ブックレビュー(1999年11月)

XMLとJavaによるWebアプリケーション開発

著者:丸山宏・田村健人・浦本直彦
翻訳:同上
価格:4800円(税別)
体裁:B5変形版 432ページ
付録:CD-ROM×1枚
ISBN:4-89471-135-4
発行:株式会社ピアソン・エデュケーション
発行日:1999年10月2日


 1999年5月に米国で刊行された書籍『XML and Java:Developing Web Applications』の翻訳書。翻訳書といっても,3人の著者は日本アイ・ビー・エムの東京基礎研究所に勤務するれっきとした日本人であり,翻訳も同じ人物が担当しているので,誤訳のおそれはまったくない(はずである)。

 XMLについて解説した文献は数あれど,多くは「XMLとは何か」または「XMLで何が変わるか」といった概説書または啓蒙書であり,プログラマにとって実践的な文献といえるものは従来ほとんど存在しなかった。本書は,実装例をもとに「XMLがどのようにWebプログラミングを変革してゆくのか」を解説している点で,他に類を見ない内容となっている。

 全体は,Webアプリケーション・XML・Javaの概要,XML文書の構文解析,XML文書の生成,DOM(Document Object Model)構造の操作,文書管理とメタコンテンツ,データベースとの連携,メッセージングのセキュリティ,JavaBeansによるアプリケーション開発,などを解説した8章から構成されている。XMLによるアプリケーション開発を求められている読者にとっては,どれも必要不可欠な内容ばかりといってよい。

 ちなみに,Microsoftが推進するBizTalkは,一般的に利用されているDTDではなく,XML-Data Reduced(XDR)によってデータ構造を規定する(10月13日の記事参照)。そのため,本書の内容をそのままBizTalkフレームワークに転用することはできないだろうが,アプリケーションからXMLをどのように利用するか,XMLをどのような用途に利用するとメリットがあるのかを見極めるうえでは,非常に有用である。

 今後のインターネット対応アプリケーションは,異種プラットフォーム間でのシステム間連動やアプリケーション統合を前提として開発されることになるだろう。それゆえ,開発者は特定のプラットフォームにおける開発技術に精通していればよいというわけにはゆかなくなる。XMLがプラットフォームを越えたシステム間連動やアプリケーション統合の切り札となってゆくことが確実である以上,開発者はそれに備えた知識武装をしなければならない。本書は,そのために最適な一冊といえるだろう。

 残念ながら,本書ではXSL(eXtensible Stylesheet Language)やJSP(JavaScript Pages)など,比較的新しい技術については言及されていない。XMLの関連規格が日々更新されている不安定さを考えれば,内容の陳腐化を避ける目的で,あえてこれらの記述を避けたことは理解できる。とはいえ,原著はともかく日本語版の刊行時期を考えれば,JSPの記述だけでも盛り込んでいただきたかったところではある。続編の刊行に期待したい。

実森仁志

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