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富士通とNECのCFOが語る、2026年下期以降の「ITサービス需要動向」:Weekly Memo

サイバー攻撃への緊急対応、膨らむAIコスト、部材の高騰といった不安要素が重なる中、ITサービス需要はどうなるのか。富士通とNECの受注状況と決算会見での発言から今後の需要動向を探る。

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 膨らむAIコストやサイバー攻撃の脅威が続く中、これまで好調に推移してきた国内のITサービス需要の動向は今後、どうなるか。同分野の大手である富士通とNECが相次いで開いた2026年度(2027年3月期)第2四半期(2026年7〜9月)の決算会見から、受注状況および両社CFO(最高財務責任者)の発言に注目し、考察したい。

「DXのデマンドが冷え込むことはない」(富士通CFO)

 富士通が2026年10月29日に発表したITサービス(同社は「サービスソリューション」と呼ぶ)における第2四半期を含めた上期(2026年4〜9月)の国内受注状況は、全体で前年同期比109%となった。

 内訳は次の通りだ。

 エンタープライズ分野が前年同期比107%で、そのうち製造(自動車・組立・化学ほか)が同111%、流通(小売・商社・食品ほか)が同103%。パブリック分野が同110%で、そのうち金融(銀行・証券・保険ほか)が同95%、パブリック&ヘルスケアが同104%、ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティほかが同143%だった(表1)。

 全体では前年同期を上回る受注を確保した形だ。だが足元では、サイバー攻撃への緊急対応やAIコストの膨張、部材の高騰など、ITサービス需要に水を差しかねない要素も目立つ。この勢いは今後も続くのか。筆者は会見の質疑応答で、富士通のCFOにこれらの点を尋ねた。

表1 富士通の各分野における2026年度第2四半期および上期の国内受注状況(出典:富士通の決算資料)
表1 富士通の各分野における2026年度第2四半期および上期の国内受注状況(出典:富士通の決算資料)

 この受注状況について、富士通の磯部武司氏(代表取締役副社長 CFO)は発表会見で次のように説明した(写真1)。

富士通の磯部武司氏(代表取締役副社長 CFO)(筆者によるキャプチャー)
富士通の磯部武司氏(代表取締役副社長 CFO)(筆者によるキャプチャー)

 「全体としては、DX(デジタルトランスフォーメーション)およびモダナイゼーションのデマンドが引き続き幅広い業種で拡大傾向にある」

 「エンタープライズでは、第2四半期に大型商談の獲得があった。製造はどの分野も強いデマンドがあり、特にAI組み込み型で付加価値の高い案件が増加した。また、次世代システム基盤としてのソブリンクラウドの受注もあった」

 「パブリックでは、金融のマイナスは前年度第1四半期にあったメガバンク向け基幹システム商談獲得の反動によるものだ。パブリック&ヘルスケアは自治体システムの標準化や大学向けの教育DX、AIを組み込んだ医療DXなどのデマンドが高く、着実な商談獲得が進んだ。ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティほかは防衛関連を中心に大型案件を獲得したことにより大きく伸長した」

 今後のITサービス需要の見通しについては会見の質疑応答で、「昨今のサイバーセキュリティの脅威、膨らむAIコスト、内製化の加速、部材の不足や高騰、不安定な中東情勢など、今後のITサービス需要に対して不安要素がいろいろと出てきているが、どのように見ているか」と、具体的な不安要素を挙げながら質問してみた。すると、磯部氏はそれぞれの要素について、次のように答えた。

 「サイバーセキュリティについては至急の対策が必要なので、デマンドは相当高まっている。ただ、そのためにAI活用を含めたDXが後回しになるという動きにはならないと見ている」

 「AIコストの問題も表面化しているが、使用するAIの選択肢を広げ、多様なプライシングモデルを整備し、AIコストの使用状況をしっかりと可視化して管理していくことが重要になる。今後はそのためのデマンドも活発になってくるだろう」

 「内製化は今後進んでいくだろうが、現時点でそのためのケイパビリティを社内に保持しておられるお客さまはまだ限られており、むしろ当社のようなベンダーが伴走して内製化のケイパビリティをつけていくという動きになるだろう。お客さまの内製化が進めばどうなるか。おそらくAIが相当実装されることになるので、それを支える強力なコンピューティングパワーが必要になる。富士通はそうしたさまざまな形でお客さまを支えていく」

