新旧問わず世界中のアニメや映画が視聴できる「Amazonプライム」。春アニメが続々と最終回を迎える中、先月同様7月の視聴ランキングもジャンプを原作とする作品が上位を席巻しています。
今回は「Amazonプライム7月の視聴ランキング(日本)」の上位3作品のアニメを紹介しつつ、ランキング結果の分析を行います。春アニメの振り返りとして、参考にしてみてください。
本記事は、Amazon.co.jpのプライムビデオ視聴ランキング(2024年7月4日18:00現在)に基づいてランキングを集計しています
フリーライターとして、家電、家具、アニメ等の記事を担当。大学時代から小説や脚本などの創作活動にはまり、脚本では『第33回シナリオS1グランプリ』にて奨励賞を受賞、小説では『自殺が存在しない国』(幻冬舎)を出版。なんでも書ける物書きの万事屋みたいなものを目指して活動中。最近はボクシングをやりはじめ、体重が8kg近く落ちて少し動きやすくなってきました。好きなのものは、アニメ、映画、小説、ボクシング、人間観察。好きな数字は「0」。Twitter:@kirimachannel
言わずと知れた日本を代表する漫画家の1人・冨樫義博氏によって、週刊少年ジャンプより連載が始まったファンタジー冒険活劇『HUNTER×HUNTER』。1998年の連載開始から20年以上経った今でも多くのファンに愛され、累計発行部数は8400万部越えのカルト的な人気を誇る大ヒット作品です。そのアニメ版が第3位にランクインしました。
X(旧Twitter)のフォロワー数318万人越えの冨樫氏の高い知名度と原作の圧倒的な面白さ、さらにAmazonプライムで6月から『HUNTER×HUNTER』シリーズが順次見放題配信され始めた影響もあって、ランキング上位へ食い込んでいるものと推察されます。
6月19日より1〜75話の配信がスタートし、7月17日には『劇場版 HUNTER××HUNTER 〜緋色の幻影〜』と『劇場版 HUNTER××HUNTER The LAST MISSION』の2本の劇場版、8月14日には76〜148話までが見放題配信される予定で、8月まで引き続き本シリーズがランキングの上位に入ってくることが予想されます。
ハンターである父に憧れてプロハンターを目指し旅へ出るゴンを中心に、同じくハンター志願者のレオリオやクラピカなど、ひと癖もふた癖もあるキャラが登場。少年少女たちによる、好奇心を刺激し感動を呼ぶ物語が展開されます。冨樫氏が仕掛ける知能指数の高い設定やストーリー展開を解釈し理解を深めるためにも、繰り返し見て欲しい1作です。
「少年ジャンプ+」で累計閲覧数2億超えの大ヒット野球漫画『忘却バッテリー』のアニメ版が2位にランクイン。等身高めのイケメン高校生が活躍する、やや女性ファン向けの作品となっており『ブルーロック』と近い文脈で楽しまれているようです。
オープニングテーマを務めるのは「Mrs. GREEN APPLE」、エンディングテーマを担当するのが「マカロニえんぴつ」と、いずれも若年層から絶大な支持を集めるバンドが起用されており、楽曲面も相まって作品を見るファン層が拡大しているものと推察されます。
漫画家・みかわ絵子氏の原作の圧倒的な面白さはもちろん、『呪術廻戦』や『進撃の巨人』など数々のヒット作を手掛け、そのハイクオリティな作画や演出により国内外から高い評価を受ける「MAPPA」が制作を担当したこともあり、上質なアニメに仕上がっているのも魅力を支えているポイントです。
本作は剛腕投手・清峰葉流火(きよみねはるか)と、知将捕手・要圭(かなめけい)の中学球界における「怪物バッテリー」が、なぜか野球名門校のスカウトを蹴って無名の都立高校へ進学するというエキセントリックな展開で始まる物語です。
主人公が野球のことを含め全てを忘れてしまった「記憶喪失」という奇抜な設定が本作の特徴の1つ。何もかも忘れてしまい知将としての見る影もない要圭と、そんな圭と一緒に野球がしたい葉流火を中心に描かれる、ギャグとシリアスのバランスが癖になる作品です。
