Winnyがセキュアなら金子被告を応援していた〜ACCS
携帯が高機能化、iPod化すれば、携帯サイトでの著作権侵害も問題になる可能性がある。ACCSの専務理事、久保田裕氏に著作権をとりまく現状を聞いた。
既報のとおり、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)はティー・オー・エスと共同で、携帯向けの情報モラル教育を実施すると発表した。この会見会場でACCSの専務理事、久保田裕氏に著作権をとりまく現状を聞いた。
ITmedia 携帯でも情報モラル教育を行うとのことですが、携帯でも音楽配信市場が成立しつつあることを受けてのことでしょうか。
久保田 携帯は“ウェアラブルコンピュータ”としてPC化しつつある。いまはタレントの画像アップによる肖像権侵害ぐらいでも、今後すぐに音楽や、映像コンテンツなどでさまざまな著作権侵害を考えなければならなくなるだろう。
携帯は、中学生や小学生など若年層にも普及している。学校でPCを用意して、授業でPCはこう使いましょう……という教育をしても、携帯の扱い方をきちんと教えないと意味がない。逆に、携帯ユーザーに著作権の意識を高めてもらえれば、それがいろいろなことの突破口になるのではないか。
ITmedia 携帯の「iPod化」をめぐっては、P2Pの違法コピーをおそれるのでなくネット配信を促進すべきという意見も出ています(3月8日の記事参照)。慶応義塾大学の助教授である田中辰雄氏の研究によるものですが、これをどうお考えですか。
久保田 そういう研究があるのは、いいことだと思う。法律はいつもバランスが重要であって、ACCSとしてもP2P配信の考え方を完全に否定するわけではない。
ただし、気になるのはそれでどういう“ルール”を責任を持って考えているのかということ。著作物すべてをオープンソースにしたとして、それではたして自由流通の世の中が実現できるのか。クリエイティブな行為には著作権でインセンティブ(=ここでは成功報酬、対価のこと)を確保しておかないと、社会が成り立たなくなる。あなたがたマスコミにしたって、(記事がオープンソース化しては)仕事にならないのではないか。
私が懸念するのは、著作権が整備されていないと「お金がある人間」しか著作物を作れないようになるのではないかということ。独裁者が、意のままのコンテンツを制作して放送波に乗せて流す、そんな世の中になってしまうのではないか。
ITmedia ――やや、話が広くなりました。
久保田 結局は、そういう話になる。Winnyがどうとか、そういう近視眼的なことを考えているのではない。ロジックとしては、WinnyのP2P技術自体は違法ではない。しかし、それが社会にどういう影響を与えるのか。悪意をもって開発したのではないか、ととられかねない。Winny裁判で問われているのは、そこだ。
現状の著作権の仕組みが納得がいかず、制度的に変えていくのも時間がかかるから、Winnyでこれをぶっ壊す――。金子さん(編集部注:著作権法違反ほう助の罪に問われている金子勇被告)がそう考えていたかどうかは知らないが、そうだとすれば“表現の自由”を超えている。
もし、P2P技術を活用して「こうすればセキュアに配信できる」というのを示す、あるいはその途上だったというなら、僕は金子さんを応援した。これは、書いておいてください。Winnyがセキュアなら、ACCSは金子さんを応援すると。
(文中敬称略)
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