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head1.gif 1.2 Windows 2000ファミリの構成

 これまでに述べたように,Windows 2000は,下はベーシックな個人から,上は大規模企業までサポートできる製品となっている。といっても,さすがにコンピュータのハードウェア構成や前提となるシステム規模が大きく異なる各環境を,単独のパッケージでまかなうことは難しい(また,マーケティング上も得策ではない)。

 そこでWindows 2000は,対象となる組織の規模や用途に応じて,4つのパッケージ製品で構成されている。利用者は,自分の利用目的やシステムの規模に合わせて,Windows 2000ファミリのなかから適切な製品を選択すればよい。

head2.gif 1.2.1 Windows 2000の製品ラインナップ
 Windows 2000の基本的な製品ラインナップは,次の4つである。

  • Windows 2000 Professional
  • Windows 2000 Server
  • Windows 2000 Advanced Server
  • Windows 2000 Datacenter Server

 既存OSであるWindows NTとの対比で見ると,Windows NT Workstation 4.0がWindows 2000 Professionalへ,Windows NT Server 4.0がWindows 2000 Serverへ,Windows 2000 Server 4.0, Enterprise EditionがWindows 2000 Advanced Serverへと,それぞれ変更されていることになる。また,大規模環境へ柔軟に対応するため,新たにDatacenter Serverというエンタープライズ製品が用意された。これによってWindows 2000は,スケーラビリティの点で大きく向上している。なお,Windows NT 4.0, Terminal Server Editionの機能は,Windows 2000 Server,Windows 2000 Advanced Server,Windows 2000 Datacenter Serverに搭載されているため,Terminal Server Editionに相当する製品はなくなった(ただし,Terminal Serverライセンスは必要となる。この点については,詳しくは後述する)。

 ここで,Windows 2000ファミリを構成する各製品について概説しておくことにしよう。

  Windows 2000 Professional
 あらゆる規模のビジネスに対応するエントリー製品であり,一般ユーザーのワークステーションから,ワークグループレベルのファイル共有,プリンタ共有などに最適な製品となっている。また,プラグアンドプレイや先進の電源管理機能,赤外線通信,オフライン同期,暗号化ファイルシステムなど,モバイル環境に最適な数々の機能をサポートしている。
 
  Windows 2000 Server
 小規模から中規模の組織における,ファイルサーバー,プリントサーバー,Webサーバー,アプリケーションサーバーなどに最適な製品である。4個までのマルチプロセッサに対応しており,サーバー向け製品のなかでは最も基本的な選択肢となる。
 Active Directoryと呼ばれるディレクトリサービスを新たに取り入れたことにより,Windowsのユーザーアカウント,クライアント,サーバー,アプリケーションなど,ネットワーク上に点在するさまざまなリソースを一元管理できるようになっている。管理されているリソースの情報はアプリケーションからも手軽に利用可能であり,必要に応じて管理者がスクリプトを作成して管理作業を自動化することもできる。Active Directoryは,従来のWindows NTにおけるSAM(Security Account Manager)データベースとは異なり,ハードウェアやソフトウェアとも協調動作してポリシーベースのシステム管理を実現するインフラとして位置づけられている。
 また,標準搭載されているターミナルサービスを利用すると,リモート環境から管理作業を実行したり,アプリケーションをサーバー側で実行してデータを処理および保存したりすることも可能である(Windows NT 4.0ではTerminal Server Editionに搭載されていた機能)。
 さらに,COM+(Component Object Model+)と呼ばれる新しい分散アプリケーション基盤を利用すれば,分散アプリケーションを手軽に構築・配置・管理することも可能となる。COM+は,ブラウザやVisual Basicフォームをプレゼンテーション層とする業務アプリケーションおよび電子商取引アプリケーションを開発する場合に,高い生産性を発揮する。
 
