パナソニックの“立体シアター”を見てきました:CEATEC用の秘密兵器?(2/2 ページ)
パナソニックが「3Dプラズマ・シアターシステム」を公開した。開発コンセプトが「3Dシネマを画質劣化なしで家庭に持ち込む」というように、フルハイビジョンかつフルフレームで3D映像を楽しめるのが特徴だ。
既にある技術や規格をうまく利用している点もパナソニックシステムの特徴。BDにはMPEG-4 AVC/H.264のハイプロファイルを使用して、1920×1080/60iの映像を2チャンネル(右目・左目用)記録しているが、これは2層BDメディアを使えば1枚で記録できる。「50Gバイトの容量を持つ2層メディアなら、2チャンネルでも映画1本を十分に収録できる」(同氏)。またBDにはP in P(ピクチャー・イン・ピクチャー)機能に見られるように同時に2つの映像ストリームを再生する機能があるため、こうした機能を応用すれば、フルハイビジョンのステレオ映像を読み出す仕組みを構築するのは難しくないという。
専用BDプレーヤーとプラズマディスプレイの接続が、HDMIケーブル1本というのも重要な点だ。映像は1080/60iで読み出されるため、2チャンネルあっても伝送容量は“1080/60p”と同等。「容量だけなら既存のHDMI規格で問題はない」というわけだ。もちろん既存のHDMI規格では想定外の使い方になるが、煩雑なケーブル接続を伴わない点は実用化に向けて重要なポイントになる。なお、テレビには2系統のI/P変換回路を搭載していて、表示の際には1920×1080/60p映像へ変換される。
そしてもう1つ。今回のシステムに使われている液晶シャッター付き3Dメガネは、XPAND製の市販品だった。目新しさはないものの、既に市場にあるものを利用してコストを抑えている点が面白い。
「今回のシステムのポイントは、さほど大きなブレークスルーを必要とせず、映画館と同じ体験ができること。すべて暫定的な仕様の試作品ではあるが、要素技術はすでに“練れている”」と宮井氏。BDからの読み出し方法や伝送方法など、規格化が必要な仕様については、ハリウッドの映画スタジオやBDA(Blu-ray Disc Association)加盟メーカーなどと協議していく方針だという。
ただし、事業化のスケジュールについては「必要な規格化の動向、および世の中の動きを見て決める」と慎重な構え。「全域フルHDの3Dシステムがどれだけ受け入れられるか。それだけにCEATECのデモに期待している」。
実際の画質は?
デモ用の映像は、このために作成したというスポーツ映像「BMX」をはじめ、PV(プロモーションビデオ)ライクな音楽、北京五輪の開幕式など多岐にわたる。これらはCEATECの会場でも上映される予定だ。
実際に視聴してみると、確かに十分な立体感とフルハイビジョンならではの解像度を持っていることが実感できた。率直に感想をいうと、従来の家庭用立体ディスプレイより、デジタルシネマ向けの業務用3D映写システム――つまり3Dシネマの劇場にかなり近い印象。もちろん、シアターの大スクリーンを想定した4K2KとフルHDではスペック的な差はあるが、画面が小さいぶん(といっても103V型)、精細さが不足する印象は受けなかった。
また、液晶シャッター式のメガネを使っていても、昔のPC用3Dゲームのような目の疲れを感じなかったのは、明らかにフレームレートと画質が向上した効果だ。液晶シャッターの使用による輝度の低下もほとんど気にならないレベル。毎秒120フレームを表示すると1フレームあたりの表示時間が半減するうえ、メガネを通してみることになるため輝度が1/4程度に低下するというが、用意されたコンテンツを見る限り不満は感じない。
CEATECで行われるデモは、おそらく最新の劇場用3D映画を見たことがある人でも違和感なく視聴できるだろう。そして、今までの家庭用3D表示機器を知っている人ほど、その画質に驚くはず。あとは「CEATEC JAPAN 2008」のパナソニックブースで確認してほしい。
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