 「部材の不足や高騰については、例えばサーバにおいてもメモリをはじめとした部材が当てはまり、価格が2倍になっている製品もある。それでもとりわけAI活用は企業競争力に大きく影響するので、そのコンピューティングパワーとして少々高くても早く手に入れたいというデマンドが強いと感じている」

 「以上のように、デマンドに影響しそうな動きはさまざまあるものの、AI活用をはじめとしたDXはこれから本格的に進んでいく。もし、中東情勢の悪化で石油の値段が跳ね上がったり手に入らなくなったりすれば、一時的に様子見する状態もあるかもしれないが、中長期の流れにおいてこの分野のデマンドが冷え込むことはないと確信している」

「ITサービス需要は今後も好調に推移する」(NEC CFO)

 【NECが2026年10月28日に発表したITサービスにおける2026年度第2四半期の国内受注状況は、大型案件や特需、低収益事業終息の影響を除いた実質ベースで、全体で前年同期比4%増となった。】

 内訳は、パブリック(官公・自治体・通信)が前年同期比5%増、エンタープライズ(金融・製造・流通サービス)が同10%増、子会社のアビームコンサルティングが同15%増、その他が同5%減だった(表2)。

表2 NECの各分野における2026年度第2四半期の国内受注状況(出典:NECの決算資料)
表2 NECの各分野における2026年度第2四半期の国内受注状況(出典:NECの決算資料)

 この受注状況について、同社の雨宮邦和氏(取締役 代表執行役 副社長 兼 CFO)は発表会見で次のように説明した(写真2)。

NECの雨宮邦和氏(取締役 代表執行役 副社長 兼 CFO)(筆者によるキャプチャー)
NECの雨宮邦和氏(取締役 代表執行役 副社長 兼 CFO)(筆者によるキャプチャー)

 「全体としては、モダナイゼーション案件を中心に需要モメンタムは好調に推移した」

 「パブリックでは通信事業者向け、エンタープライズでは金融および流通サービスで受注が伸び、いずれも好調に推移した。アビームは二桁成長を維持しており、戦略コンサルティングおよびソリューション事業も好調に推移している」

サイバーセキュリティ対策の急増でDX需要は絞られるか

 今後のITサービス需要の見通しについては会見の質疑応答で、富士通での質問と同様に尋ねたところ、雨宮氏は次のように答えた。

 「お客さまは引き続き、モダナイゼーションやAI活用をはじめとしたDXに取り組んでおられ、AIを生かすためのデータ整備も合わせて、ITサービス需要は今後も好調に推移すると見ている。業種別で見ると、特に金融と流通サービスにおいて力強い需要を感じている」

 「サイバーセキュリティについては昨今の状況から対策が急務なので、需要としても非常に好調に推移している。お客さまにとっては当初の想定外の投資になっているが、その反動でDXの需要が絞られるということはないと考えている。なぜならば、AIを活用した経営やビジネスの効率化や高度化は待ったなしという状況だからだ。サイバーセキュリティにおいてもAIにおいてもお客さまのニーズにしっかりと応えていきたい」

 両CFOには、筆者の質問に丁寧に答えてもらった。両氏の見方では、AI活用をはじめとしたDXの需要は今後も拡大基調が続きそうだ。

 ただ、筆者が取材を通じて耳にしている中で気になる点を挙げておくと、昨今の緊急のサイバーセキュリティ対策で、大企業もさることながら、中堅・中小企業も相応の投資を行っているため、本来のIT投資に影響が出る企業が少なくないようだ。さらに、AI活用に向けてもセキュリティを含めたガバナンス強化の必要性が高まってきており、AIへの投資に二の足を踏む動きもあるようだ。大企業においては磯部氏や雨宮氏が言うように「待ったなし」だろうが、中堅・中小企業が対応しきれなくなるのが心配だ。

 企業におけるAI活用はこれから本格化していくだろうが、この局面は今後に向けての正念場になるのではないか。そう警鐘を鳴らしておきたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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