CESで見えてきた“4K2K”の可能性:本田雅一のTV Style
テレビは今後どう進化していくのか。今月初めにラスベガスで開催された「2008 International CES」では、薄型・軽量化という流れにくわえ、もう1つの可能性が示された。それは4K2K(4096×2048ピクセル)の解像度がもたらす、高画質化の可能性だ。
前回は薄型・軽量テレビ流行の理由が、米国で受けのいい壁掛け設置を容易にするためのものだと書いた。しかし、今月初めにラスベガスで開催された「2008 International CES」では、テレビに関するもう1つの可能性も示された。それは4K2K(4096×2048ピクセル)の解像度がもたらす、高画質化の可能性だ。
フルHD対応テレビがやっと手頃になってきたところなのに、本当にそんな高解像度のテレビが必要なのか? と思う読者は決して少なくないだろう。しかし、これからの10年といった長期の視点でいえば、テレビのさらなる高解像度化は必然のものだ。理由はいくつかある。
まず、現在のデジタル放送、あるいはBlu-ray Discなどの高解像度パッケージビデオは、いずれも1920×1080ピクセル(あるいは1440×1080ピクセル)で作られており、フルHDデバイスはそのすべてのピクセルを1対1で表現できる。
ただし、液晶やプラズマ、あるいは有機ELといった固定画素のディスプレイの場合、そのまま1対1で表示するだけでは、(確かに解像感は素晴らしいが)輪郭を滑らかに表現することができない。では画像処理で滑らかにすればどうか? といえば、当然ながら映像に含まれる情報量は減り、画質は確実に低下する。輪郭を正確に抽出し、それをアナログっぽく滑らかに描画しようといったより積極的な表現を行うとすると、ソース映像の画素数よりも多くの画素数を持つディスプレイでなければならない。
以前、4Kプロジェクターと2Kプロジェクターを見比べたことがあるが、元となる映像が2Kの場合でも、4Kプロジェクターの方が滑らかで自然な画質に見えた。輪郭描写がナチュラルで情報量も若干増えて見える。輪郭描写の自然さは当然として、情報量が増えて見えるのはなぜか? 専門家に印象を伝えたところ、映像を量子化する際に埋もれた情報が、映像をアップコンバートする中で表現できるからだと言われた。
RGBのサブピクセルが並列に並ぶ直視型ディスプレイの場合、RGBの画素を重ね合わせて表示するプロジェクター型ディスプレイよりも、ギスギスとしたデジタルっぽさがより強調されて見える傾向が強いため、より効果的に4K2Kを使いこなせるのではないだろうか。
もちろん、今すぐどうにかなる問題ではない。解像度を上げることは難しくないだろうが、問題は的確な映像処理を行うバックエンドのシステムが、すぐには実用化できないからだ。
例えばソニーは、CESに展示した4K2K液晶テレビのバックエンドに5台のPS3を配置し、4K映像ソースをハンドリングしていたという。パナソニックの150インチプラズマ(これも4K2K)の後ろは分からないが、どうやら業務用システムを持ち込んでいたようだ。
しかも、これはあらかじめ作ってある4Kソース(2Kから事前処理で4Kにアップコンバートしているものも多い)を表示するのに苦労している段階なのだから、放送やパッケージソフトで使われているフルHD映像を“高品質に”アップコンバートできるようになるには、まだまだ時間がかかる。
例えばCESで東芝がCELL B.E.を活用した、リアルタイムのSD-HDアップコンバートをデモンストレーションした。これは大変にきれいで、本当にアップコンバートなのか、しかもリアルタイムなのは本当なのかと目を疑うばかりの高品質だったが、一方でHDを4Kにするには、6倍の情報(SDとHDの差)を元に4倍の情報(HDと4Kの差)を取り出す必要がある。
半導体技術の進歩を見れば、いずれ民生機器で高品質な4Kアップコンバートも可能になると予想されるが、それは少し先の話だ。とはいえ、2015年には8K4Kのスーパーハイビジョン放送の実験が開始されるとの報道もある。やっと一般消費者がHD映像の画質に慣れ始めた昨今だが、すでに次の時代への足音が聞こえ始めている。
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