「120」の起源は電源周波数にあり
一般的に、放送を含めた多くの動画は1秒あたり60枚の静止画から構成される。これは、米国や日本で長年利用されてきたNTSCの前身となる白黒テレビの放送規格が、米国の電源周波数にあわせて垂直同期周波数(リフレッシュレート)を60Hzに設定したことに由来する。カラー対応したNTSCでは、飛び越し走査(インターレース)を行うことで30枚/秒(正確には29.97枚/秒)の静止画を60枚/秒に見せかけているが、その60という根拠は電源周波数にあるのだ。
プログレッシブ走査では、この60枚の静止画をインターレース処理せずそのまま表示する。インターレースでは、細かい文字や線を表示するとチラつきが目立つが、走査線が2倍のプログレッシブでは滑らかでチラつきのない映像が再現可能となる。最近のテレビやDVDプレーヤーには、「プログレッシブ対応」とうたわれている製品が多いが、これは「60枚/秒のコンテンツを再生できる映像機器」という意味にほかならない。
前置きが長くなったが、近頃各メーカーがこぞって発売している「倍速駆動液晶」は、このプログレッシブの考えを一歩進めたものと言っていい。120枚/秒のコンテンツを再生するわけではなく、テレビ側で60枚/秒のプログレッシブ映像を補完処理し、2倍の120枚/秒に増やして再生しているのだ。この倍速駆動により、応答速度の遅さが指摘されがちな液晶テレビでも、残像感(動きボケ)が目立たないクッキリした映像が楽しめるようになった。
倍速駆動液晶を見定める
このように倍速駆動液晶には、コマとコマとの間に本来ならば存在しない静止画(中間コマ)を生成する技術が搭載されているが、機種選定時の比較材料にはしにくい。その理由を挙げてみよう。
第1の理由が、数値による比較が難しいこと。倍速駆動液晶では、画素ごとに時間軸をさかのぼり周辺の画素を検索して動きを予測する「動き検出」が中間コマ生成の基本だが、検索のアルゴリズムなどのチューニングはメーカー各社により異なる。動画が滑らかに表示できるかは、従来、カタログ掲載の応答速度を参考にできたが、倍速駆動の出来不出来は実際に映像を見ないかぎりわからない。
第2の理由が、質の高い映像ソースがまださほど多くないこと。たとえば、BSデジタルに比べビットレートの低い地上デジタルでは、動きの激しい映像では解像感が低くなり、そもそものソースがボケて見えることがある。また、多くが24枚/秒で撮影されている映画のように、倍速化による動きボケ緩和が期待できないソースもある。
もっとも、横方向にスクロールするテロップなど、倍速駆動の効果テキメンな映像コンテンツは少なくない。比較材料とはしにくいが、あればうれしいこと確実な機能といえるだろう。
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