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サイバーセキュリティの新常識 経営と現場を守る「体験型」最新防御自社を、そして社会、国家を守るために今できることは?

国や事業の存続すら揺るがすサイバー攻撃の危機。その前兆に、あなたの組織は気付けているか――。AIがサイバーセキュリティの脅威を増大させる今、「本当のレジリエンス」は何かを解き明かそう。

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 ランサムウェア攻撃などによって事業継続が妨げられ、重要インフラの正常な稼働にまで影響が及びかねない昨今、サイバーセキュリティはもはやIT部門が技術的対策を取れば済む問題ではない。経営課題、いや社会や国家に影響を与える安全保障上の課題となっている。日本政府もこうした情勢を認識し、「能動的サイバー防御」を軸とした新たなセキュリティ戦略を打ち出し、官民が連携して深刻な脅威に立ち向かう仕組みを整備し始めた。

 ただ、一連の動きを「自分事」として捉えられず、漠然と危機感は抱きつつも具体的にどのような体制を整備し、対策を推進すべきか悩んでいる、という経営者も多いだろう。

 こうした課題意識を背景に、SANS Instituteは今回、Cyber Vantageを初開催した。初開催ながら、3日間で約300人が参加した。この数字からも、サイバーセキュリティ人材の育成や組織の対応力強化が、現場だけでなく経営にとっても切実なテーマになっていることが見えてくる。Cyber Vantageの3日間を通じて浮き彫りになったのは、いま組織が確保すべき人材像が、4つの要件に整理できるということだ。

  • 判断ができる:断片的な情報しかない状況で、操業停止や公表のタイミングを決められる
  • 専門知識を持つ:IT/ICS/OT(産業制御システムと運用技術)の双方にまたがり、攻撃の挙動を技術的に読み解ける
  • 他組織と会話ができる:政府機関、業界団体、サプライチェーンの取引先と情報を交換できる共通言語を持つ
  • 社内伝達ができる:技術的事象を経営の言葉(事業影響、コスト、法的責任)に翻訳できる

 この4要件は代替が効かない。どれか一つが欠ければ、有事の対応はその一点で止まる。研修やトレーニングの選定は「知識を得られるか」ではなく「この4要件が身に付くかどうか」で判断すべきということだ。実務者が挙げる選定条件は、おおむね次の4点に集約される。

  • 体系立っているか:単発の知識ではなく、レベルと領域が地図として整理されているか
  • 実践的か:手を動かす演習環境があるか
  • 復習可能か:受講後に学びを組織へ持ち帰り、定着させられるか
  • 実績があるか:脅威の最前線に立つ講師と、育成の実績があるか

 Cyber Vantageは、この4条件をイベントという形で凝縮したものだった。

 Cyber Vantageは、脅威の観測・分析や政府の戦略を最前線で推進する第一人者による講演に加え、経営層も巻き込んだテーブルトップエクササイズ(TTX)、実際に手を動かして技術を磨くCTFという3日間のプログラムで構成される。ITシステムのみならず、重要インフラや企業の製造現場を支えるICS/OTにまたがって対策を進め、レジリエンスを高めていく一歩を踏み出すヒントが提供された。


ティム・コンウェイ講師によるTTX講義

AIのパワーがサイバー攻撃の脅威を深刻化

 横浜国立大学大学院の吉岡克成教授は、政府機関やNICT(情報通信研究機構)などと連携し、IoT機器やbotネット、DDoS攻撃、ランサムウェアなど多種多様なサイバー攻撃の動向を20年以上にわたって観測し、脅威インテリジェンスを蓄積してきた。攻撃のエコシステムや背景を踏まえ、効果的な対策に向けた研究・観測に取り組んでいる。

 吉岡教授は、AIの急速な進化に伴う局面の変化を肌で感じているという。「サイバー攻撃が質的に巧妙になり、量的に増えている。特に最近はAI技術も相まって一層増加している状況です」と警鐘を鳴らす。

 特に深刻なのは、攻撃のスピードと精度の高さだ。吉岡教授らの観測によると、脆弱(ぜいじゃく)性が判明してからそれを悪用した攻撃が観測されるまでのタイムラグは大幅に短縮された。2024年は平均約2カ月だったが、2025年には38日に短縮、2026年には「ゼロデイに近い状況」(脆弱性の発見とほぼ同時に攻撃を観測)にまで急速に短縮された。「こんな変化は、十数年観測していてこの1年だけです」と吉岡教授は語る。

