画面内を泳動するインクが、紙をリアルに表現〜読書端末「リブリエ」:レビュー(2/2 ページ)
以前から話題になっていたソニーの読書端末「リブリエ EBR-1000EP」が、いよいよ今月24日に発売される。リブリエは、E INK(マイクロカプセル型電気泳動)方式電子ペーパーを採用し、実際に印刷された文字のような表示を実現している。今回、このリブリエを試用することができたので、レポートしてみたい。
メインメニューでは、タイトル順に書籍が「あ〜お」「か〜こ」などに分類されて並び、ジョグダイアルで上下にカーソルを動かして選択するか、タイトルの横に振られた数字をキーで入力すればよい。書籍リストが複数ページに及ぶ場合は、ページめくりキーで次のページを呼び出せる。書籍の並べ替えは、「タイトルごと」のほか、「著者名ごと」「最後に読んだ日ごと」「購入日ごと」、さらに「ユーザー分類ごと」も可能だ。
メインメニューでは、指定した分類でタイトルが表示されるが、「最後に読んだ本」が先頭になっているのは、当然といえば当然だが、やはり便利だ。タイトルの左には表紙サムネイル、右にはショートカット操作用の数字がつく
読むタイトルを選択すると、書名の下に「続きを読む」「最初から読む」「目次リストを読む」「しおりメモ一覧を表示」「書籍情報を表示」というメニューが並ぶ画面が表示。「最初から読む」を選べば、表紙、目次、本文と順にめくっていける。本文の文字はかなり精細で、ルビもきちんと認識できる。まさに文庫本と見紛うばかりの表示だ。文字が小さすぎると思うなら、文字サイズボタンを押して、拡大すればいい。デフォルトでは100%だが、125/150/175/200%も選べる。
ページをめくる際には画面が暗転し、しかも、その切替時間に1秒ほどかかる。周りに見せてみたところ、画面の美しさには皆驚くが、同時にこの暗転が気になるという人が多かった。まるで紙の薄い本で下のページの文字が透けて見えてしまうように、この製品のディスプレイでは前の画面がぼんやり残ってしまうことがあるのだが、この解消のための暗転なのだろうか。
ただ、これは設定で解決可能だ。多少表示が粗くなるが、機能設定メニューの「画面設定/消音」で、「書籍、辞書の表示」を「4値(きれい)」ではなく、「2値(速い)」に切り替えればよい。ページめくりがクロスフェード状のスムーズな書き換えとなる。ただし、表示が粗くなるので、100%表示ではつらい。「2値(速い)」を利用する場合は、125%以上に拡大表示すべきだろう。
辞書機能を試す
冒頭で述べたとおり、リブリエでは辞書機能も売りとなっているが、これには2種類の手順がある。まず、「辞書」キーを押して、各種辞書を呼び出し、文字入力(ローマ字/かな)で引く方法。1文字入れるたびに、入力ずみの文字から始まる語句の全候補を表示し、絞り込んでいける。
もう1つは書籍の文中の語句を指定する方法。こちらは書籍を読んでいるときに、メニューから「辞書を引く」を実行する。そうすれば、まず、ジョグダイアルを操作することで段落単位での指定を行い、目的の段落を選択したら、その中でカーソルを動かし、範囲の始点・終点を指定する。すでにシャープ「ザウルス」の「ブンコビューアー」の「ペンで語句なぞり→辞書引き」で実証されているとおり、電子書籍で文中語句を調べるのには後者が適しているのは明らかだ。
ただ、リブリエでは全体にボタンやジョグダイアルの操作に対する反応が若干鈍く、しかも、操作のバッファがたまってしまいがちなので、特にこういう細かな指定はなかなか困難だ。こうなってくると、タッチパネルがほしいところだが、コストが跳ね上がるばかりか、画面の高い視認性を損ないかねないので、必ずしも得策ともいえないのだろう。
全体的に見ると、リブリエの魅力はやはり、そのずば抜けて美しい画面にある。また、本体の軽量さ・コンパクトさも読書端末として理想的なレベルを確保している。おそらく設計時に読書端末としてふさわしいサイズ・重量を十分に検討し、そのまま製品化までもっていったのだろう。“死角なし”とまではいわないが、十分に満足できる内容だ。
ここで、どうしても比較したくなるのがΣBookである。もはや、ΣBookの負けは明らかなのだろうか。筆者はそうは思わない。たしかに、あの青い画面は視認性では大きく劣るものの、768×1024ピクセルの高解像度パネルを2枚使用した見開き画面というコンセプトは評価に値するし、単機能ゆえの最小限のボタンによる明快な操作はある種の潔さを感じる。個人的には、テキストベースのコンテンツを読むならリブリエ、マンガを読むならΣBookと思うのだが……。
ただし、現行製品のままでよいというわけではない。双方とも、切磋琢磨して互いに良い点を取り込んで、可能なかぎり短いスパンでリリースを重ねてほしい。それは大変なことだろうが、一般への普及に向け、読書端末はいまこそ大事な時期といえるのだから。
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