既存システムという制約とアーキテクチャ――どうつなぎ、うまく再利用するか:戦う現場に贈る分散システム構築−開発現場編(10)(3/3 ページ)
複数システムを統合するプロジェクトを任された若手技術者の豆成くん。机上の空論よりも検証が重要であることを認識した豆成くんだったが、その目の前には既存システムという伏魔殿がそびえていた……。
再利用の構成を調べ抜け
既存システムの技術や実装はそれが構築された時代によって千差万別である。ある時代を特定しても使われている言語やプラットフォーム(OSなど)は数パターンずつある。しかも技術トレンドは数年ごとに移り変わっている。現在も稼働しているシステムはこのうち時代の淘汰に残ってきたもののみだが、それでも多くのバリエーションがある。これに加えてその上で構築されたアプリケーションは(ユーザー企業サイドで開発標準などを整備していない限り)すべてバラバラであるため、結局のところ既存システムをどのようにして再利用できるのかは、残念ながらそのシステム次第である。だが、それら既存システムに応じた対処方法は何かしらあるものだ。豆成くんの場合は、蔵田先輩が偶然にも当時の資料を持っていたために解決の糸口が見つかった。
一般に過去の特定技術やアーキテクチャを独学で調査することには限界があり、どんなスーパープログラマであっても1人で解決することは不可能な領域と考えてよいだろう。古いシステムに関する情報はインターネット上にも乏しく、検索エンジンをたどっても見つからないことが多い。古書で探すとしても種類によっては困難だし、同時代の前提知識なしに読み解くのも難度が高い。素直に自分の足や多くの協力を得ながら「オフライン型」で教えを請うなどして、解決していくことが近道となるだろう。そのためのヒューマンスキルも、ITアーキテクトに求められる素養の1つといえる。
次回は今回の技術的な構築作業と並行して、豆成くんに襲った少しウェットな話に触れよう。トップダウン型の大規模なシステム再開発に必ずつきまとう課題である。この試練に豆成くんは耐えられるのか!?
筆者プロフィール
岩崎 浩文(いわさき ひろふみ)
楽天株式会社 福岡テックセンター。ITコンサルティング会社での商用フレームワーク設計・構築後、SOA型システム設計支援の主任担当として多数の企業システム設計・構築に携わる。3月より故郷・九州の福岡で勤務。
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