ソニーら4社、「Cell」プロセッサ概要を公表
来年のISSCCでの詳細発表を前に、Cellプロセッサの概要が公表された。Powerと複数の独立FPUによるマルチコア、複数OSの同時起動などが特徴だ。
米IBMとソニー、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)、東芝は11月29日、共同開発中の新プロセッサ「Cell」の概要を発表した。64ビットのPowerプロセッサベースのマルチコアで、複数OSの同時実行などが可能だ。試作は来年上半期に開始、“PlayStation 3”のほかソニーと東芝が2006年にデジタルTVに搭載する計画。
共同開発は2001年に開始し、米テキサス州オースチンに合同で設置した施設で進めている。詳細を来年2月開催の国際固体素子回路会議(ISSCC)で発表(論文4本)するのに先立ち、概要を公表した。
同プロセッサは64ビットのPowerプロセッサコアと、複数の独立した浮動小数点演算コアを持つマルチコア/マルチスレッドアーキテクチャを採用した。膨大なメディア演算処理をリアルタイムに行え、デジタル家電やゲーム機に加え、映画制作用ワークステーションや科学技術用シミュレーションなどへの応用も可能としている。
複数のOSの同時実行に対応。既存のPC用OSと、ゲーム機・デジタル家電用リアルタイムOSの同時実行が可能だ。IBMが開発するLinuxベースの汎用OSと、ソニーらが開発中の新リアルタイムOSが対応すると見られる。
メインメモリ・I/O転送バンド幅は大幅に拡張。メインメモリはRambusのXDR DRAMを採用し、データ転送幅は最大12.8Gバイト/秒に達する見込みだ(関連記事参照)。ハードウェアレベルのセキュリティシステムを内蔵するほか、フレキシブルなI/Oインタフェース、リアルタイム処理用途向けのリアルタイムリソース管理システムを搭載する。
製造は90ナノメートルプロセスのSOI(Silicon-On Insulator)。プロセスと各部の設計を最適化するなどして消費電力を低減したという。
久夛良木健・ソニー副社長兼COOは「HDTVの複数チャンネル同時録画などでは、膨大なメディア演算を高速処理する能力が要求される上、ブロードバンドネットワーク上で流通する大量のコンテンツにアクセスするには洗練されたGUIも不可欠。こうした過酷な要求に、従来のPCベースアーキテクチャは限界になってきている」と指摘。CellプロセッサをデジタルAV家電などに搭載して性能を引き上げ、ブロードバンドベースの各種サービスの拡大にもつなげたい考えを示している。
IBMは2005年上半期、米ニューヨーク州イーストフィッシュキルの300ミリウエハー対応半導体工場でCellの試作を始める計画。最初の適用事例はSCEIと共同開発するワークステーションで、このほど稼働を開始した(関連記事参照)。ワークステーションの処理性能は1ラックで16TFLOPSに達する見込みという。
民生用製品ではSCEIの次期家庭用ゲーム機「PS3」(仮称)に搭載される。PS3は来春に国内で披露し、5月のE3にプレイアブル出展する予定。
またソニーがブロードバンド対応ホームサーバとHDTV対応デジタルTVを、東芝がHDTV対応デジタルTVを2006年に製品化する計画だ。
ソニーは、Cell生産に向け、2003年から3年間で総額2000億円の半導体設備投資を進めている(関連記事参照)。
関連記事
- Cellワークステーション1号機が稼働、1ラックで16TFLOPS
- 「PS3お披露目は来年春、可動実機は来年E3に登場」――ソニー久夛良木氏
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)がプレイステーション次世代機「PS3(仮称)」のタイムスケジュールを発表。来年春に国内お披露目で、来年5月のE3で実動可能(プレイアブル)な実機を展示するという。発売は来年末か? - 久夛良木氏が語る「PS3にブルーレイを選んだ理由」
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が、次世代プレイステーション「PS3(仮称)」のメディアにBlu-ray Disc(BD)を採用すると発表。「PS Business Briefing」の中で同社社長兼CEOの久夛良木健氏が、BD採用経緯や今後の方向性を語った。 - ソニーとIBM、CELLベースの開発環境を今年第4四半期に開発へ
- CELLが促進する「映画とゲームの融合」
ソニーとIBMが取り組むCELLベース開発環境は、コンテンツ制作プラットフォームを映画・ビデオゲーム業界全体に拡大することを目指す。これにより映画とゲームの融合は一層進むだろう。 - PS3――久夛良木氏が語る「実現への道筋」
映画『マトリックス』の世界を現実のものにするという次世代プレイステーション(PS3)。だが、そのビジョン実現には、空白の部分がまだ数多く残されている。どうやってそれを埋めていくのか、今回はSCE社長兼CEOの久夛良木健氏に、その“ロードマップ”を聞いた。 - 「積極的な半導体設備投資は“PS2のおかげ”」――ソニー、2000億円投資で次世代チップ「CELL」製造へ
ソニーとSCEIが総額約2000億円の設備投資を発表。次世代プロセッサ「CELL」の生産を目指した今回の巨額設備投資は、ソニーグループが掲げるブロードバンド戦略にとって重要な位置付けとなる - “多芸多才”なCellチップ、サンプル製造段階へ
IBM、ソニー、東芝が共同開発しているCellプロセッサが、サンプル製造の段階へと移る。PlayStation 3に搭載されると見られるこのチップは、複数の「パーソナリティ」を持つという - IBM、ソニー、東芝が共同開発中の「Cell」の状況が明らかに
- 「ブロードバンドで世界は密結合する」――SCEI久夛良木社長
SCEIの久夛良木社長は,SGI Solution Forumで講演を行い,ブロードバンドインターネットがもたらす10年後の世界について語った。 - 3.2GHz動作の最速メモリ「XDR DRAM」を発表 Rambus、東芝、エルピーダ
米Rambusと東芝、エルピーダメモリは、3.2GHzで動作する次世代メモリ「XDR DRAM」を発表した。現在のPC用DRAMと比べ8倍の帯域幅を実現できる。東芝とエルピーダは2004年に製品化、2005年に量産化する計画だ。 - Rambus、ソニーなど3社に新技術ライセンス供与
コードネームで「Yellowstone」「Redwood」と呼ばれる次世代メモリインタフェース技術をソニー、SCEI、東芝にライセンス
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.