データセンターにおける熱対策を考える間違いだらけのデータセンター選択(7)(1/3 ページ)

データセンター利用者にとって、ラック内に設置するサーバなどの機器が発生する熱の問題を避けて通ることはできない。今回はデータセンターレベルでの熱対策、そしてラックにおける熱対策について解説する。

» 2007年01月26日 12時00分 公開
[近藤 邦昭まほろば工房]

 第5回第6回と、これまで2回にわたって電源に関するお話をしてきました。第6回の冒頭では、電源と熱に直接関連があることについてお話ししました。

 電気を供給することで、機器は計算を行う、ファンを回すなどの仕事をしてくれます。また、仕事をすることで各機器は熱を発します。この熱の量は、供給している電力量と比例します。つまり、電源の利用実態とラック内にこもっている熱の量は一定の法則のうえに成り立っており、熱の問題を無視してデータセンターは利用できないといっても過言ではありません。

 そこで今回は、熱量の考え方とデータセンターが行っている熱対策、そして何より重要な各ラックでの熱対策の方法について解説します。

熱というものに対する考え方

 まず、データセンターにおける熱源を考えてみましょう。データセンターの熱源となるものの代表は、サーバやルータのようなIT機器です。しかし、データセンター全体としてみると、実はさらに多くの熱源を考慮する必要があります。ざっと挙げると、まずIT機器、そのほかUPS(無停電電源装置や蓄電池も含む)、配電システム、空調ユニット、照明設備といった電気を使うすべての機器、また作業する人が発生する熱があります。ビルに照射する太陽光などによってビルが帯びる熱も、場合によっては考慮する必要があります。

 データセンターを設計するうえではこれらすべての要素に気を配り、さらに熱をどう処理するかを考えてラックの配置などを設計しています。

 ただし、データセンターの利用者にとっては、IT機器から発生する熱以外はデータセンターの管理となりますから、あまり関係がありません。そこで、IT機器が発生する熱に絞って話を進めます。

 IT機器が発生する熱を考慮するに当たって、前回の電気の容量と同じように単位を明確にする必要があります。熱の単位は国や文化によって違いがあります。代表的なものとして、W(ワット)、BTU(British Thermal Unit)、カロリー、トンなどがありますが、近年はWが標準的な熱量の単位として使われます。

 これらの熱量の関係を表1に示します。ここではWを使って解説します。

元になる単位 係数 変換後の単位
1時間当たりのカロリー 0.86 ワット(W)
1時間当たりのBTU 0.293 ワット(W)
ワット(W) 3.41 1時間当たりのBTU
トン 3520 ワット(W)
ワット(W) 0.000283 トン
注1:BTUはBritish Thermal Unitの略
注2:トンは氷の冷却能力を示すもので、1870〜1930年代の名残り
注3:標準的単位として、近年はワットを使う動きが盛んになっている
表1 熱量の単位


 さて、IT機器が発生する熱はどのように計算されるのでしょうか。

 熱はエネルギーを運動などに変換することで発生しますが、IT機器の場合はファンやCPUを駆動する「運動」に変換することによって熱を発生します。

 運動量は、使用している電力量に比例します。つまり、IT機器が使った電気がそのまま熱に変換されるわけです。このためIT機器が発生する熱量は使用している電力量から計算することができ、その単位は電力量の単位である「W」と同じになります。実際に10Aの機器で力率60%として計算すると

 100V x 10A x 0.6 = 600W

ということになります。

 これをラック全体で考慮すれば、ラックで発生する熱量が計算できることになります。ラックで発生する熱量をラック当たりの冷却能力と比較して、冷却能力より小さい熱量であれば、ラック内の温度は適切に保て、大きければラック内の温度はどんどん高くなるということになります。

 ただし、ラック当たりの冷却能力と比較して十分小さい熱量で使用していても、ラックの利用の仕方次第で十分な冷却効率を得られない場合があります。これについては、後述の「各ラックでの熱対策」で触れることにします。

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