「世界でたった1台」というキャッチで、木ーボード製作の泥沼にハマる:プロフェッサー JOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(3/3 ページ)
「世界で1つの自分専用」というキャッチにひかれて、「木ーボード」に手を出してしまった。自分専用キーボードを自作する喜びを味わえ、理想のキータッチをどこまでも追求できる貴重なキットだ。
チューニングの泥沼にハマる楽しみも
第2行程の最後の処理として、SpaceやEnter、左右Shift、Back Space等の大型キートップ裏に反発材を取り付ける。特に横幅のあるSpaceキーは、中央のジョイントパーツ1個だけでは公園のシーソーのように左右のブレが発生し、安定したキー入力ができなくなる懸念がある。
付属反発材の片面には粘着テープが取り付けられているので、適度な幅に切り取り、ジョイントパーツの左右に均等に貼り付ける。大きな反発材を取り付けると、タクタイル感が強くなりすぎて、キーを押す指先に余分な力が必要となる。逆に反発材を節約しすぎると、不安定なフニャフニャ感を感じるだろう。
何れにせよ製作の山場はこの「反発材の処理」にあると言える。ひとまずここは適当な反発材の仮使用にとどめ、最後の行程で反発材を使用していない一般的な他のキーとのバランスを見ながら反発材の使用量やカット方法で調整することが必要だろう。無事、すべてのジョイントパーツを89個のキートップ裏に打ち込めれば第2行程は無事終了だ。
「基本的な組み立て」という視点からみれば、キートップをキーボードベースに取り付ける第3行程で作業は終了だ。キートップの取り付けに先立ち、キートップの安定した取り付けのために、キーボードベースのストロークするメカ部分にサイズ調整した両面テープを貼り付ける作業が必要だ。Hacoaの木ーボードの組立製作はほとんど1人で行う作業が中心だが、この両面テープを適当なサイズに切って貼り付ける作業は、パートナーが居るとかなり楽な作業になるだろう。両面テープを適当な長さに切るという作業自体はそれ程難しい作業ではないので、友人や子供、ワイフに手伝ってもらえれば効率アップは間違いないだろう。
キートップをキーボードベースに取り付けるときに注意することはそれほどない。強いていえば、キートップを押し込みにくい時に、無理矢理強く押し込まないことぐらいだろう。理想的にいけば、キートップの底面にある第2行程で打ち込まれたジョイントパーツの2つの爪は、キーボードベースのストロークメカ部分に貼り付けられた薄い両面テープを突き破ってキートップの固定を確実なものにする。すべてのキートップがバランス良く取り付けられたなら基本行程は終了だ。
最後に、出来上がったキーボード全体を少し遠くから眺めて、各キートップの向きや傾きバランスをチェックしよう。キータッチにこだわる多くのキーボードマニアなら必ず気になるところがあるはずだ。オプションの第4行程では、これらのチェックを行い、世界で1個の自分だけのキーボードの完璧チューンにチャレンジしたい。一番の注目点は前述した「反発材」を使用した大型キーボードとその他のキーボードの指先に感じるタクタイルの誤差調整だ。
EnterやSpaceキーに他のキーより多少の重みや反発力を求めるユーザーがいれば、その逆もまた居る。これらの絶妙なバランスをスポンジでどこまで追い詰めることができるかは筆者にも想像がつかない。多くの高級キーボードでは、精巧なパンタグラフとエアドームで絶妙のチューニングをした製品も多い。Hacoaの木ーボードは、世界でたった1つの自分専用キーボードを組み上げる表層のカスタマイズの楽しさと、出来上がった専用キーボードを何処までもチューンする楽しさの両方を体験させてくれる貴重なキットだろう。
ごく一般的で普及品のメンブレンキーボード+スポンジの反発材の組み合わせで、どこまでキータッチのチューニングアップが出来るか楽しみだ。「Hacoaの木ーボード」は文字入力することでお金を稼ぐプロフェッショナルには不向きかも知れないが、すべての機器を手作りで実現したいと考える気骨のある互換機マニアや、ヘビーなキー入力を行わないが、こだわりと気持ちの余裕のあるパソコンユーザーには最適なガジェットキーボードの最右翼だろう。
竹村譲氏は、日本アイ・ビー・エム在籍中は、DOS/V生みの親として知られるほか、超大型汎用コンピュータからThinkPadに至る商品企画や販売戦略を担当。今は亡き「秋葉原・カレーの東洋」のホットスポット化など数々の珍企画でも話題を呼んだ。自らモバイルワーキングを実践する“ロードウォーリア”であり、「ゼロ・ハリ」のペンネームで、数多くの著作がある。2004年、日本IBMを早期退職し、国立大学の芸術系学部の教授となる。2005年3月、より幅広い活動を目指し、教授職を辞任。現在、国立 富山大学芸術文化学部 非常勤講師。専門は「ブランド・マネジメント」や「デザイン・コミュニケーション」。また同時に、IT企業の広報、マーケティング顧問などを務める。
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