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Chapter 2:Windows NT 4.0のTCP/IPサービス 〜WINSとDHCP〜

2.2.1 WINSデータベース

WINSデータベースには,次のような情報が登録されている。

Table 2-1 WINSデータベースに登録される情報

レコード 内容
タイプ NetBIOS名のタイプを表す。UNIQUE,NORMAL GROUP,SPECIAL GROUP,MULTIHOMEDという4つのタイプが存在する。各タイプについては,後述する
NetBIOS名 このレコードに格納されたNetBIOS名。詳しくは後述する
IPアドレス このレコードに格納されたNetBIOS名と関連づけられたIPアドレス
所有者 どのWINSサーバーがレコードの所有者であるかを表す。レプリケーションしている場合は,ほかのWINSサーバーが所有者であるレコードも存在する
バージョンID バージョンIDは,NetBIOS名を登録するときにWINSサーバーが割り当てるIDである。レプリケーションされる場合には,そのレコードが更新されているかどうかを確認するために用いられる
有効期限 レコードの有効期限。WINSサーバーの設定で変更することができる
状態 レコードの状態を表す。ACTIVE,RELEASED,TOMBSTONEという3つの状態がある。各状態については後述する

 上記の表のうち,タイプ,NetBIOS名,状態という3つの項目について,詳しく説明する。

タイプ
 UNIQUEタイプは,1つのNetBIOS名に対して1つのIPアドレスが与えられるものを指す。NORMAL GROUPタイプは,NetBIOS名に対してIPアドレスが割り当てられないものであり,名前照会要求に対し,WINSサーバーはブロードキャストアドレスを返す。NetBIOS名の16バイト目が“0x1e”であるものは,このグループに含まれる。SPECIAL GROUPタイプは,最大25個までのIPアドレスを格納できるグループである。NetBIOS名の16バイト目が“0x1c”であるものは,このグループに含まれる。MULTIHOMEDタイプは,複数のネットワークインタフェースを備えたコンピュータのために用意されているタイプである。最大25個までのIPアドレスを格納できる。

NetBIOS名
 NetBIOS名の16バイト目が“0x1C”または“0x1d”あるいは“0x1e”であるものは,扱いが特殊である。WINSでは,この特殊なNetBIOS名を次のように処理する。

Table 2-2 16バイト目が“0x1C”“0x1d”“0x1e”であるNetBIOS名の処理

16バイト目の文字 WINSにおける扱い
0x1c 16バイト目が“0x1c”であるNetBIOS名は,ドメインコントローラを表す。WINSサーバーは,16バイト目が“0x1c”であるNetBIOS名の名前登録要求を受け取ると,SPECIAL GROUPタイプとして登録する。このタイプには複数のIPアドレスを登録することができるが,登録数は最大25個までに制限されている。つまり,PDCを1台とBDCを24台までしか登録できない。もし,すでに25個のIPアドレスが登録されているならば,名前登録要求を受け取った時点で,新たなIPアドレスを登録するため,古いものから順に登録されているIPアドレスを破棄する。WINSサーバーは,16バイト目が“0x1c”であるNetBIOS名の名前照会要求を受け取ると,登録されている複数のIPアドレスを回答する
0x1d 16バイト目が“0x1d”であるNetBIOS名は,セグメントマスタブラウザを表す。セグメントマスタブラウザは,各サブネットに存在する。したがって,同一のNetBIOS名を備えたコンピュータが各サブネットに存在することもあり得る。しかし,ブラウザのクライアントは,自分と同じサブネット上に存在するセグメントマスタブラウザを利用する必要がある。WINSは,16バイト目が“0x1d”であるNetBIOS名をうまく処理するために,このようなNetBIOS名の名前登録要求を受け取ると,常に肯定応答を返す。また,名前照会要求を受け取ると,常に否定応答を返す。したがって,クライアントはブロードキャストを利用してこの名前を解決する。これにより,クライアントは自分のサブネット上に存在するセグメントマスタブラウザを発見することができる
0x1e 16バイト目が“0x1e”であるNetBIOS名は,セグメントマスタブラウザを選出するために利用される。セグメントマスタブラウザの選出は,同一サブネット上のコンピュータ同士で行う必要がある。このため,名前照会要求を受け取ると,WINSは常にリミテッドブロードキャストアドレスとして“255.255.255.255”を返す

状態
 レコードの状態には3種類ある。ACTIVEとは,その時点でレコードが登録されており,かつ有効であることを表す。RELEASEDとは,このレコードのNetBIOS名が有効ではなく,解放されたものであることを表す。TOMBSTONEとは,解放されたレコードが有効期限に達し,廃棄される状態になっていることを表す。状態がTOMBSTONEとなったレコード(破棄されるレコード)は,廃棄タイムアウトの設定に従って削除される。破棄タイムアウトについては後述する

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