoxWorks Tokyo 2026」基調講演の説明資料)

エージェント型ワークフローで業務プロセス変革へ

 そして、レヴィ氏は自身のスピーチの最後に、AI変革のプロセスについて図6を示しながら、次のように述べた。


図6 AI変革のプロセス(出典:「BoxWorks Tokyo 2026」基調講演の説明資料)

 「AIの変革プロセスについては3つのステップがある。第1のステップは、ナレッジワークをAIによって効率化できるようになること。第2のステップは、大量の情報をマイニングできるようになること。そして第3のステップでは、エージェント型ワークフローで業務プロセスを変革できるようになることだ。多くの企業にBoxでこの3つのステップを突き進んでいただきたい」

 筆者がこのレヴィ氏のAI変革のプロセスについての説明で注目したのは、図2のところでも触れた「エージェント型ワークフローで業務プロセスを変革」という表現だ。これは、これまでのコンテンツ管理プラットフォームの枠を超えたものではないか。同氏が言う「AIエージェント群」をオーケストレーションさせながらマネジメントして、全社業務の効率化、自動化を図る技術や利用環境を指すエージェンティックAIのプラットフォームのポジションを狙っているのではないか。

 その意味で、Boxには有利な面がある。というのは、これまでコンテンツ管理プラットフォームに集中し、業務アプリケーションなどを手掛けてこなかったことから、これから大きく築かれるであろうエージェンティックAI市場において中立の立場だからだ。BoxはこれまでのSaaS市場においてもこの立場を貫いてきたので、幅広いパートナーエコシステムを形成できている。そのユニークな立ち位置が、エージェンティックAI市場においても効果的に作用するのではないかというのが、筆者の見立てだ。

 ただ、BoxがエージェンティックAIプラットフォームとして相応の影響力を保持するためには、もともとのデータ基盤であるコンテンツ管理プラットフォームの存在感をさらに高めることが重要になるだろう。このデータ基盤の市場もエージェンティックAI市場と同様、これから激戦区になる可能性が高い。

 そうした中で、BoxはAIによってどのように進化するのか。それは、エージェンティックAI市場がこれからどのように形成されていくのかを映し出すエポックメイキングな動きの一つではないかとも、筆者は見ている。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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