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信頼性の高いシステムアーキテクチャ
見出し デュアルプロセッサの意義

 Windows NT譲りの機能のうち,特に注目したい部分は,やはりデュアルプロセッサへの対応である。デュアルプロセッサの対応そのものはWindows NTからサポートされていたものなので,別段目新しい機能とはいえないが,Windows 2000で対応していることには大きな意味がある。これまで何度も述べたとおり,Windows 2000 ProfessionalはWindows 98に代わるOSとして使用できるものだからである。その点では,Windows 2000 Professionalを「マルチプロセッサに対応したWindows 98」と捉えることもできるだろう。

 最近では,個人ユーザーでも簡単にデュアルプロセッサのシステムを構築できるようになった。たとえば,Celeronを2個搭載したDualon(デュアロン)コンピュータはその一例である。もちろん,インテルはCeleronのデュアル駆動をまったくサポートしていないが,Socket 370→Slot 1の変換アダプタなどにちょっとした細工を施すことで,手軽にデュアル化できることは周知の事実となっている(デュアル駆動に対応した変換アダプタも販売されている)。また,最初からSocket 370を2個搭載したマザーボード(ABIT BP6)も登場しており,これらのパーツを利用すれば,5万円前後でマルチプロセッサシステムを構築できる。もちろん,正規の路線として,デュアル用のマザーボードと,低価格化が進むPentium IIIまたはPentium IIを2個購入したとしても,最新最速のPentium IIIを選択しない限り,10万円もあればお釣りがくるだろう。

 しかし,ここで問題となるのがOSの対応である。多くの個人ユーザーはWindows 98を使用しているのが普通であり,当然デュアルプロセッサのシステムでそのまま使用すれば,片方のCPUしか稼働しない状態となってしまう。一部のユーザーはWindows NTやその他のUNIX系OS(FreeBSD,Linux,Solarisなど)に乗り換えることで対応しているが,Windows 98の環境から離れられない多くのユーザーはここでギブアップするしかない。ところが,Windows 2000であれば,Windows 98の操作感に慣れ親しんだユーザーでも,円滑にデュアルプロセッサの環境へと移行できるのである(ただし,当然ながらマイクロソフトはDualonコンピュータによるWindows 2000の動作は保証していない)。

 とはいえ,「そもそも個人にマルチプロセッサの環境が必要なのか」という疑問を持つ向きもあるかもしれないが,筆者はずばり「意味がある」とお答えしたい。たしかに,一部のグラフィックスアプリケーションや開発系アプリケーションを除けば,マルチプロセッサに対応したアプリケーションはほとんど存在しない。このため,マルチプロセッサに対応していない多くアプリケーションは,Windows 2000上であっても片方のCPUでのみ処理されることになる。つまり,単体のアプリケーションを稼働させて,その速度が2倍になるということは,ほとんどないのである。この部分が,マルチプロセッサ環境の有効性について議論される争点の1つともいえる。

 ところが,2個のアプリケーションを同時に稼働させる場合は,それぞれのCPUでそれぞれのアプリケーションを処理することになり,デュアルプロセッサの意義は十分見出せるようになる。たとえば,MP3データをエンコードしながら,いつもと変わらない処理速度でWebサーフィンしたりワープロで文書を作成したりすることが可能になるのである。また,インクジェットプリンタの印刷ジョブのようにCPUの占有率が高いプロセスが生じた場合でも,片方のCPUの処理能力に余力があれば,OSの応答速度がそれほど低下しないという利点もある。デュアルプロセッサを採用していれば,高い負荷がかかっているときでもOSの応答速度はおおむね低下しないため,体感的には大きく高速化されたように感じられる。文章ではなかなかデュアルプロセッサの利点をお伝えしにくいのだが,実際にデュアルプロセッサ環境を体験すれば,すぐに理解していただけると思う。高性能なCPUを購入したり,オーバークロッキングによって単体のCPU性能を追求したりすることも1つの方向といえるが,Windows 2000とデュアルプロセッサの組み合わせによる高速化も検討してみてはいかがだろうか。

Fig.15 デュアルプロセッサのタスクマネージャ

fig15.gif タスクマネージャのパフォーマンスパネル。ここでは,CPU負荷やメモリ使用量などがリアルタイムにグラフ表示される。デュアルプロセッサ環境では,CPU負荷の表示が2つに分かれる。

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