業務分析の結果を既存システムと関係付け、SOA型アーキテクチャを実現するためのキモは、概念データモデルにあった。
SI会社からあるユーザー企業に転職した豆成くんは、入社早々点在する複数のシステムを統合する大役を押しつけられてしまった。業務分析後の方策を後回しに進めてきたツケで苦しめられ、先輩の蔵田に泣きついたのだが……。
独立した単体システムのみの開発経験で、業務知識もシステム統合技術も持たない豆成くんは、無事プロジェクトを成功させることができるのだろうか?
豆成くんの狼狽(ろうばい)ぶりを心配した先輩の蔵田は部長に直訴し、二転三転の末、正式に豆成くんを支援するためにプロジェクトに参加することになった。蔵田はまず、これまでの成果物を手に大まかなスケジュール表を見ながら、今後の方策について豆成くんと協議することにした。
「これまでの成果物、よく書けてるじゃないか。これを基に今後どうするか、そこで詰まってる訳なんだな」
「はい。これをどう実装に結び付けるか、それと既存のシステムとどうやって折り合いを付けるか、ここから先の正しいやり方が思い浮かばずに……」
「ふむ――」。蔵田は資料を見ながらしばらく考えて、答えた。「正直いって、俺はオープン系の技術がまったく分からない過去の技術者なんだが、データベースだけは毎日運用管理してるからな、そこなら分かる。その視点でいえば――」
蔵田は業務分析された結果の1つである、概念モデル図を取り出した。
概念モデル図の例
「――これは要するに、データベースに格納するデータの元ネタに相当するんだろ? ならばこれを基にシステム全体のデータ構造を設計していけばいいんじゃないか?」
「いや、それが……」。豆成くんは困った顔で答えた。「既存システムとどうやって結び付けるかが解決できないんですが……」
「だから、さぁ」。蔵田は根気強く続けた。「既存システムっていっても、その中にそれぞれデータ構造があるわけだろ? つまりデータベースを持ってるはず、って話だよ。それが既存システムの分だけあると考えてみてくれ。それと照らし合わせればいいんじゃないか?」
豆成くんは既存システムの代わりに、データベースのE-R図を数枚思い浮かべた。それと概念モデルを重ね合わせて……。
「ああっ! そうか……既存システムのデータ構造が部分だとすると、この概念モデル図を統合された全体と考える訳ですね」
「そう。まるで全体が1つの『システム』、つまり全体で『分散システム』として考えるんだよ。まあ、これも俺の先輩からの受け売りなんだがね。昔、システム間連携をやらされたときに、そんな設計をやった記憶があるんだ」
豆成くんの顔に精気が戻ってきた。「それを基に、将来像に結び付けていけば、各システムとどうつなぐか、ひいてはそれがサービスの識別につながる、という話ですね……それならば理解できます。試しに何パターンかやってみます!!」
「ふぅ――」。蔵田は少し安心してコーヒーに手を伸ばした。「昔取った杵柄(きねづか)が役に立つこともあるんだなぁ」
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