【専門家に聞く、生成AIからの情報漏えい対策】うっかり漏えいをWebブラウザで防ぐ方法とは
生成AIの普及に伴う情報漏えいリスクへの対処や、従来のセキュリティ対策のコスト・運用負荷に悩むIT担当者や経営者に向けて、既存ブラウザへのプラグイン追加で手軽に始められる新しいセキュリティ対策のポイントを、Q&A形式で解説します。
この記事の概要
- 急増する「うっかり漏えい」リスク
- 生成AIやクラウドの普及に伴い、従業員の「悪意のない入力ミス」による機密情報流出が深刻な課題となっています。
- 高コスト・高負荷な従来対策の壁
- 従来のCASBやDLPといったソリューションは、導入費用が高く運用も複雑なため、中小企業にはハードルが高い状態でした。
- Webブラウザへのプラグイン追加による解決手法
- インターネットイニシアティブ(IIJ)のクラウド型統合エンドポイントセキュリティサービス「IIJセキュアエンドポイントサービス」の一機能である「ブラウジング保護」(SecureLayer)は、既存のWebブラウザにプラグインを追加するだけで、低コストかつ最小限の手間でデータ制御を実現します。
生成AIやクラウドサービスの導入は業務効率化に不可欠となりつつある一方で、従業員の「うっかりミス」による機密情報の流出リスクが深刻化しています。社内ルールや個人の意識に頼るだけの対策には限界があるものの、従来のセキュリティ製品は高額で、運用が難しいという課題があります。本記事は、低コストかつ最小限の手間で導入できるブラウザプラグイン型セキュリティ対策の可能性について、インターネットイニシアティブ(IIJ)の砂田真志氏(ネットワークサービス事業本部 DXP推進本部 エンタープライズサービス1部 SSE開発2課長)にお話を伺いました。
生成AIの利用で企業が直面する具体的な情報漏えいリスク
Q 従業員が生成AIやクラウドサービスを使う際、どのような情報漏えいリスクがありますか?
A 悪意のないうっかりミスで機密情報が社外に分散するリスクが急増しています。
具体的には以下のようなケースが挙げられます。
- 無意識の入力
- 顧客の売上情報や新製品の企画、新システムのソースコードなどを、業務効率化のために生成AIサービスにペーストしてしまう。
- データの学習・公開リスク
- 入力された情報が意図しない形で外部に公開されたり、AIの学習データとして再利用されたりする。
- クラウドの誤設定
- クラウドストレージの権限設定を誤り、誰でも閲覧できる状態で機密データを保存してしまう。
組織や雇用形態が多様化する現代において、砂田氏は「人の正義感やルールだけに頼る対策には限界があり、仕組みでリスクをカバーする必要がある」と警鐘を鳴らしています。
従来のセキュリティ対策(CASBやDLP)が抱える導入の壁
Q 情報漏えいを防ぐ従来の仕組み(CASBやDLP)にはどんな課題がありますか?
A 主な課題は、導入コストと、運用における莫大な手間(専門知識の必要性)です。
- CASB、SASE
- クラウドの利用を可視化・制御するCASBや、ネットワークとセキュリティを統合するSASEは、導入コストが高額になりがちな上、既存のネットワークインフラに変更を加える必要があります。可視化した後に「どのサービスのリスクが高いのか」を企業ごとに人が判断する運用負荷も生じます。
- DLP
- 外部サービスへの機密情報の入力やファイルアップロードを監視・ブロックする技術です。何が機密情報に該当するかを企業ごとに人が判断し、データをラベル付けして定義する必要があり、こちらも運用負荷が高くなりがちです。
そのため、潤沢な予算や専任のIT人材を確保できない中堅・中小企業にとっては、導入のハードルが極めて高いことが問題でした。
Webブラウザのプラグインを介して通信を可視化・制御する発想
Q IIJが提供する「ブラウジング保護」(SecureLayer)は、これまでの対策と何が違うのですか?
