ブックレビュー(2000年1月)

ITマスター教科書
Windows NTネットワーク最適化ガイド

著者:Microsoft Corporation
翻訳:松葉素子,木村尚子
監修:株式会社大塚商会
価格:6800円(税別)
体裁:B5変形版 532ページ
付録:CD-ROM×2枚
ISBN:4-89100-079-1
発行:日経BPソフトプレス
発行日:1999年9月27日


 Microsoft Pressの1冊。ネットワークトラフィックの分析やネットワークトラフィックを制御するレジストリチューニングなどを解説している。全体は,「第1部 ネットワークトラフィックの分析と最適化の方法」,「第2部 ネットワークインフラストラクチャ構築の実例」,「第3部 将来の展望――Windows 2000のネットワークトラフィック」という3部構成となっている。

 第1部では,Windows NTのネットワークトラフィックを最適化する方法について解説している。名前解決や認証,ブラウジング,ディレクトリの複製などで発生するトラフィックについて概説されているほか,そのフレーム数やバイト数なども示されているため,資料性が高い。

 第2部では,5つの事例を通じて,Windows NTのネットワークトラフィックを最適化する方法が具体的に例示されている。第1部とは異なり,事例に基づいて解説されているので,レジストリのチューニングポイントも示されており,管理者にとっては有益だろう。特に,NetLogonサービス,NetBIOS名の解決,NetBIOSブラウジング,プリンタ,SMBの最適化については,複数の事例を通じて具体的に解説されているため,連載記事「Windows 2000時代のDNS展開作法」の前半部分に興味を抱いた読者にはお勧めしたい。また,ネットワーク経由でOffice製品を実行した場合に発生するトラフィックのキャプチャ結果が掲載されているほか,SMS(Systems Management Server)を利用したアプリケーションの展開方法などにも言及されている点は興味深い。

 第3部では,Windows 2000で採用されているActive Directoryのデータベースサイズと,レプリケーショントラフィックの具体的な検証データが示されている。1月の特集記事である「検証値に基づくActive Directoryドメインの設計」の元データとなったTechNetリソースが日本語で解説されているので,特集記事に興味を抱いた読者はぜひ参照していただきたい。

 本書は,各章を別の著者が執筆しているためか,全体に雑然とした印象を抱くものの,資料性が高く,隅々まで通読することで思わぬ発見があるかもしれない。本文自体のリファレンス性は低いが,索引が豊富で逆引きできるように配慮されているため,リファレンス的に活用したい場合は,索引を頼りにするとよいだろう。

 なお,これはMicrosoft Press全般にいえることだが,図版の点数が少ないため,直感的に理解しづらい点は残念である。特に第2部では,さまざまな事例に基づいて最適化の方法を示しているだけに,どのようなネットワーク構成を採用している事例なのかを図示してほしかった。第1部でも,DHCPやWINS,ログオン認証など,基本的なシーケンスを図示してくれれば,初級管理者にもわかりやすい内容となり,技術者の底上げにつながっただろう。

 いずれにしても,ネットワークトラフィックの最適化は管理者にとって重要な課題である。本書は,そのための一助となる,希少な書籍であるといえるだろう。

実森仁志

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