視聴者のコメントを見ると、やや賛否両論で「ギャグがつらい」という意見も上がっていますが、6・7話の藤堂回や11話の千早回など、挫折した過去と向き合うシリアス展開に涙したという人も少なくありません。好きなことがトラウマになったり、何かを諦めそうになったりする時には、心に響く内容となっています。
1位に輝いたのは、今や誰もが知る国民的アニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』。先月から引き続き2カ月連続で首位をキープする格好となり、2019年のシリーズ放送開始から5周年を迎えた今も根強く支持を集めているようです。
鬼舞辻無惨人(きぶつじむざん)率いる鬼たちとの決戦を前に、鬼殺隊の戦力の底上げを図る「柱稽古編」。アニメーションとしての質が高いのはもちろん、『鬼滅の刃』と言えばLiSAの『紅蓮華』やAimerの『残響散歌』など音楽も魅力的。今回も「MY FIRST STORY × HYDE」という豪華な組み合わせで、力の入ったオープニングテーマとエンディングテーマが用意されており、音楽とアニメーションのコラボによって、その人気が後押しされているように思われます。
先日拡大放送された最終回も「映画のような出来」とSNS上では絶賛の嵐で、初期から制作を担当しているufotableの実力が存分に発揮されています。さらに最終回放送後には「劇場版『鬼滅の刃』無限城編」の制作決定の特報も流され、最終回を迎えたばかりにも関わらず、クライマックスに向けて再び盛り上がりを見せている状況です。
振り返ってみると『鬼滅の刃』シリーズは、今回の映画特報の発表に見られるように、常に次のシリーズの制作を控えており、継続的に新作が作られていたように思われます。
2019年の放送開始以降、2020年の「無限列車編」、2021〜2022年の「遊郭編」、2023年の「刀鍛冶の里編」、そして今年2024年の「柱稽古編」と毎年のようにコンスタントに新作を発表。テレビでの特別編集版の放送もあり、始まりからクライマックスまで、常に情報が更新され新作が発表され続けたことで、高いレベルで人気が維持されてきました。
「無限城編」は劇場版3部作として制作されることが発表されています。この点はシリーズ7部作全てを劇場版として公開した『空の境界』を手掛けたufotableのお家芸とも言えるもので、ハイクオリティな作品に仕上がることが期待されます。劇場版が公開されるまでに「柱稽古編」を見て、決戦前の助走としてのワクワク感をぜひ堪能してください。
7月は6月から引き続き「ジャンプ原作」のアニメの人気が目立つランキングとなりました。1位の『「鬼滅の刃」柱稽古編』から2位の『忘却バッテリー』、3位の『HUNTER×HUNTER』、4位の『怪獣8号』までトップ4全てがジャンプ作品というラインアップで、先月にも増してジャンプの勢いが強まっている状況です。
また興味深いのは、ランクインしている複数の作品において「人生のやり直し」という同じテーマが見られる点です。中学野球での挫折と復活を描く2位の『忘却バッテリー』、一度は諦めた「日本防衛隊」へ入る夢を再び追いかける4位の『怪獣8号』、前世での自堕落なニート生活を反省し転生後に本気で生きることを決意する5位の『無職転生』など、いずれも近しいテーマ性を持っています。
昨年から今年の春まで放送され話題になった『葬送のフリーレン』をはじめ「人生のやり直し」や「人生の振り返り」は、近年人気が高まりつつあるテーマと言えるかもしれません。
また「異世界転生およびファンタジー」のジャンルも依然として人気で、5位の『無職転生』や6位の『転生したらスライムだった件』、8位の『烏は主を選ばない』の3作品がランクイン。その他4期に当たる『「鬼滅の刃」柱稽古編』を筆頭に、シリーズものが多いのも特徴で2期の『無職転生』、3期の『転生したらスライムだった件』、148話まで配信の『HUNTER×HUNTER』など、分厚いファン層に支えられたシリーズ作品が比較的多くなっているようです。
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