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  COLUMN    注意したいActive Directoryの仕様と不具合

 Windows 2000の発売直前,各マスコミは「同一コンテナに存在するオブジェクト名の濁音・半濁音・拗音・促音は区別されない」というActive Directoryの不具合を報じた。本誌でもレポートさせていただいたので,ご記憶の読者も多いことだろう。しかし,サポート技術情報:J052306 を見るとわかるように,この不具合の対象は濁音・半濁音・拗音・促音にとどまらない。

 まず,ひらがなとカタカナの違い以外は同じ文字列である場合,Active Directoryは両者を同じオブジェクト名として認識する。したがって,「神崎 シノブ」も「神崎 しのぶ」も同じオブジェクト名として扱われる。

 次に,全角文字と半角文字は同一視される(これは不具合ではなくActive Directoryの仕様である)。したがって,「カンザキ シノブ(半角)」と「カンザキ シノブ(全角)」は同じオブジェクト名ということになる。前段落で述べたとおり,ひらがなとカタカナは同じ文字列として扱われるので,「かんざき しのぶ(全角)」も同じオブジェクト名である。

 濁音・半濁音・促音・拗音・長音の違いも識別されない。たとえば,「ナカジマ シノブ」と「ナカシマ シノブ」,「青木セーコ」と「青木セイコ」は,それぞれ同じオブジェクト名となる。既述のとおり,ひらがなとカタカナは同じ文字列として扱われるので,「山本けいこ」と「山本ケーコ」も同じオブジェクト名である。

 一般的に,組織単位やユーザーの名前にはアルファベットか漢字を使うことが多いと思われるが,組織によってはひらがなやカタカナを使いたいこともあるだろう。あるいは,ディレクトリをあまり正規化せず,フラットに近い構造を維持したい場合には,この問題によってオブジェクト名が重複するケースがあるかもしれない。管理者は,十分注意していただきたい。

 また,これは不具合ではなくActive Directoryの仕様であるが,「経理」という組織単位と「経理」というグループを同じコンテナに配置することはできない。したがって,「経理」という組織単位を作成し,それに対応するセキュリティグループを「経理」という名前で作成したければ,「経理」という組織単位が存在するコンテナとは別のコンテナ上に「経理」というグループを作成しなければならない。この問題は,Active Directoryのオブジェクトが識別名で管理されていることに由来する。Active Directoryのオブジェクトは「CN=識別名, OU=組織単位名, DC=サブドメイン名, ... , DC=トップレベルドメイン名」というオブジェクト名(絶対識別名)で表現されるので,たとえオブジェクトの種類が違っても,名前が重複してはならない(絶対識別名が同じオブジェクトは作成できない)。このため,たとえば「経理」という組織単位のなかに「経理1」というプリンタと「経理1」という共有フォルダと「経理1」というセキュリティグループを作成しようと思っても,不可能である(「経理1」という名前のオブジェクトは1つしか作成できない)。

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