3Dホームシアターが現実に?――“つなぐだけ”の立体視STB(2/2 ページ)
マクニカとマーキュリーシステムは、2D映像を3D映像にリアルタイム変換するSTB「3D MAVE」を発売する。普通のビデオやDVDが、このSTBを通すだけで立体動画になるというもの。当初は業務用だが、価格を下げたコンシューマー向け製品の投入も検討中。
デモンストレーションは、出力フォーマットごとに行われた。たとえばFULL-LRでは、2台のSTBに2台の液晶プロジェクターを接続。雪が降る山林の風景をスクリーンに投影してみせた。
偏光メガネを通してみると、ちょうど窓から外の風景を見ているような奥行きを感じる。「設定で“飛び出す”ようにも調節できるが、映像は本来、(撮影している)カメラより手前に何かが飛び出してくるものではない。自然で目にもやさしい“奥行き”のほうを重視した」(同社)。
今回は、権利上の問題もあって映画を見せることはなかったが、Z軸を抽出する技術の性格上、奥行き感を意識して撮影された映画作品は「向いている」という。「もともとZ軸を持つCGはもちろん、映像クオリティの高い最近の実写映画とは相性がいい。とくに、チャン・イーモウ監督の“LOVERS”や“HERO”は、とても綺麗に見えた」。また、最近の緻密なアニメ作品もOK。宮崎駿監督作品などが代表例だという。
一方“不向き”なものもある。たとえば「サザエさん」や「ちびまるこちゃん」など、線画に近いものはZ軸の計算が困難になるらしい。「それなりにオブジェクトの前後関係は出るが、商業的には難しい。このため、あえて“不向き”と言わせてもらった」(同社)。
1080i対応チップも開発中
「3D MAVE」は、アミューズメント施設やイベント関連、博物館などの業務用途に販売される予定だ。しかし、両社はコンシューマー映像機器への展開も視野に入れており、「単機能でコンパクトなSTBを手頃な価格帯で発売したい」としている。具体的な価格は示されなかったが、「家庭用なら、10万円は切らないとダメだろう」(マクニカ ブリリアント テクノロジー カンパニー、マーケットクリエーション統括部長の岩崎広司氏)。
一方、ハイビジョン映像への対応も進めている。マーキュリーの江良氏によると、今回の技術は解像度が高く、また前面投写型プロジェクターのように、視聴者と画面に距離があるほど立体感を出しやすいという。
「ハイビジョンソースの場合、解像度が上がるぶん、奥行きのステップ数を増やすことができる。既に(ハイビジョン処理)回路としてのロジックは完成しており、1080iで“ゆっくり”と動いている状態。残る問題はスピードだけだ」。
近い将来、3Dハイビジョンなどという豪勢なホームシアターが登場するのかもしれない。
関連記事
- 「目が疲れない」「簡単お手軽」〜最新の3D映像技術
今年のトレンドといえるのが、映像に立体感を与える立体視変換技術。シャープの「裸眼立体視ディスプレイ」やパイオニアの「3D floating vision」のほかにも、ユニークなものが数多く展示されている。 - テレビ映像をリアルタイムで立体映像に〜マーキュリーシステム
裸眼で立体視が可能なディスプレイが、携帯電話を皮切りに登場した。そこで問題となるのは、立体で見る映像──コンテンツだ。マーキュリーシステムは、静止画から立体画像を生成する技術を開発。ドコモの端末「SH251iS」に搭載された。テレビ放送などの映像も、リアルタイムで立体映像に変換する - シャープ、裸眼立体視が可能なLCDを実用化
シャープは9月27日、裸眼立体視が可能な液晶ディスプレイの実用化に成功したと発表した
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.