画質からみた6台の26V型液晶テレビ:パーソナルTVバイヤーズガイド(前編)(2/2 ページ)
今回、“パーソナルサイズ”と題して各社の26V型液晶テレビを取り上げた。すべてがD4解像度相当の液晶パネルを採用し、上位モデルほどの画質改善機能は搭載していない。スペック面の相違はそう多くないが、細かくチェックしていくと違いが見えてくる。
まず三菱「LCD-H26MX7」だが、この製品は画質モードの「ハイブライト」で明るさと色合いの誇張が大きく、また発色は若干派手目だ。このあたりは“個性”で済む範疇だが、気になったのは暗部の表現。一見すると黒の沈む見込みもしっかりしていてメリハリが良く見えるのだが、実は暗部の諧調表現に乏しい。
もっとも輝度の低い画質モードならばある程度仕方ない部分もある(実際にはこのモードでもっともしっかり表現すべき)と思うのだが、輝度の高い画質モードでも暗部の輝度がそのままもち上がるだけで、諧調表現自体には大きな変化がない。もちろん、あらゆる手段(詳細な画質設定)を用いて画質を追い込んでみた訳ではないが、少なくとも輝度やコントラストの調整というレベルで改善は施せない。
次はビクター「LT-26LC8」だ。この製品は最近のビクター製品に良く見られた少々押しの強い発色ではなく、ニュートラルな発色と鮮やかな白で良い意味で万人向けに仕上がっている。気になったのは高輝度な画質モードはともかくとして、標準画質モードでも画面全体に白っぽさが抜けず、白も確かに鮮やかなのだが、結構白トビを感じたこと。結果としては全体に発色がおだやかで見やすいといえば見やすいのだが、ちょっと気になる点だった。
もっとも気になったのは、どうにも動画としての解像感が低い点だろう。これも見やすさに繋がっていると評価することもできるが、他社製品を横に並べてしまうとDVDのSD映像ですらこの点が気になってしまった。もちろんハイビジョンクオリティであることに間違いはないのだが、いわゆるキレの良い画質を求める人には向かないだろう。
残る4製品に共通して感じたのは、まず見た目の解像度もしっかりと確保されていたこと。いずれの製品も傾向の違いこそあれ、スタンダード画質モードはナチュラルでテレビ放送から映画の視聴まで大きな不満を感じない懐の広さを感じる。簡潔にいってしまえば、標準モードでは画質の破綻をほとんど感じなかった。液晶パネルの進化もあると思うが、これらの4製品に関してはパネル特性に合わせた映像回路の作り込みが一定レベルに達している印象だ。
それぞれのメーカー色が強く感じられたのは、「ダイナミック」や「あざやか」といった名称の“明るい部屋”を意識した画質モード。パナソニック「TH-26LX70」や日立「W26L-H90」は発色がぐっとリッチになり、東芝「26C3000」は鮮やかな白が印象的なさわやかな画質。ソニー「KDL-26J3000」は、スタンダード画質と比較して輝度も発色の変化も控えめで派手さには欠けるが、モニター調でいかにもソニー的といえるだろう。日立「W26L-H90」に関しては、フィルム的な描写で発色が濃厚なぶん、少々ベタっとしたう印象は受けたが、画質自体が破綻する訳でなく、これは好みの範疇と感じた。リビングなどで家族が日中も使うといった場合には1つの指標にできそうだ。
「シネマ」や「シアター」といった照明を落としてじっくり映像を楽しむための画質モードもメーカーによって味付けが異なる。もっともダイナミックな変化を感じたのはパナソニック「TH-26LX70」だ。発色を維持しつつ、ぐっと輝度を落とし込こみ、いかにも暗くした部屋で映画を見るための画質という印象。今回取り上げた製品の中では画質モードごとの印象がもっとも大きく変化した。逆にソニー「KDL-26J3000」は輝度に連動して発色も控えめになる感じで、どの画質モードでも印象を大きく変えていない。とにかくソニーというイメージだ。
日立「W26L-H90」と東芝「26C3000」は、大幅に輝度を落とすわけではなく、長時間視聴向けの、よりマイルドな画質だ。ただし日立「W26L-H90」の方が原色の主張は強く、東芝「26C3000」は白も含めて鮮やかさの主張が強い点は高輝度な画面モードと通じる部分がある。もちろん輝度を落としていっても画質が破綻する訳ではないので、照明を完全に落としたような視聴環境でも不満は感じないのだが、想定しているのは比較的ライトな(わざわざ照明を落としたりしない)ユーザー層なのかな、と思う。
こうして6メーカーの製品の画質を比較してみると、古くからのメーカー色が概ね反映されていることに気づく。最初に取り上げた2製品でも、白のビクター、色の力強い三菱(もしくは赤の三菱、といってもブラウン管時代の随分古い筆者のイメージであるが……)という印象を当てはめると、見る目は変わるかも知れない。
また、6製品の中でやはり画作りに自信を感じたのはパナソニック「TH-26LX70」で、どの画質モードでも色で見せ、ブラウン管からの代替なら「ダイナミック」で違和感はないし、「シネマ」の画質はある程度画質にこだわる層でもプリセットのままで十分に使える。ブランド力という武器があってこそかもしれないが「攻めているな」という印象は強く受けた。
後編では、各製品の付加機能を解説する。
関連記事
- 見たい番組を見逃さない――パナソニック“VIERA”「TH-26LX70」
最近、パーソナルサイズテレビのスペック底上げが著しい。パネル解像度はWXGA止まりでも、上位モデルと同等の映像エンジンやネットワーク機能を搭載することで、以前の“安いけれど機能はそれなり”というイメージを払拭した。今回は、“セカンドテレビ”に最適な26V型クラスの液晶テレビを取り上げる。 - “ながら視聴”に最適なパーソナルテレビ――ソニー“BRAVIA”「KDL-26J3000」
ソニーの“BRAVIA”「KDL-26J3000」は、ネットワーク機能が充実したパーソナルサイズの液晶テレビだ。ポータルサービス「アクトビラ」のほか、独自の「アプリキャスト」、DLNA準拠のメディアプレーヤー機能など、このクラスの製品としては珍しいほど多彩な機能を備えた。 - 普段使いに優れたパーソナルスタンダード――三菱電機“REAL”「LCD-H26MX7」
三菱電機の液晶テレビ“REAL”「LCD-H26MX7」は、シンプルなボディに「テレビ」としての使い勝手を高めるさまざまな工夫が凝らされている。 - HDMIを搭載した低価格モデル――ビクター「LT-26LC8」
日本ビクターの「LT-26LC8」は、同社製品のなかでもエントリーモデルに位置する低価格機だ。コストパフォーマンスの高さに着目しながら試用した。 - 長くつきあえそうな“良質”テレビ――東芝“REGZA”「26C3000」
東芝の“REGZA”「26C3000」は基本的には上位製品の「Hシリーズ」からHDDを取り除いただけの仕様となっており、「新メタブレイン・プロ」も搭載する画質重視モデル。高速なレスポンスも魅力だ。 - そつなくまとめた優等生テレビ――日立“Wooo”「W26L-H90」
目立った得意科目はないが、何でもそつなくこなして先生の受けもいい。そんな優等生タイプの液晶テレビが“Wooo”「W26L-H90」だ。独自のユーザーインタフェースは使い勝手が良く、ファミリー層にも勧められる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.