「i.LINK」――これからの“ムーブ”のあり方:デジモノ家電を読み解くキーワード
ハイビジョン映像の“ムーブ”は、レコーダーのHDDからDVDへ、あるいはBlu-ray DiscかHD DVDへと行われることが多い。しかしテレビが録画機能を持つなど従来の役割分担が崩れつつある現在、その図式も変わりつつある。
これからの“ムーブ”を考える
急速に普及しつつあるデジタル放送は、コンポジットやSビデオといったケーブルで映像機器間を接続してもダビングできないことはご存知のとおり。コピー制御に対応した記録機器と記録メディアの組み合わせでなければ録画はできず、しかも、コピーワンスの制約により保存場所を変える“ムーブ”しか許されない。
そのムーブも録画機能を装備するテレビの登場など外部要因により、ハイブリッドレコーダーのHDD側からDVD側へというこれまでのお約束が変わりつつある。今回は、テレビで録画した映像を外部機器へムーブすることについて考えてみたい。
現状の最適解はi.LINK
AV機器間で映像をムーブするには、現在のところ「i.LINK」の利用が一般的。正式名称はIEEE 1394(MacintoshではFireWire)というこの高速シリアルバス規格は、D-VHSビデオデッキにも採用されるなど、地デジ登場以前から普及している。
ただし、i.LINKで接続できたからといっても安心はできない。録画可能なAV機器に使用されているi.LINK(i.LINK-TS)は、データを入出力する方向が製品ごとに異なり、たとえ端子の形状が一致したとしてもムーブできるとはかぎらない。
機器同士の連携動作が必要なムーブは、現状ではメーカーが動作を検証した(互換性のある)機種間でなければ難しいのだ。そして、互換性が満たされたとしても、i.LINK-TSを利用したムーブはD-VHSモードで行われることが多く、映像の長さと同じ時間(等速)で転送する覚悟が必要だ。
とはいえ、現在のところi.LINK-TSは異機種間でムーブを可能にする唯一といっていい手段であり、将来的にBlu-ray DiscやHD DVDで長期保存することを考えているのならば、機種選定のときはi.LINK-TSに対応した端子の有無が重要なポイントになるはずだ。
ムーブが速い「eSATA」
前回取り上げた東芝のREGZA H3000シリーズは、PCで利用されているHDD接続規格「eSATA」を録画機器との接続方式として採用している。現在のところ、別途用意されている外付けHDD以外の機器へのムーブには対応しないが、その利便性が注目されている。
eSATAを採用するメリットは、その高速性にある。転送速度は150Mバイト/秒、i.LINKの50Mバイト/秒やUSB 2.0の60Mバイト/秒に比べ圧倒的に高速だ。D-VHSモードのような制約もないため、1時間番組のムーブも10分程度で完了する。H3000シリーズの場合、増設できる外付けHDDは最大5台という制限はあるが、“見終えたら消去”というユーザーのためのストックヤードには最適かもしれない。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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