「モバイル放送」を追いかけた2500キロ――Sバンドを求めて西へ:4日間同行レポート(前編)(1/4 ページ)
「モバイル放送」をじっくりと体験するチャンスは記者といえどもなかなかない。と思っていたら、「もうお腹いっぱい」と涙目になるほど堪能できるチャンスがめぐってきた。東京〜福岡を4日間かけてクルマで往復し、その間は搭載したチューナーでモバイル放送を“見っぱなし”という企画である。これを逃したら記者魂が廃ろうというもの。早速同行することにした。
モバイル放送については何度も記事になっているが、念のためおさらいをしておこう(詳しくは記事1や記事2を参照のこと)。
出かける前におさらいを
基本的なシステムは、東経144度、高度3万6000キロにある静止衛星(MBSAT)から放送される電波(Sバンド:2.6GHz)を、携帯型の端末や車載型の端末で受信し、再生するというもの。放送されるコンテンツは、動画と音声(音楽)がある。ビルの陰など衛星の電波が入りにくい場所では、ギャップフィラー(Gap-Filler)という再送信装置を配置して安定した受信を行えるようにする仕組みも用意されている。
モバイル放送という名前の通り、おもに屋外での視聴を目的としたシステムである。もちろん家の中で受信することも可能だが、動画の場合、画面サイズがいわゆるQVGAサイズ(320×200ドット)なので、既存のTV放送に対抗するのはちょっと難しい。
モバイル放送のメリットは、移動しながら受信できる、あるいは全国で同一のコンテンツを受信できる(地域性がない)という点なので、その利用は携帯端末や車載端末が主流となるはずだ。
日本からは、MBSATは南から東南方向で、地上からの角度(仰角)は40〜50度の範囲で見える。つまり、この方向に視界が開けていれば受信可能と言うことである。受信に際しては、CSやBS放送と違ってさほど厳密にアンテナを合わせる必要はないが、ギャップフィラーがない場所では衛星の電波が遮られると途切れてしまうため、衛星の位置を把握することは重要になる。
サービスの開始はもう少し先(正式な日程はまだアナウンスされていない)のようだが、実験用のコンテンツが6月1日よりMBSATから放送されている。そこで、実際に報道関係の人にも体験してもらったらどうか?というモバイル放送の溝口哲也社長の発案によって、今回の企画が実行されることになったという。
数寄屋橋で会いましょう
さて、今回のツアーの日程は以下のようなものだ。
取材というよりまるで某局のバラエティ番組「あいのり」みたいだが、同行するのは男性ばかりだから愛が芽生える余地はほとんどない。この4日間、朝から晩までひたすらモバイル放送を見続けるという強行軍である。ほとんど一日座りっぱなしなので「エコノミー症候群」……などという単語も頭をよぎるが、決まってしまったものは仕方がない。深く考えるのは止めることにした。
当日は、モバイル放送の本社がある数寄屋橋交差点近くのビルに集合。他メディアの記者の方も一緒に2台のクルマに分乗して行くとのこと。簡単な説明を受けた後、早速クルマに乗り込んだ。
停車しているクルマの中ではすでに音楽のビデオクリップ番組が受信中であった。クルマが止めてあるのはビルのすぐ脇で、建物の向こう側が南となるため衛星からの電波は受信できないはずだが、この近辺ではすでにギャップフィラーが効いているようである。
だが、これから訪ねる大阪や福岡などの都市では、まだギャップフィラーが稼働していないらしいので、ビルの林立する地域でギャップフィラーがない状態だと受信はどうなるのか? 興味は尽きない。
午後2時20分に数寄屋橋を出発。数寄屋橋交差点を曲がり、日比谷トンネルをくぐる。トンネルの影響はどんなものかと思ったが、半分以上通過しても放送されている。ギャップフィラーが効いているためかと思われたが、トンネルの半ばを過ぎたところで途切れた。
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