 脆弱性情報やその悪用の手法がビジネスとして売買されている現状を踏まえ、「組織は、侵入される前提で対応能力を増強する、つまりレジリエンスを向上させる必要があります」と呼びかけた。さらに、AIをいかに使いこなせるかが勝敗を分けると強調し、現場で通用する実践的な人材育成が急務であると訴えた。

 こうした技術を使いこなすにはやはり人材が不可欠だ。SANS Instituteと横浜国立大学先端科学高等研究院は2026年7月1日に、サイバーセキュリティ研究および高度人材育成に関する包括連携協定を締結し、実践力を身に付け、現場で役立つ人材作りを進めていく。

国家安全保障上の課題としてのサイバー防御と「能動的サイバー防御」の推進

 国家サイバー統括室・内閣審議官(能動的サイバー防御運用総括担当)の飯島秀俊氏は、国家安全保障の観点から政府の取り組みと今後の方向性を詳述した。

 飯島審議官は、昨今の国際情勢を踏まえ、サイバーセキュリティが国家安全保障の根幹に関わる課題となっていることを強調した。特に懸念されるのは、特定の国家が直接・間接に関与するAPT(持続的標的型)攻撃だ。

 単なる機密情報の窃取にとどまらず、水道や電力といった重要インフラに潜伏し、有事の際に破壊・妨害工作を行って国家機能をまひさせる攻撃が現実の脅威となっている。

 こうした事態に対応するため、日本政府は「国家安全保障戦略」に基づき、「サイバー対処能力強化法」を策定し、「能動的サイバー防御」の導入を進めている。能動的サイバー防御とは、従来の「被害を受けた後の防御・復旧」を中心としたアプローチから一歩踏み込み、攻撃者のコストを増加(コストインポージング)させて攻撃の達成を困難にする取り組みだ。

 具体的には、以下の3本柱で構成される。

  1. 官民連携の強化:基幹インフラ事業者などとの迅速かつ深い情報共有
  2. 通信情報の利用・分析:攻撃元の早期探知と兆候把握
  3. アクセス・無害化措置:警察や自衛隊による攻撃元への直接的な対抗・無害化

 飯島審議官は、政府が要となりつつ、従来型の防御と能動的サイバー防御を「車の両輪」として駆動させる姿勢を示し、民間事業者との密接な連携が不可欠であると強く訴えた。

経営層と技術現場の隙間を埋める「Cyber Vantage TTX」

 百聞は一見にしかずと言われるように、実際のインシデントにおいて「何が起き、どう判断すべきか」を体験する価値は計り知れない。「Cyber Vantage TTX」は、SANSが蓄積してきた膨大なグローバルナレッジを注ぎ込み、経営層やCSIRT(Computer Security Incident Response Team)リーダーを対象に実施する、実践型のサイバーセキュリティインシデント対応のワークショップだ。


TTXの講師を務めたSANS ICS Curriculum Lead・Fellow ティム・コンウェイ氏

 多くの企業がBCP(事業継続計画)やインシデント対応マニュアルを策定しているが、実際の有事において計画通り機能するケースはまれであろう。事前の避難訓練と同様、シミュレーションを通じてプロセスの「穴」を発見し、改善を繰り返すことが不可欠となる。

 TTXでは、単なるITシステムの不具合にとどまらず、IT環境を経由して製造現場の生産ラインや電力制御システムなどのICS/OT環境へと被害が波及する複合的なシナリオが用意された。「異常トラフィックの検出」「SNSでの顧客からの苦情」「制御システムの突然の停止」といった不確実で刻々と変化する状況下で、参加者はビジネス影響とセキュリティリスクをてんびんにかけながら意思決定する必要に迫られた。

 「いつ誰に報告・公表すべきか」「操業停止の決断をどのタイミングで下すか」といったリアルタイムな意思決定を体験し、参加者は組織間のコミュニケーションや判断の難しさという「想定外の壁」を痛感した。特に、技術現場と経営層を結ぶ橋渡し役の重要性、そして経営層自身がセキュリティをひとごとではなく自らの意思決定課題として捉える「感度」を養う貴重な機会となった。


各テーブルで、熱い議論が交わされた

ICS/OT実環境に挑む「Cyber Vantage CTF」と実機演習の真価

 最終日に開催した「Cyber Vantage CTF」では、SANS Instituteのフラッグシップ競技「ICS NetWars」や、シンガポールサイバーセキュリティ庁の「Exercise Cyber Star 2025」の競技環境をベースとした、極めて実戦に近い環境が構築された。

