データセンターとネットワークの最適解:間違いだらけのデータセンター選択(2)(2/2 ページ)
データセンターをうまく活用することによって、ネットワーク設計を最適化し、企業のITインフラを効率化することができる。これを実現する際に基本となる考え方を解説する。
データセンター利用でネットワークを最適化する
それでは、上記のように取得したデータをどのように利用すればネットワーク構築に役立ち、データセンターに最適なネットワーク構造を作れるかをお話ししましょう。
まずは図1をご覧ください。サーバが本社に集中しており、これらに対して本社以外のいくつかの事業所からネットワーク経由で接続しているケースを模式的に表わしてみました。図中の矢印はサーバへのアクセスを表わしており、青い矢印はアクセスが多くトラフィックが少ないケースを、赤い矢印はアクセスは少ないがトラフィックが多いケースを表わしています。
このネットワークでは、
- 本社の部署は勘定系、販売系へのアクセスが多い
- 事業所Cは業務系Bサーバへのトラフィックが多い
- 業務系Bサーバは、販売系サーバと裏で連携しているが、トラフィックは少ない
- 勘定系と販売系のサーバは連係動作している
- 業務系Aサーバは、全社からまんべんなくアクセスがある
ということが把握できます。
問題となりそうなポイントをいくつか挙げてみましょう。
- 勘定系と販売系の連携トラフィックは多いので、同一の場所に設置することが適切。また、両サーバは本社内からのアクセスが多いので、今まで通り、本社サーバファームで運用するのが適切
- 業務系Aサーバは、全社からまんべんなくアクセスがあるが、詳しく見ると、本社以外の事業所からのアクセスが多いことが分かる
- 業務系Bサーバは裏で連携しているトラフィックより、事業所Cからアクセスしているトラフィックが多く、その分の回線コストが切迫している
このようなことから、以下のようにネットワークを構築すると効率が良くなると思われます。
- 業務系Aサーバを、サーバホスティングでデータセンターに設置し、インターネット経由でVPN接続することで、サーバに対する各事業所からのアクセスレスポンスを向上させることができ、事業所A、Bから本社までの回線コストを減らすことができる
- 業務系Bサーバを事業所Cに移動させることで、本社と事業所Cの間の回線コストを減らすことができる
この結果を図2に示しました。
今回は、データセンターまでの接続については、インターネット経由でVPNを利用することにしましたが、イーサネット専用線などの廉価なサービスを利用することで回線コストを減らしながら外部からのアクセスをさせないというセキュリティを考慮した構成も可能です。
このように、アプリケーションごとのトラフィックとアクセス数を適切に把握し、そのアクセス体系を分類していくことで、データセンターに移設したほうが良いデータやサーバ、アプリケーションが分かってきます。
次回は、実際にデータセンターを利用するにあたり、どのようなデータセンターサービスがあるのかをご紹介していきたいと思います。
著者紹介
▼著者名 近藤 邦昭(こんどう くにあき)
1970年北海道生まれ。神奈川工科大学・情報工学科修了。1992年に某ソフトハウスに入社、主に通信系ソフトウエアの設計・開発に従事。
1995年ドリーム・トレイン・インターネットに入社し、バックボーンネットワークの設計を行う。
1997年株式会社インターネットイニシアティブに入社、BGP4の監視・運用ツールの作成、新規プロトコル開発を行う。
2002年インテック・ネットコアに入社。2006年独立、現在に至る。
日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)の会長も務める 。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.