輸入CD規制問題、衆院での審議が始まる――かみ合わない質疑
輸入CDを規制する著作権法改正について、衆議院での審議が始まった。5月28日の文部科学委員会では、議員側から問題を指摘する質問が多数行われた一方、文部科学大臣および文化庁の答弁は従来の主張を繰り返すのみで、かみ合わない質疑応答に終始した。
輸入CDを規制する著作権法改正について、衆議院での審議がいよいよ始まった。文部科学大臣も迎え、5月28日に文部科学委員会で行われた審議では、委員側から問題点を指摘する声が多数あがった。
答弁では6名の質疑者によって、法案の趣旨確認から始まり、審議課程への疑問や文部科学省らが法案の妥当性を示すために提示した数値などへの質問が相次いだ。その大方は、すでに文部科学省などから回答されていることについての確認だったが、法案提出の根拠とされている数値の妥当性を問う声もあがるなど、新たな問題点も指摘された。
「副作用は認識している」と大臣も答弁
一番懸念される「輸入CDの停止が起こるのではないか」という問題について、文部科学大臣の河村建夫氏は「影響がないと明確に説明しなくてはならない」「消費者の利益を不当に害すると分かった場合には必要な措置を講ずる」と、これまで文化庁などが述べてきたのと同趣旨の答弁を繰り返した。
「副作用に対する懸念が広がっているが」という質問についても、「立案以前から指摘を受けており、消費者利益には十分に検討している」と繰り返すのみで、「副作用があることを認識しているのか」という質問に対しても、「指摘の点はふまえている」と述べるに留まった。
法案では「かかる不利益が生じた場合」に輸入制限を行うことができるとしているが、その判断基準についても、文化庁および大臣から具体的な数値の説明はなく、立法趣旨に添った判断を文化庁と税関が連携して進めていく、という枠組みの説明がされただけだった。
「客観的な根拠がないのでは」――“数値”に対する質問が相次ぐ
「65カ国で輸入権は既に設定されている」「68万枚の還流CDが流通しており、2012年には1265万枚に増加する」という文化庁側の主張についても、 民主党の肥田美代子代議士や松本大輔代議士によって、根拠の希薄さが指摘された。
特に、68万枚という現在流通している還流CDの枚数については、文化庁側も自分たちで精査したものではないことを認めた。とはいえ、河村大臣は「調査自体をやり直すことは考えていない」と答弁している。
根拠として示されている数値についてはこのほかにも、「アジア地域での邦楽CDライセンス量が減少傾向であるのに、なぜ今後は増えるという予測がされているのか」「海賊版が正規版のシェアを奪っているという根拠の数字もない」と質問が続けられた。加えて、「根拠としている数字はすべて法案成立を望む側(レコ協)から提出されたもので、それを鵜呑みにしているのではないか」という厳しい指摘もあった
これらの指摘に対し、文化庁および河村大臣は、「数値自体は妥当なものであり、(それを根拠としたのは)総合的に判断した結果である」と述べたが、委員側からは逆に「一切の客観的な根拠がないのではないか」という厳しい意見も飛び出した。
著作権分科会の報告書では「慎重に議論すべき」と結論づけられていたにも関わらず、なぜ立案に踏み切ったのかという質問もあったが、「何らかの措置を求める声が多いと判断し、法案提出を行った」と河村大臣は答弁。「書いてはいないがそう判断した、というのはおかしいのではないか」(民主党 川内博史代議士)と追求する場面もあった。
「今日1日の審議で疑念は全く払拭されていない」(川内代議士)というとおり、5時間以上に及んだ審議中、質問者側を納得させるに足る答弁は極めて少なかったといえそうだ。次回の審議は6月1日に行われる。
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