LEDバックライトの恩恵と難しさ(2):本田雅一のTV Style
“ローカルディミング”とは、液晶パネルの裏側に並べたLEDの発光量を個々に制御することでコントラストを高める方法。同一画面内の異なるエリアのコントラスト比を大幅に高めることができる。しかし、上手に制御しないと映像が不自然になるケースもある。
先週、「ローカルディミングを行えば、なんでもイイというわけではない」と書いたが、これだけではLEDバックライト搭載テレビの利点は少ないと極端な誤解をされる方もいるかもしれない。しかし、液晶テレビのバックライトをLED化するのは、基本的には画質を向上させてくれるので、その点は心配無用だ。問題はその使い方にある。
繰り返しになるが“ローカルディミング”とは、液晶パネルの裏側に並べたLEDの発光量を個々に制御することでコントラストを高める方法で、同一画面内の異なるエリアのコントラスト比を大幅に高めることができる。
しかし、上手に制御するには画素単位でバックライトの明るさの変化に応じたRGB各サブ画素のゲインを変える必要がある。例えば1個のLEDを半分の明るさにすると、近傍の画素は半分近くの明度になる。ところがLEDから離れると、隣り合う別のLEDからの光が入り込む。その変化の度合いを考慮しながら、画素ごとのゲインを変える。
LEDの光を減らせば減らすほど黒浮きは減るものの、減らしすぎるとゲインでは制御できなくなるので、不自然な描写にならない程度までしかLEDを絞ることはできない。さらに真っ黒な領域があったとしても、近くに明るい場所があるとその部分との輝度差によって、真っ黒の領域に明るさのムラが出てしまう。真っ黒といっても、液晶パネルからは多少の漏れ光は出てしまうからだ。
このため、表現の不自然さを排除しようとすると、どうしてもLEDの明暗差は積極的にはつけにくい。ここで開発者は開発の方針を決めなければならない。
1. 多少不自然に見えたとしても、ゲインコントロールで画素の明るさを制御できる範囲ならば、最大限にLEDの光量比を稼ぐ
2. 黒ベタ領域の明るさムラなどが目立たないよう、なるべく気付かれないようにLEDの光量比を保守的に制御する
当然、前者ならば劇的といえるほどコントラストを稼げるし、店頭でも映えるだろうが、映像が破たんするケースも多くなる。後者も充分に液晶パネルの黒浮きを抑え込めるものの、絶対的なコントラスト比は前者に劣る。とくに横に並べて「どちらが高コントラスト?」といった比較をされると、圧倒的に不利となる。
個人的には、やはり見た目に不自然、おかしいと感じることがないよう配慮することが先決だと思う。非常にコンサバティブなローカルディミングの動きをするソニーの“BRAVIA”XR1シリーズでも、充分に効果を感じることができると思う。とはいえ、効果が薄れることに対する抵抗感や疑問を感じる人もいるだろう。
この問題に対する完璧な特効薬はないが、症状を緩和させる薬ならある。それはLEDの数を増やすことだ。LEDの数を増やして個々のLEDが担当する領域を狭くしていけば、ローカルディミングは同様の自然さを保ったまま、より積極的な調整を行えるようになる。
しかし、ここで問題になるのがコストだ。LEDの数が増えるほどパネルの製造コストは上がっていく。LEDバックライト液晶パネルの使いこなしに関し、メーカーは考え方を少し変え始めている。
前回のコラムで挙げたLEDバックライトの利点のうち、RGBの各LEDを並べたRGB LEDアレイだけのメリットは後半の2つ。一方、RGBバックライトではなく白色LEDを使った場合、LEDバックライトの利点となる鮮やかな色再現という面は後退するものの、より安価に多数のエリアに分割したローカルディミングを行えるようになる。
一部には白色LEDをバックライトに用いたパネルには意味がないという極端な意見も聞かれるが、実際にはそう単純な話ではない。白色LEDで色再現領域が狭くなるデメリットと、安価にローカルディミングの分割数を増やせるメリットを比較した時、どちらを重視した方がテレビとして良い結果を得られるのか? ということなのだ。
では白色LEDを使うと、どのぐらい色再現域は狭くなるのだろう?(以下、次回)
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