薄型テレビ、2008年春の新モデルを検証する(3):本田雅一のTV Style
テレビの超薄型・軽量化とともにインテリアを意識した製品が増えているが、やはり壁に穴を開けるのはハードルが高い。そこで着目したいのが“壁に貼り付けた”ように設置できるように工夫されたテレビとスタンドだ。
シリーズ最後は、1月に米国で開催された「International CES」で一大トレンドとなった薄型・軽量化について触れていきたい。といっても、まだ各社の製品が出そろっているわけではない。超薄型テレビといえる製品は、昨年から日立が取り組んでいる「UTシリーズ」と、シャープが発売した「Xシリーズ」の2シリーズしかない。しかし、もうすこし大きな枠でトレンドを見据えれば、今後は徐々に超薄型モデルへの注目が高まっていくことだろう。
超薄型とはいわないまでも、松下電器が「VIERA」の一部製品で訴求しているように、“従来よりも薄い”ことを訴求する例は増えている。また、以前にも存在していた“壁寄せ”スタンドも、ソニーや日立が積極的に訴求を始めたことで、その存在感が消費者に伝わるようになってきた。
薄型テレビの普及により、設置に関する情報が消費者にも行き渡り始め、部屋の中におけるレイアウトも含めた提案が受け入れやすい状況が生まれつつあるといえるのかもしれない。
日立によると、昨年末に発売したUTシリーズでは壁掛けユニットの付帯率が15.2%になったという。絶対的な壁掛け数に関しても大幅増となったそうだ。
ご存知の通り、超薄型化になったからといって、壁掛けの基本的な難易度が下がるわけではない。もちろん、軽量な分だけ工事を簡略化できる利点は無視できないが、電源コードやアンテナ線、(分離型になっている)チューナーユニットとの接続などは配線が必要。壁掛けらしいコードレスの外観を得るには、壁の中への配線工事が必要となる。
それでも壁掛けをしようと意欲を持つ消費者が増えているのは、超薄型テレビが単に薄型・軽量化を行うだけでなく、“壁に貼り付けた”ように設置できるよう工夫されているからだ。"壁掛け"と一言で書いてしまうと実感はわかないが、従来の壁掛けユニットはそれ自身が5〜7センチ程度の厚みを持っていた。
これに10センチ程度のテレビ本体が加わるため、壁掛けといっても実際に部屋に設置してみると、意外に出っ張ってしまい、かなり広い部屋でなければフォトフレームのようにスッキリは見えない。では、なぜ壁掛け金具は分厚いのだろうか?
実はテレビ本体の放熱を行うため、空気の流れを確保しなければならないから、というのがその理由だ。日立やシャープの超薄型はもちろん、CESで参考展示されていた各社の超薄型テレビを見ても、この点に配慮して背面に空気穴を設けなくとも動作するよう工夫されていた。
金具とテレビの両方が超薄型になることで、本当の意味でポスターフレーム、フォトフレームのようなテレビ設置が可能になるわけで、これならば多少の工事が必要でも壁掛けに挑戦したいというユーザーが増えてくるのは必然かもしれない。
ただし超薄型テレビの壁掛けが“理想”としても、実際にはそこまでは……という家庭も多いと思う。そんな方に検討していただきたいのが、壁寄せスタンドだ。
壁寄せスタンドはその名の通り、壁に寄りかかるようにピッタリとテレビを設置するスタンドで、壁から画面までの距離を壁掛け設置に近い位置にまで近付けることができる。当然、その下にはスタンドの足を広げるスペースが必要になるが、今後は壁寄せ設置できるラックなどの提案も行われるようになるだろう(ラックにはもちろん奥行きが必要だが、大画面のテレビが奥に引っ込むだけで、圧迫感はかなり緩和される)。
こうした設置にまつわるさまざまな提案は、“テレビはかっこよくない”“テレビがインテリアのふんいきを壊す”と、テレビに対する投資に消極的だったユーザーに振り向いてもらい、新しい消費者層を掘り起こそうという意図で取り組んでいるのだろうが、もちろん、もともと薄型テレビの買い替えに積極的な消費者にとってもメリットが大きい。
一度入れ替えると、少なくとも数年、多くの場合、10年ぐらいは使うテレビだけに、ディスプレイの本質である画質とともに、インテリアや部屋のレイアウトを含めて検討するユーザーは今後も増えていくだろう。今年の夏商戦以降、こうした考えはさまざまなメーカーに広がっていくはずだ。
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