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インタビュー

「大企業を恐れず、機会にフォーカスせよ」Okta CEOが説くAI時代の勝機とセキュリティ

AIエージェントの普及が進む中、企業のシステムへの侵入経路は急激に広がっている。アイデンティティ管理サービスを提供するOktaのCEOが来日し、この課題にどう向き合うべきかを語った。

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 アイデンティティ管理サービスを提供するOktaのトッド・マッキノンCEOが2026年6月25日に来日し、記者説明会が開催された。同氏がOktaのビジョンを解説した後、記者との対話を中心としたセッションが開かれた。AIエージェント時代のアイデンティティセキュリティという時代の変化において、CEOは何を語るのか。その様子をレポートする。


Oktaのトッド・マッキノン氏(筆者撮影)

世界で高まるAIセキュリティへの関心、そして日本市場への期待

 説明会の冒頭マッキノン氏は、今回の来日で日本の顧客との対話を重ねたことに触れ、現在日本で「とても大きくかつ素晴らしいことが起き始めている」と手応えを述べる。世界的に有名な大手ブランド企業が多数存在する日本市場は、Oktaの将来の戦略において非常に重要であると位置付けている。

 加えて、日本の企業が抱えるトピックがアメリカの企業と非常に似ていることに驚いたと述べる。どちらの企業も、AIテクノロジーの波を自分たちにとって「とても大きくかつ重要でインパクトをもたらすもの」として捉えているという共通点を見いだしたという。

 企業はテクノロジーを活用しつつ、同時にセキュリティを確保し、コントロールされた環境を活用したいというニーズがある。その中でOktaはセキュリティ機能を提供してきたが、新たな「AIエージェントをどう守るか、という質問が出てくるのは自然な流れだ」と述べる。これらを踏まえ、日本市場におけるAIテクノロジー活用のポテンシャルを今まで以上に強く感じていると締めくくる。

 トッド・マッキノン氏に対する質疑応答の一部を紹介する。

セキュリティ強化と自動化の関係性について

――セキュリティを強化すると利便性が下がりがちだ。今後AIエージェントが普及すると、業務が自動化していく流れと、アプリケーションの利用を制限することが相反する可能性がある。コントロールと使い勝手の両立をどのように実現していくのか。

マッキノン氏:セキュリティを制御しながら使い勝手を良くするという中核概念は、AIエージェントに対しても全く同じように適用される。人間を対象としたアイデンティティ管理で得た教訓を生かし、AIエージェントにも同社の制御を適用していくことになる。

 現場が認証を煩雑に感じている場合、システムが過度に保守的に設定されている可能性がある。弊社の製品は柔軟性が高く、企業の希望に合わせて保守的にも開放的にも設定できる。この柔軟性をAIエージェントの管理にも引き継ぎ、管理者が制御を維持しながら現場が使いやすさを手にできるようにする。

 OktaはAIエージェントに対してもセキュアな認証を実現するため、3つ重要なポイントにフォーカスする。

  • AIエージェントの特定:会社全体のどこにAIエージェントが存在するのか、全てを把握する。大規模な電子商取引企業などでも、現状はAIエージェントの把握ができていないことが多い
  • 接続の保護:特定したエージェントが、どのデータやアプリケーションとつながるのかを把握し、その接続にセキュリティを提供する
  • 特権の管理:そのAIエージェントに何を許可するのかを管理する

シャドーAIと他社との連携

――シャドーAIの可視化も行うということだが、従業員が社内データをAIに入力する行為を止めるのは難しい。この点についてどう対応するか。

マッキノン氏:AIのセキュリティを確保するということは、決して一社単独ではできないと考える。これは開発されたアプリに限った話ではない。今後、全てのテクノロジーは自律的に、エージェンティックに動いていくようになる。

 もちろんOkta単体でもシャドーAIの検知は可能だ。しかしわれわれはそれと並行して、さまざまな要素を検知できるように他のベンダーとの連携や統合を進めている。過去17年間にわたり、ありとあらゆるデータベース、デバイス、アプリケーションと統合してきたことはわれわれの最大の得意領域。特にAIの世界において、この「統合」の力は非常に重要になる。だからこそ今、Oktaはここまで成功している。

AIが開発の現場を変化させる

――世間では「AIの到来によってエントリーレベルのプログラマーは不要になる」と言われている中、マッキノン氏は「むしろこれからの5年で優秀なプログラマーの需要は増え、彼らこそが未来を形成する人たちだ」と語った。若手の育成や今後のビジョンについて改めて詳しく教えてほしい。

マッキノン氏:AIテクノロジーは、バイブコーディングを実現し、ソフトウェア開発やプロダクトの開発に大きな変更をもたらしている。インターネットやクラウド、モバイルが出てきた過去の波は、エンジニアにとって「仕事が増える」状況を生み出したが、今のAIの波はソフトウェアエンジニアリングそのものにディスラプション(破壊的変革)を起こしている。

 ディスラプションの当事者になるのは大変なことだが、だからこそ変化に対してオープンな姿勢が必要だ。オープンな姿勢が必要だ。これからはソフトウェアエンジニアへの需要が増えていくが、今までとは働き方を変えていく必要がある。単に新しいツールを社員に使わせるだけでなく、ソフトウェアの構築プロセスそのものを変えなければならない。

 短期的には新しいことを学んだり、仕事のやり方を変えたりしなければならないため、仕事はスローダウンするだろう。しかし、長期的に見ればそれがスピードアップにつながる。シリコンバレーでは「AIツールで生産性が飛躍的に上がった」と大げさに言われがちだが、実際には、新しいプロセスを変化として受け入れ、学び直すことに投資できる企業、つまり短期的なダメージを受け入れてでも長期的なメリットのために動ける企業こそが、長い目で見た時に大きく生産性を上げることができると考えている。

 大手企業がこの変化に適応していかなかったら、今後2、3年においてはスタートアップ企業や、より規模の小さい企業の方が優位性を得ることになるかもしれない。

全ての企業への助言

――いま、スタートアップ企業や中小企業に優位性が生まれるという指摘があったが、そういった企業が成功するための最初のステップはどのようなものか。ぜひアドバイスをいただきたい。

マッキノン氏:私がアドバイスできるとしたら、「大きな機会(オポチュニティ)を掴みにいくことを恐れるな。そして大企業を恐れるな」だ。大企業は変化するのが難しく、全く違う新しいマーケットに入っていくのはとても大変だ。巨大なテック企業があらゆる市場を飲み込んでしまうのではないかという恐れはあると思う。しかし、このような状況で何よりも大事なのは「フォーカス」することだ。

 一つの機会にフォーカスを絞り込むことは、中小企業やスタートアップこそが得意とすることだと思う。新しいテクノロジーが出てくると、例えば金融業界など、これまでテクノロジー中心ではなかった業界も、AIエージェント、LLMが台頭することにより、皆さんが思うよりもスピーディにテクノロジードリブンの業界へと移行していく。これを過小評価してはならない。

 新しい波が来るたびにそれを適用できる業界は広がっており、中小企業であっても、大企業に対して破壊的変革を起こすことができるはずだ。

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