ブックレビュー(1999年11月)

Windows 2000 Active Directoryドメイン構築ガイド

著者:吉田篤史・横山哲也・中村紳吾・大澤文孝
監修:マイクロソフト株式会社
価格:6000円(税別)
体裁:B5版 784ページ
ISBN:4-7973-1031-6
発行:ソフトバンク パブリッシング株式会社
発行日:1999年8月2日

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 本書は,1998年8月に刊行された書籍『Windows NT 5.0 Technology Active Directory』の改訂版にあたり,Windows 2000関連の書籍としてはレビュー時点で唯一無二の存在である。マイクロソフトが監修していることもあり,Active Directoryの評価や導入を検討している管理者にとっては,必携のガイドラインといえるだろう。

 その内容も,ディレクトリサービスの概要,Active Directoryの概要,Windows 2000のインストール,Active Directoryドメインの構築,セキュリティの設定,ADSIプログラミング,スキーマ拡張,IntelliMirrerの利用というように,Active Directoryの全体像を一通り捕らえるには十分なものとなっている。

 しかしながら,「本書だけ読めばActive Directoryを完全にマスターできる」というものではない。これは,Active Directoryの導入にあたって求められる知識が従来とは大きく変容し,かつ広範囲にわたっているためである。特に,TCP/IPやDNSについて明るくない管理者にとっては,本書だけを読んでも不明瞭な点が多いと思われる。また,ポリシーベースの管理手法について,具体例が乏しい点も気になる。

 出版社の採算を度外視して勝手を言えば,ADSIプログラミングやスキーマ拡張などの開発部分は思い切って別の書籍にまとめ,この本では書名のとおり「ドメイン構築」に論点を絞ってほしかった。そうすれば,Active Directoryドメインの構築そのものについて,もっと多くのページを割けたはずである。

 とはいえ,レビュー時点で本書に勝る体系的な文献がほかに存在しないことも事実である。米国ではようやくWindows 2000関連書籍が目に付き始めたが,本書に比べると設計面の示唆や操作方法の解説に乏しい。「NTドメインはボトムアップ的に構築しても何とかなったのに対して,Active Directoryドメインは導入前の全社的な設計が非常に重要視される」という事実が厳然として存在する以上,本書を読む価値は十分にあるだろう。

実森仁志

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