2つの規格をアグレッシブにサポートするWarner:次世代DVDへの挑戦(3/3 ページ)
ハリウッド映画スタジオ取材記事の2社目は、Warner Home Videoの事業開発担当・副社長の横井昭氏に話を伺った。興味があるのは、Warnerがいずれかの規格を優先するのか。これについて横井氏は「全く同じ」と明快だ。
「ビットレートは把握していませんが、デジタルメディアエクスチェンジ(Warner子会社のポストプロダクションスタジオ)にてVC-1で制作しています」
Sony Pictures Entertainmentは18Mbpsでも可変ビットレートならば十分と判断した。VC-1は再生負荷が低いものの、現時点でリアルタイムエンコーダが存在しないという点ではH.264と同様の状況にある。
「MPEG-2はもう古い。ビットレートを上げれば高画質ですが、低ビットレートでは歴然としたアドバンストコーデックとの違いがあります。HD DVDとBDの両方をサポートするため、BDの2層を使ったとしても、結局はHD DVDの30Gバイトに合わせて圧縮を行わなければなりません。となれば、低ビットレート時に優位なVC-1かH.264のいずれかしか選択肢はありません。将来的には低ビットレート時の画質と生産性を改善し、HD DVD9あるいはBD9として大量にソフトを発売したいと考えています」
HD DVD9とは、HD DVDのアプリケーションフォーマットを踏襲しつつ、DVD2層ディスクに記録する規格のことだ。またBD9も同様にDVD2層と同じ物理フォーマットに対して、BDと同じアプリケーションフォーマットを採用したもの。ワーナーがBDAに加盟した時に、要望が出されて規格に追加されたものである(あくまでVideo規格なので、現時点において記録型で利用できるわけではない)。8Mbpsまで圧縮し、およそ120分の映像を収める。
「DVD9にアドバンストコーデックのロービットレートで映像を収めるというアイディアは、HDソフトの立ち上げ時、普及を促すために考えたものです。当時、HD DVD9だけに対応する数10ドルの安いプレーヤーを作り、大型のHDTVのおまけとしてバンドルするということを考えたのです。50万円のプラズマに50ドルのプレーヤーならコスト的にも合います」
「ただ、誤解しないでほしいのですが、これはあくまでもローコストオプションです。短編映画には使いますが、長編映画には使いませんし、青紫レーザーダイオードを用いたプレーヤーが不要という意味ではありません。青と赤、レーザーによる区別は不要で、コンテンツの長さによって適した方を選べばいいという考え方です。たとえば子供用映画は短く安くなければなりません。“トムとジェリー”の短編を入れたディスクを500円で売りたいといった時に、HD DVD9やBD9を使うのです」
なお、発売するタイトルのビットレートは、映像がVC-1の12Mbps程度になるだろうとのこと。これは“ゴールデンアイ”と呼ばれる、映画業界で画質評価を担当している技術者のテストを行った結果を反映したものだと横井氏。テストでは7〜9Mbpsで、十分に高い画質が得られ、大画面投影でノイズを複数人で探すほどの仕上がりになったという。
一方、音声は「新作や音声のマスターが残っている作品に関しては、ドルビーTrue HD(ロスレス圧縮コーデック)を全面的に採用する」と、非圧縮ではないモノの、かなり期待できそうだ。
関連記事
- 1年で150本近いタイトルを投入する――Sony Pictures
恒例ハリウッド取材の第2回は、Sony Pictures Entertainmentだ。ソニー系列ということもあり、BDパッケージビジネスにもっとも積極的な映画スタジオ。期待通り、4月から毎月十数本のソフトをコンスタントに発売していくという。 - 国内は録画機から――ソニーに聞くBlu-ray製品戦略
標準化から製品化による実ビジネスの展開へとフェーズを移したBlu-ray Disc。ソニーは、CESでBDプレーヤーを参考出展したが、日本ではどのように展開するのだろうか。BD製品の見通しについて、ソニー シニアバイスプレジデントの西谷清氏に話を聞いた。 - 画質を改善するビデオプロセッサたち
固定画素における映像処理の重要性は以前から叫ばれてきたが、パネルレベルでの画質が向上してくると、映像処理チップの優劣がハッキリしてくる。「2006 International CES」の会場で、北米を拠点にする映像処理チップメーカー2社のビデオプロセッサを取材した。 - 豊富なプレーヤーで攻勢をかけるBlu-ray Disc陣営
CESの会場では、多くのBlu-ray Disc プレーヤーが展示されている。再生専用機の発売ではライバルに先行される可能性の高いBD陣営だが、豊富な機種とパッケージソフトを用意することで、人気の定着を図りたい考えだ。 - 東芝、HD DVDプレーヤーを3月より販売――価格は499ドルから
東芝は1月4日(現地時間)、International CESのプレスカンファレンスにてHD DVDプレーヤーを北米地域で3月より販売開始すると発表した。「HD-XA1」「HD-A1」の2モデルで、価格はHD-XA1が799.99ドル、HD-A1が499.99ドル。 - 「単一フォーマットでなければ参入できない」とWarner
DVD誕生前夜から東芝の盟友であるWarner Brothers。今回も同社はDVDからの移行がスムーズに行えるAODを支持するだろう、と推測する人は多い。しかし、実際にはどうなのだろうか? Warner Brothersの家庭向けコンテンツ制作・販売子会社であるWarner Home Videoに聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.