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  COLUMN    Active Directoryのバックアップ計画

 本稿ではあまり詳しく述べていないのだが,Active Directoryを実際に導入するまえには,あらかじめディレクトリをきちんと設計しておかなければならない。ディレクトリを計画的に設計しておかなければ,最終的にActive Directoryを導入しても,管理コストがあまり削減されないおそれもある。

 本稿の目的はディレクトリの設計ではなく,むしろ実際にディレクトリを展開する際のノウハウを解説することにあるので,設計について詳しくは触れない。ディレクトリの設計については,「真・ディレクトリサービス入門」や「NTドメインからActive Directoryドメインへの移行」を参照していただきたい。

 ところで,これらの記事を一読された読者はご承知のように,Active Directoryドメインではできるだけシングルドメイン構成を採用したほうが柔軟になり,管理コストも削減される可能性が高い。しかし,ドメインを集約すればするほど,ディレクトリの容量が増大する点には十分に注意してほしい。ただでさえ,Active Directoryにはユーザーやコンピュータに限らず,OUやグループポリシーなど,さまざまなオブジェクトが格納される。そのうえ,OUに対する権限は,すべて下位に存在するオブジェクトへの権限に展開されてActive Directory上に保存される。このような仕様上,Active Directoryのディレクトリ容量はWindows NTのSAMデータベースとは比較にならないほど増大する傾向にある。もちろん,Active Directoryのスケーラビリティは比較的高く,かなりのディレクトリ容量にも耐え得るとされている。しかし,そうはいっても検索速度が低下したり,バックアップが困難になったりすることは十分に考えられる。

 特に,ディレクトリ容量が増大すればするほど,バックアップに時間がかかるということは忘れないでもらいたい。バックアップは,オフピーク時にできるだけ短期間ですませることが望ましい。バックアップ計画を立案する場合,ときとしてデータ容量だけに目を向けてしまいがちであるが,それだけではなく,転送効率,信頼性,価格などにも注意を払いたい。実際,ディレクトリ容量によっては,DAT(Digital Audio Tape)や8mmなどではバックアップの時間がかかりすぎ,翌日の始業時間になってもバックアップが終了せず,性能問題を生じることもあり得る。このような場合には,DLT(Digital Lineer Tape)のように高速なバックアップ装置を選択する必要があるだろう。ディレクトリのバックアップ計画は,通常のデータベースシステムのバックアップ計画と同様に考えればよいので,参考にしてほしい。

 なお,Active Directoryのバックアップは,Windows 2000に標準添付されているバックアップツールで実行すればよい。このバックアップツールは,[スタート]メニューから[プログラム]−[アクセサリ]−[システムツール]−[バックアップ]を選択して起動させる。Windows 2000のバックアップツールは,テープだけではなくハードディスクにもバックアップを確保できるようになったので,状況によってはディスク上にバックアップを確保し,それをさらに高速なネットワーク経由で別のコンピュータにコピーして,そのコンピュータ上でテープなどにバックアップするとよい。このような方法を用いれば,ドメインコントローラに課せられるバックアップ負荷は大幅に軽減される。

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