  Windows 2000 Advanced Server
 部門のデータベースサーバーやアプリケーションサーバー,中規模なインターネットサーバーなど,より高い性能と信頼性が要求される場面で最適な製品となっている。8個までのマルチプロセッサに対応しており,単一サーバーのスケーラビリティがさらに強化されている。CPUのサポート数自体はWindows NT Server 4.0, Enterprise Editionから変わっていないが,SMPコードの実装が改良され,スケーリングのリニアリティが向上しているという。 また,Enterprise Memory Architectureによって,8Gバイトまでのメインメモリが利用可能となった。
 Advanced Serverでは,高可用性やスケーラビリティを提供するクラスタリング技術がサポートされている点も大きな特徴といえる。クラスタリング技術によって複数のサーバーが単一のシステムとして運用でき,ミッションクリティカルなアプリケーションやサービスを障害なく稼働させられるようになる。また,Advanced Serverのスケーラビリティ機能と併用することで,増大するユーザーニーズに合わせてシームレスにシステム性能を拡張できる。クラスタリング技術はネットワークにも適用され,たとえばTCP/IP Network Load Balancingを利用すれば,増大するネットワークトラフィックを複数のサーバーで負荷分散させることが可能である。
 
  Windows 2000 Datacenter Server
 製品名がWindows 2000に変更されたときに追加された,大規模システム向けの最上位製品である。膨大なデータを集積・解析するデータウェアハウスのような用途に向いている。Advanced Serverに搭載されたクラスタリング機能や負荷分散機能に加えて,32個までのマルチプロセッサ,64Gバイトまでのメインメモリに対応し,より厳密なハードウェア仕様に則って稼働する。従来,この規模のサーバーにはUNIX系のOSが広く採用されてきたが,今後はWindows 2000もこの市場に食い込んでくることになる。

 また,以上で説明した4つのパッケージ製品とは別に,アプリケーション,周辺機器,システムソリューションの開発者を対象に,使用目的を開発・設計・評価・テストに限定したWindows 2000 Developerも販売される。Windows 2000 Developerは,ワールドワイドの製品ではなく,日本独自の戦略商品として位置づけられている。

  Windows 2000 Developer
 Windows 2000に対応したアプリケーション,周辺機器,システムソリューションの開発者を対象に,使用目的を開発・設計・評価・テストに限定した製品である。Windows 2000 Server,Windows 2000 Professinal,MSDNプロフェッショナルサブスクリプションが収録されることになる。ただし,ユーザー数は開発者一人のみに限られ,業務や運用目的では利用できない。本格的な開発環境を安価で揃えられる点は,大きな魅力となるだろう。
Table 1-1 Windows 2000ファミリーの製品仕様

製品名 Windows 2000 Professional Windows 2000 Server Windows 2000 Advanced Server Windows 2000 Datacenter Server
CPU Pentium/166MHz以上のCPU(または互換CPU) 不明
最大CPU数 2個 4個 8個 32個
メモリ容量 最低32Mバイト以上,推奨64Mバイト以上 最低64Mバイト以上,推奨128Mバイト以上 不明
最大メモリ容量 4Gバイト 8Gバイト 64Gバイト
ハードディスク容量 900Mバイト以上 搭載メモリの2倍に900Mバイトを加えた容量以上 不明
ディスプレイ VGA以上
その他必要なリムーバブルディスク CD-ROMドライブ(12倍速以上を推奨) ,FDD
その他周辺機器 キーボード,マウス,ネットワークアダプタ
IIS 5.0
Active Directory
Kerberos & PKI
ターミナルサービス
COM+サービス
フェイルオーバークラスタリング 2ノード 4ノード
ネットワーククラスタリング 32ノード
プロセスコントロールマネージャ
Winsock Direct Path
Gold HCL

Windows 2000には,規模や使用目的に合わせて4種類の製品が用意されることになった。また,日本独自の製品として,開発者向けのWindows 2000 Developerも提供される。

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