 競技は、電力、海事、精密製造といった複数の業界が複雑なサプライチェーンでつながる高度なネットワーク環境下で行われた。参加者はITシステム領域だけでなく、メモリーダンプの解析、ネットワークトラフィックの分析、さらにはOT特有の通信プロトコルやICSデバイスの動作解析といったマニアックかつ実践的な問題に挑んだ。隠された「フラグ」を探し出す過程で、サイバー攻撃がどのように組織の深部や制御網へ侵入・拡大するのかを体感した。会場に集まったエンジニアたちは、6時間にわたり集中力を切らすことなく課題に取り組み、自社のレジリエンス向上に必要な技術要素を再確認した。


実機を使った解説

 このCyber Vantageならではのユニークさや現場における意義について、プリンシパルインストラクターのディーン・パーソンズ氏は次のように語っている。

 「日本におけるCyber Vantageの価値は、実践的な防御を教えるだけでなく、重要インフラを標的とする攻撃者に対して『実機を使ってどのように防御するか』を示す点にあると信じています。私たちが確保しなければならない最も重要なことは、標的となる重要インフラを守るための、適切なサイバー防御能力と適切なサイバーツールを備えた『人材』です。そして重要インフラとは、私たちの世界を動かし、作り出し、電力を供給するものです。今日ここで私たちが目にしたのは、政府、製造業、電力システム事業者を含む個人や組織が、日本の重要インフラを保護するための努力を続けることに専心している姿であり、これは必要不可欠なツールだと信じています」

生成AI時代だからこそ際立つ「人間」の知見と体験の価値

 近年は生成AIの能力が高まり、CTFの解法や標準的なインシデント対応の手順であれば、AIに質問することで相応の回答が得られる時代になった。そうした時代において、あえて人間が現場に集まり、手を動かして泥臭く体験することにはどのような意味があるのだろうか。


TTXの講師を務めたICS Defense Force CEO and Principal Consultant ディーン・パーソンズ氏

 パーソンズ氏は、AI時代におけるトレーニングの存在意義と、人間が果たすべき決定的な役割について次のように断言する。

 「SANS特化型トレーニングは、今の時代においてAIが決して達成できず、決して学ぶことのできない現実世界の経験を提供します。私たちの重要インフラを保護するために不可欠なスキルセットを獲得する唯一の方法は、これらの環境で実際に活動する人々を訓練し、AIが意識的には認識できない『気付き』(アウェアネス)や『文脈』(コンテキスト)を人間が持てるようにすることです。私たちの重要インフラに対する、資金力の豊富な国家レベルの攻撃者への『唯一の防御策』は、ITとOTの両方にわたって並外れたサイバーの才能とスキルを持つ『人間』であると、私は心から信じています」

 こうしたテーマをさらに掘り下げる機会として、SANS Instituteは2026年10月23日、「AI時代の脆弱性診断・トリアージ・修正において、人の専門知識が果たす役割」と題した講演を実施する。AIによるソースコードレビューやWebアプリケーション診断の進化を踏まえつつ、誤検知や深刻度の過大評価、悪用可能性の判断、影響分析、パッチ検証などにおいて、なぜ人の専門知識が欠かせないのかを具体例とともに解説する。

 AIを導入すること自体ではなく、AIをどう使いこなし、どこで人が判断するのか。その境界を考える上でも、参考になるセッションだ。

 備えあれば憂いなし――「Cyber Vantage」の3日間は、激変する最新の脅威動向と国の安全保障戦略を深く理解し、TTXを通じて経営層の意思決定プロセスを鍛え、そしてCTFを通じて技術者の実践力を極めるという包括的なアプローチを提示した。AIが加速させる脅威の時代にあって、最後にとりでとなるのは高度なスキルと文脈理解力を備えた「人」である。Cyber Vantageは、日本のサイバーレジリエンスを真の意味で強固にするための力強い道しるべを示して幕を閉じた。

SANS Instituteからのお知らせ

2026年10月23日「Security Days Fall 2026」(主催:ナノオプトメディア)にて、SANS Fellowのスティーブン・シムズが「AI時代の脆弱性診断・トリアージ・修正において、人の専門知識が果たす役割」を講演します。また21日から23日にかけてブースにて展示も行いますので、ぜひ遊びに来てください。


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提供:SANS Institute
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年10月30日

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