マスターモニターを超えるFEDの“ブラウン管画質”:Display 2007
ソニーなどの有機ELディスプレイと並び、次世代の薄型テレビとして期待を集めるエフ・イー・テクノロジーズのFED。同社ブースには、その「ブラウン管画質」を一目見ようと多くの人が詰めかけた。
ソニーや東芝松下ディスプレイテクノロジーの有機ELと並び、次世代ディスプレイとして注目を集めているのが、エフ・イー・テクノロジーズのnano-Spindt Field Emission Display(ナノスピント・フィールド・エミッション・ディスプレイ)だ。薄型ながらブラウン管に近い原理で動作するFEDは、動画視認性やフォーカス感に優れ、画質に対する期待は非常に高い。
FEDが画質的に有利である理由の1つは駆動方式だ。たとえば液晶テレビの“動画ボケ”は、あるフレームを表示すると、次のフレームを表示するまで同じ画像を表示し続けるホールド型に起因する部分が大きい。対してFEDは、単純マトリックス構造のカソードを線順次によるインパルス方式で駆動する。つまり、「瞬間的には1ラインしか光っていないため、駆動方式によるボケは生じない」(同社)。
同社では、apdcが提案する“動画解像度”のような横並びの検査は行っていないものの、違いは明らかだという。「PDPは、12pixel/fieldの動きでLCDより(動画追従性が)良いとアピールしているがFEDはそれ以上。24pixel/fieldや36pixel/fieldのスピードになると違いがわかるはずだ」。
また、蛍光体の残光といったデバイス素子の応答性も動画ボケの原因となるが、nano-Spindt FEDは残光特性の短い蛍光体を使用することで改善。さらにナノオーダーのスピント型エミッターを1画素あたり1万個以上配置することで、輝度のばらつきのない滑らかな映像を実現したという。
フォーカスの高さもFEDの特徴だ。ブラウン管と同様の駆動方式であることは既に書いたが、ブラウン管の場合は画面の中央から外れるとフォーカスが甘くなりがち。しかし、FEDなら画面の隅まで均一のフォーカスが得られるため、「いわゆる“ブラウン管画質”でありながら、周辺のフォーカスも甘くない」。
展示されていた試作機は、19.2インチで1280×960ピクセル。ピーク輝度は400カンデラ、暗所コントラストは2万:1以上だという。視野角は「フリー」。どこから見ても色が変わることはない。
また、試作パネルを2枚並べて“26インチフルハイビジョン”相当にしたデモ機も展示していた。こちらはハイビジョンマスターモニターを想定したもの。横には消費電力計があり、FEDの特徴である消費電力の低さをリアルタイムに確認できる。実際に見ていると、明るいシーンでは20ワット前後になるものの、暗いシーンでは2ワット程度まで下がることがわかった。「平均すると液晶パネルの半分程度」という。
気になるのは製品化のスケジュールだが、エフ・イー・テクノロジーズは事業企画会社という位置づけのため、具体的な計画はまだない。まずは30インチ未満のフルハイビジョンパネルの開発を進め、プロフェッショナルモニターの代替機として提案する考えだ。「1年から1年半程度は開発と検討を進め、パートナー企業を募ることになるだろう。どのような製品を作るか、いつ頃出すか、といった話はその後だ」(同社)。
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