糖質カット炊飯器、糖質の量に「大差なし」　各社のコメントは？　消費者が注意すべき2つのこと

» 2023年03月20日 12時30分公開

　国民生活センターは3月15日、ごはん（炊飯米）の糖質を低減できるとうたった、いわゆる「糖質カット炊飯器」の比較テストの結果を公表しました。その結果、「通常炊飯」と比較して、ごはんに含まれる糖質の総量に大きな差は見られないことが分かり、波紋が広がっています。

図2　同量の米（1合）から炊いたごはんの重量および糖質（でん粉）の総量（出典：国民生活センター「糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際」）

　テスト対象製品は6製品で、生産終了となっている製品を含んでいます。テスト対象製品の各メーカーからコメントが発表されており、国民生活センターからは製品選びにおけるポイントも発表。消費者は今後、「糖質カット炊飯器」をどのように選べば良いのでしょうか。

Fav-Log編集部

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「糖質カット炊飯器」のテスト内容：「通常炊飯」と「糖質カット炊飯」の糖質の量を比較

　国民生活センターがテストを実施したのは、ネットショッピングや家電量販店で販売されている、以下6製品です。

糖質カット炊飯器テスト　対象銘柄一覧（出典：国民生活センター「糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際」）

1.AINX「糖質カット炊飯器（AX-RC3）」

2.アイリスオーヤマ「IH ジャー炊飯器 5.5 合（RC-IJH50-W）」

3.ウィナーズ「ヘルシーライスクッカー（RHR-1）」

4.ソウイジャパン「糖質カット炊飯器（SY-138）」

5.forty-four「LOCABO（JM-C20E-W）」

6.ベルソス「糖質カット炊飯器（VS-HI01BE）」

　アイリスオーヤマの「IH ジャー炊飯器 5.5 合（RC-IJH50-W）」については、2023年2月10日確認時点で生産終了となっています。

　今回テスト対象となった製品の「糖質カット炊飯」は、通常炊飯する場合よりも「水を多く加える」ことで実現しています。テスト対象製品の構造・方式は以下の4つがありました。

1.一般的な炊飯器と同様なもの

2.釜の上にトレーを設置し、糖質を含んだ煮汁や蒸気となった水分をためるもの

3.2種類の釜を重ねて、小さな穴のある上の釜から糖質を含んだ煮汁を下部に排出するもの

4.上記の2と3を併用したもの

　これらの製品で実際に白米を炊飯し、炊き上がったごはんの重量、水分、糖質の量を調べています。

炊飯条件（出典：国民生活センター「糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際」）

　すべてのテスト対象製品に複数の炊飯モードがありましたが、今回のテストではそのうち「通常炊飯」と「糖質カット炊飯」を比較しています。いずれも、「通常炊飯」より「糖質カット炊飯」のごはんの方が柔らかく感じられ、実際に水分は約1～2割多い炊き上がりでした。

　またすべてのテスト対象製品で、「通常炊飯」より「糖質カット炊飯」のごはんの方が、 100g当たりの糖質の割合は約1～3割低いという結果が出ています。しかし、このテスト対象製品のうち4銘柄については、広告などでうたっている糖質の低減率を満たしておらず、景品表示法上問題となるおそれがあると指摘しています。

ごはん100g当たりの糖質（でん粉）の量の比較（出典：国民生活センター「糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際」）

　最後に、同じ量の米（1合）から炊飯した場合のごはんの重量と、糖質の総量を算出しています。いずれのテスト対象製品においても、「糖質カット炊飯」のごはんの方が約1～3割重かったものの、糖質の総量には大きな差は見られませんでした。

同量の米（1合）から炊いたごはんの重量および糖質（でん粉）の総量（出典：国民生活センター「糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際」）

　ごはんの水分が増えた分、100g当たりの糖質の割合は確かに低くなりますが、糖質の総量で比較すると「通常炊飯」と「糖質カット炊飯」の違いはあまりないということでした。

各メーカーのコメント：表記の改善が多い

　これに対して、テスト対象製品の各メーカーはコメントを発表しています。すべてのコメントは3月16日に発表されたものになります。

1.AINX「糖質カット炊飯器（AX-RC3）」

　AINXは国民生センターのテスト結果について、「検査時のお米の品種及び炊飯合数に関して当社の実施したものとは異なるため、数値が異なるものである」としており、家庭用品表示法上の表示がないという指摘については「行政指導を受け改善済」としています。また製品としては問題なく、販売を継続するとのことです（出典：AINX）※PDF。

2.アイリスオーヤマ「IH ジャー炊飯器 5.5 合（RC-IJH50-W）」

　アイリスオーヤマは、「国民生活センターが行ったテストの結果、当社製品においては、広告などの表示の低減率を満たしている結果となっております」とコメント（出典：アイリスオーヤマ）。確かに「ごはん100g当りの糖質の量の比較」においては、うたわれていた糖質の低減率を満たしています。

3.ウィナーズ「ヘルシーライスクッカー（RHR-1）」

　ウィナーズは、国民生活センターのテスト結果を受け、「糖質の低減比較は炊飯後に同重量（100g）を比較した数値になります。炊飯後の全量を比較したものではありません。食べるごはんの量に注意してください。」などの注記を追記し、現行の表記を変更するとしています（出典：ウィナーズ）。

4.ソウイジャパン「糖質カット炊飯器（SY-138）」

　ソウイジャパンは、糖質カット率については「SGS香港で検証テスト」を行っているとし、表記については「複数回の炊飯テストを行ったうえでの最大カット率を明記」しているとしています。そして、国民生活センターでの検査結果と異なることについては、ソウイジャパンと国民生活センターの検査方法・条件が異なることが要因としています（出典：ソウイジャパン）。

5.forty-four「LOCABO（JM-C20E-W）」

　スタイリッシュなデザインが人気の「LOCABO」を販売するforty-fourは、「最大45％カット」の表示に誤りはなく、国民生活センターのテスト結果については「慎重に評価している最中」としています。しかし、「最大45％」という表示の近傍に注記を記載することなどの改善策を実施するようです。

　また国民生活センターの「糖質の総量に大きな差はみられません」との結果については、「一定量の糖質が米から水へ溶出することが確認されており、糖質の総量も変わるとの認識を有しております」とコメントしています（出典：forty-four）。