A ネットワーク経路ではなく、普段から使い慣れているWebブラウザ(「Google Chrome」や「Microsoft Edge」など)にプラグイン(拡張機能)を追加するだけで、エンドポイント(端末)側で通信を直接制御する点です。このアプローチにより、以下のメリットが生まれます。
- インフラ変更が不要
- ネットワーク構成を変えたり、専用のブラウザに置き換えたりする必要がありません。
- 暗号化通信の復号が不要
- プロキシなどで暗号化を解除する手間をかけずに、通信データが暗号化される前のブラウザ内部で直接データを確認・制御できます。
- 詳細なログ管理
- 「いつ」「誰が」「どのWebサービスに」「どんな文字列を貼り付けたか、あるいはどんなファイルをアップロードしたか」を、通信が暗号化される前のブラウザ内部で詳細に把握・制御できます。
- キッティング不要・段階的な導入が可能
- プラグインは管理画面からダウンロードして配布できるため、対象の端末を回収して初期設定(キッティング)をする手間がかかりません。月額課金モデルのため、まずはIT部門での検証から始め、特定の部署、全社へと段階的に導入範囲を広げるスモールスタートが可能です。
IT専門知識がなくても「現場で運用しきれる」簡単なルール設定
Q IIJのブラウジング保護(SecureLayer)を導入すれば、セキュリティの専門知識が乏しい担当者でも、ルールの設定や運用は可能ですか?
A はい、可能です。IIJのブラウジング保護(SecureLayer)は、複雑なネットワーク通信の知識がなくても、直感的な「行動ベース」でルールを設定できるように設計されています。
- 直感的なUI
- 「ソースコードのアップロードやペーストは禁止する」といった、分かりやすい行動ベースでの設定が可能です。
- プリセットの活用と柔軟なカスタム
- クレジットカード番号やマイナンバーなど、特定のフォーマットを自動検知するルールが標準提供されているほか、正規表現を用いて企業独自の厳密なルールを設定することも可能です。
IT担当者が他の業務を兼務している中堅・中小企業でも、管理すべきツールを増やすことなく「現場で運用しきれるレベル」の対策を継続できます。
他セキュリティ製品との組み合わせ
Q IIJのブラウジング保護(SecureLayer)を導入すれば、他のセキュリティ対策は不要になりますか?
A いいえ、このサービスは既存のセキュリティ製品を置き換えるものではなく、プラスアルファで防御力を高めるツールです。Webブラウザを介した業務が主流となる中で、Webブラウザ起因のリスクをピンポイントで抑えることは有効ですが、全方位的なセキュリティを確保するには他の対策との組み合わせが推奨されます。
- Webコンテンツの無害化
- IIJの「セキュアWebゲートウェイサービス」の「セキュアブラウジングオプション」と組み合わせることで、Webサイトからの脅威を分離・無害化し、より安全なWebアクセス環境を実現できます。
- ZTNAによるゼロトラストアクセスの実装
- 今後SASEへの発展を見据える場合、デバイス側で制御を行う「IIJフレックスモビリティサービス/ZTNA」などと併用することで、より強固な次世代の安全環境を構築できます。
利便性と安全性を両立し、運用しやすい現実的なセキュリティ対策を
生成AIやクラウドサービスが業務に深く浸透する現代において、うっかりミスや内部不正による情報漏えいを未然に防ぐ仕組みの構築は、企業の信頼性を維持するために避けて通れない重要な課題です。従来のセキュリティ対策が抱えていた「高コスト・高負荷」という壁に対して、既存のWebブラウザに拡張機能を追加し、エンドポイント側で通信や入力データを直接制御するアプローチは、予算や人材にゆとりがない企業にとって現実的な選択肢となります。社内ルールや個人の意識だけに依存するのではなく、従業員の業務手順を変更することなく、行動ベースの平易な設定によって運用負荷を抑える仕組みを導入することは、利便性を維持しながら最新テクノロジーを安全に活用するための現実的なアプローチとなります。
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