パナソニックの新プロジェクター「TH-AE3000」で堪能するBD BOX「ゴッドファーザー」の色彩:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.26(2/2 ページ)
今回はパナソニックの新製品「TH-AE3000」に迫ってみよう。今年の3LCDプロジェクターの画質改善ポイントはコントラスト。LCOSタイプに対して不利といわれ続けてきた“黒再現”を著しく向上させた。
進化した“ハリウッド画質”
1080/24p出力が可能なBDプレーヤー(レコーダー)を組み合わせるのであれば、映画ソフトはフレームクリエーション・オフ、4等倍の96・表示で観ればよいと思うが、本機のフレームクリエーションの出来がたいへんよいのも、また事実。フィルムジャダー(24コマ等倍速表示特有のカタカタした動き)を少し残した「モード1」なら、映画ソフトでも補間映像の破たんを感じることはまずないだろう。
ジャダーを消したという「モード2」では、補間映像特有の滑らかすぎるヌメっとした動きに違和感を持たないではないが、予想以上にその効果が面白かったのが、CGを使ったアニメーション映画。ディズニー作品のBD「レミーのおいしいレストラン」を「モード2」に設定して観ると、立体感が強調され、動きがスムーズに感じられるようになる。キャラクターたちがまるで生きているかのような錯覚を抱くのである。これはちょっとした驚きであった。
さて、本機TH-AE3000でもう1つ注目すべきは、メーカーが用意した映像モードの完成度の高さである。とくに注目してほしいのが、色純度を上げ、色域を広げる(その代わり明るさが少し犠牲になる)シネマフィルターが入る「シネマ」「カラー」系モード。
色温度6500ケルビンの「シネマ1」は、2003年の「TH-AE500」以来の“ハリウッド画質”モード。すなわち映画の都ハリウッドで活躍する撮影監督やテレシネ(フィルムからビデオへの変換)時に“色補正”を担当するカラリストと呼ばれる人たちの協力を仰いで最終画質をチューニングしたポジションだ。「シネマ2」は、古い映画に照準を合わせたという色温度6700ケルビンの映像モード。「シネマ3」は、最新アクション映画やアニメーション作品にフォーカスした映像モードである。
映画ソフトを観るときの基本は、「シネマ1」と考えてよい。この映像モードには、独自の色乗り豊かなバタくささがあり、いかにもハリウッドの映画人の意向が反映された画質だなあ、と思うが、以前よりはずっとニュートラルな画調に収束されてきたと思う。それから、今回使ってみて面白かったのが、フィルムルックな質感が映える「シネマ2」の映像。これで観るBD BOX「ゴッドファーザー〜ザ・コッポラ・レストレーション」は、まさに目の御馳走、眼幅であった。
コッポラの美学を心ゆくまで
この秋発売された国内版BD ROMの中で、個人的にいちばんうれしかったのが、このBD BOX「ゴッドファーザー コッポラ・リストレーションブルーレイBOX」。監修指揮に当たったフランシス・フォード・コッポラがその仕上がりを見て「私の記憶よりずっと美しい!」と感嘆したというこのBD BOX。1972年の第1作、74年の第2作、そして90年の第3作と、すべてコッポラと撮影監督ゴードン・ウィリスの意図が隅々まで反映された素晴らしい画調で統一されている。とくに79年代に撮影されたは、フィルムレストレーション(修復)がじつに丁寧で、この大河ドラマの美学を心ゆくまで堪能できる。
さて、TH-AE3000の「シネマ2」で第1作と第2作を観てみよう。デフォルトのままでも随所で黒と赤の対比を際立たせたこの映画のアーティスティックな魅力が味わえるが、画質調整項目から「色温度」を呼び出し、2ポイントほど下げて映画館で使われているキセノンランプに近似した5700ケルビン相当まで色温度を落していくと、70年代ならではの古色蒼然(そうぜん)たる雰囲気が醸しだされるようになり、この悠然たる名画の質感がよりいっそう掘り起こされるようになった。
1990年の第3作は、“色のこさ”を少し落した「シネマ1」で観るか、より現代的なトーンが抽出できる「シネマ3」がふさわしい印象だ。
TH-AE3000は、ガンマカーブをローライトからハイライトまで個別に調整できたり、RGBのゲイン/バイアスでホワイトバランスを微調整できたり、特定の色を指定して細かな色調整ができる「カラーマネージメント」機能を有していたり、画質調整の懐もすこぶる深い。こういう見事な映像設計が採られた優れた映画と対話しながら、画質調整を追い込んでいくのも、たいへん素晴らしい大人の知的な遊びではないかと思う。
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